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幸せが怖くて

作者: 恋音

私は大学で通訳の授業を取っている。彼は私の真向かいの席にいつも座っている。ノリの良い関西弁でいつもみんなを笑わせ、かつリーダーシップのとれるしっかり者だ。年下ながらいつも感心していた。彼は本当に輝いている。好きになってはいけない、何度も思った。でも、そう思えば思うほど、彼に対する思いは抑えられなくなってきた。

そんななか私は通訳コンテストの本番を迎えた。彼は大阪から会場の名古屋まで駆けつけてくれた。本番前には「頑張れよ」と一言。白いセーターがよく似合っていた。

結果は3位だった。自分の力を出しきれた私は満足だった。「おめでとう、俺もほんまに嬉しいわ!」その言葉が一番嬉しかった。思わず彼に抱きついた。好きだなって思った。いとおしく感じた。移動中はずっと私の荷物を運んでくれたジェントルマンな彼は、本当に王子様に見えた。まぶしかった。

別れ際、彼は何も言わずにそっと私の手を握った。「また来週な!」優しい笑顔だった。

それから距離の縮まった私たちは、デートに出掛けた。でも、なぜだろう。楽しめなかった。彼は完璧だったのに。別れ際、「ずーっと好きやったで。俺の彼女になってほしいな。」と言われた。胸が苦しかった。何も考えずにうん!て言えたらどんなに楽だっただろう。でも、私はうんって言えなかった。彼は本当に素敵だし、私のことを真剣に考えてくれている。でも、それだけで充分だった。

別れた彼のことがまだ好きなんだ。どうしても。どんなに最低なやつでも。幸せになるのが怖いんだ。だって、それを失ったら、抱えきれないほどの悲しみがやってくるんだもん。

笑顔の素敵な年下の彼は、今でも私のことが好きなのだろうか。いや、そんなわけないか。でも、いいんだ。爽やかな風が吹いた。

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