表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

桜の花弁分解

作者: 八勝 庵

おや、そこの旅の方。

こんな夕暮れ時にここで何をしているんだい?

そんなに大きな荷物を持って。

あたしは誰かだって?

あたしゃ、ここの山の神主さ。

この服装で見てわからないのかい?

かれこれ六十年くらいつとめている婆さんさ。

あんた、まさか今から山に登る気じゃないだろうね?

何だって!?

この山で野宿したいだって!?

よしとくれよ。なんて罰当たりな。

いいかい?

よくお聞き。

この山の頂上には神社がある。

桜山神社というものさ。

始めに言っとくがこの山には一本も桜の木が無い。

あと桜山神社では別に桜の神様は祭っていない。

じゃあなぜ桜山神社なのかだって?

昔、この山の頂上には貴族のお屋敷があった。

あるときそこのお姫さまが子をなした。

しかし、生まれてきたのは不思議な力をもった御子であった。

その力とは、ありとあらゆるものを桜の花弁に変えてしまうというものさ。

その御子は生まれた瞬間に、母であるお(ひい)さまを桜の花弁に変えてしまった。

それ以来、周りに恐れられてお育ちあそばされ、父君がお亡くなりになると、お屋敷の者達は次々に辞めていった。

遂にその御子が一人となった時に、ある落武者がその屋敷を訪れた。

戦に敗れて帰る場所が無くなった者であった。

御子は落武者を哀れに思い、お屋敷に置いた。

暫く時が流れると、やがてその山を我が領地とせんとする大名が兵を率いてやって来た。

そこで、武者が止めるために説得に向かった。

しかし武者は無惨にも殺されてしもうた。

それを見た御子は悲しみのあまり自害なされた。

すると、力が暴走し、兵と大名もろとも桜の花弁に変えてしもうた。

山は多量の桜の花弁で溢れかえった。

それは、まるで見えない桜の木が一斉に咲き誇った様であったと伝わっておる。

その力は今でも残っているのさ。

山に登っても参拝するだけなら大丈夫。

だけど、山に危害を加える場合は桜の花弁に変えられてしまうんだよ。

ん?

あたしが嘘をついているだって!?

失礼な奴だね、あんた!

わざわざ教えてやっているってのに、嘘つき扱いかい?

あ、ちょっと!

入っちゃ駄目だよ!

痛っ!

突き飛ばすこたぁないだろ!



旅人はもうそこにはいなかった。

ただ、桜の花弁がヒラヒラと舞っている。

ドスンッ

旅人のリュックサックだけが地面に落ちた。

お婆さんはリュックサックのチャックを開き中を見た。

中には太い注射器や小型のチェーンソー。

不気味な色の薬品。恐らく、木を枯らす薬品だろう。

説明文は異国の文字で書かれている。

お婆さんは

「またか。」

と呟いた。

旅人は木を枯らしたりして、難癖をつけて山の太い木を持っていくつもりだったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 不法伐採するつもりだったと、更に婆さんへの危害も加えて。 良いホラーでした
[一言] 幻想的で素敵な話でした! オチも森林破壊に対する警句に思えますね。 テンポがよくて読みやすかったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ