彦星と織姫-七夕-
七夕ということで。
こんな感じなのでしょうか……。
七月七日。七夕。
それは、年に一度訪れる、彦星と織姫が会う日。
そして今年も、七夕がやってきた──
*
「彦星様、彦星様──」
「なに?」
呼ばれて彦星は振り返る。
「今日は待ちに待った七夕です!! なので、これに着替えて行ってください──」
そう言って、使用人のホシがきらびやかな青い服を彦星に見せた。
「えー……やだ」
「なんでですか?! せっかく織姫様とお会いになるのに!!」
「だからだよ──」
「へ?」
彦星はフッと笑うと、窓の外に目を向けた。
外は、天の川がうっすらとキラキラ流れている。
「織姫には、今の姿で会いたいんだ」
「そうですか」
「ああ。だから、それは仕舞っておいてくれ」
「……それ、去年も言ってましたよね?!」
「そうだっけ?」
と彦星は振り返り、とぼけるように首を傾げた。
「そうです! 今年は着て行ってください!! 絶対に!!」
「えー?」
「えー? じゃないですよ!! 織姫様だって、きっと喜んでくれますよ?」
「……そうか//?」
と彦星は少し赤くなりながら、ホシを見る。
「そうですよ! 女性は、いつもと違う姿を見た時に、よりキュンとするものです!」
「……ホシ。君は男だよな?」
と彦星は一瞬、ホシが女なのではないか? と思い、訊いていた。
「もちろん男ですよ。ただ、妹から送られてくる少女マンガの知識です!」
「あぁ、ソラちゃん──」
と彦星は頷く。
ソラはホシの妹であり、織姫の使用人だ。
「はい──それで、織姫様が今日をものすご〜く楽しみにしてるって、昨日聞きました」
「なっ////?!」
と彦星は赤くなる。
そう言われると、心が揺らいでしまう。
「いいじゃないですか。年に一度しか会えないんですから──」
「…………////」
彦星は照れを隠すように、頬をポリポリと掻く。
「彦星様。これ、着て行ってくれますよね?」
とホシが最後に追い討ちをかけるように青い服をかかげる。
「……まぁ。織姫が楽しみにしてるなら……着るしか、ないだろ//」
「はい!! じゃあ、これ。部屋に置いておきますね!!」
とホシはパアッと笑い、ぱたぱたと走っていく。
心なしか、スキップをしているようにも見えなくもない。
「……今日か──」
彦星はそんなホシを見送ってから、ちらっと天の川を見て呟いた──
*
「きれい……」
「はい。そうですね──織姫様、今日は何を着ていきますか? 水色、白に黄色……」
「ソラ。ピンクがいいわ。きっと彦星くんは、青色だと思うから──」
織姫は、天の川を見たまま言う。
「はい!! さっそく準備しますね!!」
「急いで転ばないでね」
「はい!」
ソラは軽い足取りで服を取りに向かった。
「彦星くん……元気かな……」
「織姫様ー! ありましたよー!」
「ふふ。早いのね──はいはい」
織姫は振り向き、ソラからピンクの服を受け取った──
*
天の川がよりくっきりと見え始めた頃、彦星は天の川に向かって歩き始めていた──
「……ぁ──」
天の川の向こう側。背を向けて立っている女性がいた。
女性は、彦星の声が聞こえたのか、ゆっくりと振り向いた──
「織姫……!!」
「彦星くん……!!」
二人は久しぶりの再会……!!
とは、いかない。緊張しているのか、
「元気だった……//?」
「あ、あぁ。織姫は……?」
「うん。元気だよ//」
「そっ、か…………」
「うん…………//」
「…………」
「……//」
と、ぎこちない。
「とりあえず、座ろう」
「そうだね////」
と天の川に並んで座る。
先に話し出したのは、彦星だった。
「織姫」
「うん?」
「服、似合ってる……//」
と少し顔を背けて言う。
「あり、がとう////彦星くんも、似合ってるよ////」
「おぉ……//////」
「……どうしたの?」
とうつむいた彦星の顔を覗き込もうとする。
「あれ、恥ずかしいから、ちょっと見ないで////」
「あ、うん////」
と織姫も下を向く。
「……織姫」
「うん?」
「歩こう──」
少ししてから彦星は立ち上がると、織姫に手を差し出した。
「うん////!」
織姫は笑って、彦星の手をとった──
二人は、手を繋いで天の川を歩く。
歩きながら、いつも何してるのかや、こんなことがあったなどを話した。
そして、会った所に戻って来ると、そろそろ辺りが明るくなりつつあった──
「もう時間だね……」
「あぁ……」
彦星は繋いでいた手を離す。
「次は、来年だね……」
「……そうだな」
「わかってるけど、寂しいね……」
織姫は悲しそうな顔をしてうつむく。
「……織姫──」
彦星はそんな織姫を優しく抱きしめて、
「そんな顔すんなよ……俺だって──」
と言葉を濁す。
「…………うん」
織姫もわかっているのか、小さく頷いた……。
「織姫──」
「うん?」
身体を離して、織姫を見る。
「ずっと、愛してる──//」
「うん──////」
そして二人は、唇を重ねた──
短い間だったが、二人にはとても愛おしい間だった。
「……//」
「……////」
彦星は少し離れて、織姫を見る。
織姫も彦星を見る。
「じゃあ……またな」
「うん──」
「ごめん……もう一回だけ」
「それ、去年も言ってたよね」
「そうだっけか?」
と彦星は苦笑いしながらも織姫を抱きしめる。
織姫も笑いながら彦星に手を回した。
「……じゃあ、今度こそ──また」
「うん////また……」
二、三歩離れて、お互い少しの間目に焼き付けるように見つめ合った……。
そして背を向け、歩きだす──
一度も振り返ることなく……。
振り返ったら、気持ちが揺らいでしまうから。
だから、振り返らない。
でも、二人は同じことを考えていた。
『また、来年』
寂しいけれど、大丈夫。
だってまた、会えるのだから──
あなたの願いは、何でしょうか──?