第六話
現在生徒会室で四面楚歌の俺。
周りを囲まれ、俺包囲網が出来上がっている。
「ねえお兄ちゃん。私は、幼馴染がいた何て知らないんだけど?」
「別に隠してたわけじゃないぞ?」
「じゃあ、詳しく説明してくれるよね?」
妹の俺を見る目が、暗殺者にしか見えなかった。
そんな中、幼馴染の美夏だけはにこにこと笑顔だ。
「なぁ美夏。何がそんなに楽しいんだ?」
「それはね~。拓海がいるからだよ!」
ピキっと音が聞こえるくらい、顔を引きつらせる妹と静乃先輩。
俺の胃は、キリキリと音を立てて絶賛収縮中。
「拓海君。私も美夏さんについて、教えて欲しいな~」
「静乃先輩もですか。聞いても楽しくないと思いますよ?」
「いいから言いなさい。判断は私がします」
「はい……」
先輩も先輩で怖かった。
「美夏とは幼馴染って言っても、俺が小さかった頃の話なんです。それこそ、小学生に上がる前ですね」
「そうそう! 拓海とは、幼稚園で知り合ったんだよね!」
「ああ。それで仲良くなった俺達は、一緒に遊ぶ事が多くて、それで……」
「それで、将来を誓い合ったんだよね!」
「そうそう……って、何でそれを言うんだよ!」
「え? だって、本当の事じゃん?」
「ねえ……それって、どういう事か詳しく教えてくれますか?」
莉夏の目が光った。
俺は怖くて直視できない。
「う~んとね。拓海と、大きくなったら結婚しようねって約束したの!」
「それで、美夏さんはどうやってこの学校に、拓海君がいるって知ったのかしら?」
「それはね。拓海のお父さんに聞いたから! それで転校してきたの!」
「転校!? お前、わざわざ転校して来たのか!?」
「うん! だって拓海に会いたかったし!」
美夏が俺に抱き付いてくる。
その女の子特有の柔らかさに包まれた俺は、少しにやけていたかもしれない。
まさか小さかった美夏が、こんなに成長しているとは恐ろしい。
特に胸が大きい。
何だこの柔らかさと弾力。
俺の胸元でぐにぐにと形を変え、その柔らかさをアピールしている。
「美夏さん。お兄ちゃんから離れてください」
「そうよ。生徒会室は神聖な場所なのよ」
「あなたがそれを言いますか……」
「拓海君? 何か言いたい事があるのかしら?」
「いえ! 何でもないです!」
一瞬静乃先輩の淫らな姿が脳裏を過ぎったが、今は忘れていよう。
「拓海と離れるのは嫌です。だって私達は、許婚なんですから!」
「それは昔の話でしょ? 子供の頃のよくある話だわ」
「そうですね。お兄ちゃんだって忘れてたっぽいし、無効だと思います」
莉夏と静乃先輩に否定された美夏は、一旦俺から離れると、ビシっと2人を指差して言った。
「私は2人には負けませんからね!」
その意味は分かりかねるが、この3人の対立は今後、嵐を呼ぶに違いない。
そんな確信めいた予感だけが、天啓の如く分かった。