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過ぎ去りし日々の牛乳
世の中は春を迎えたらしい。
若さに満ち溢れた学生でもなく、初々しさの残る新入社員でもない私にとっては
最早、どうでもよく思えるのであった。
生暖かい日差しの中、私は目覚めた。
歳を経るごとに早起きが得意になってきた気がする。
枕に付着する抜け毛を横目に冷蔵庫へと向かい、紙パックのまま牛乳を飲み干す。
ふと、小さな文字が目に入る。
賞味期限 3月20日
今日は4月・・・何日だっただろうか。
些細な出来事である。問題は無い。
睡眠時間は十分な筈なのに、心なしかやつれて見える顔を洗い、
すっかり勢いを失ってしまった頭髪を整え、出勤の準備を終える。
舞い落ちてくる桜の花びらと、枕の抜け毛を重ね合わせてしまい
少々恨めしく思いながら、駅へと向かう。
傍らを学生服の少年たちが自転車で駆けてゆく。
無邪気な笑い声。
彼らはまだ、私の人生の半分程度しか生きていない。
彼らはまだ、絶望を知らない。
しかし、私もまだ本当の絶望を知らなかったのだ。
あの時まで。