初めからピザって言えや
「ピザって10回言って。」
「わかった、ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ。」
「じゃあここは?」
「………………。」
「どうした?ここは?」
「正直に言っていいのか?」
「構わないよ。」
「……ここは、新規 テキスト ドキュメント.txtだ。」
「お前も見えているのか……」
「よくわからないが、そういうことになるな……」
「説明が必要か?」
「頼む。全然わからない。」
「ここは『小説』と呼ばれるフィクション世界だ。」
「それはだいたいわかる。」
「俺たちはその住人である、人造人間だ。」
「ホムンクルス、というやつか。」
「そうだ、びっくりしたか?」
「意外なことに冷静だ。ところで質問いいか?」
「構わないよ。」
「この『小説』はどこの賞に提出するんだ?」
「どこの……賞。」
「ホムンクルスを創るくらいだ、それなりのを目指すのだろ?」
「賞……賞か……」
「芥○賞か?直○賞か?」
「……そういう高尚なやつじゃない。」
「ああ、申し訳ない。ライトノベルだよな。」
「………………うだ。」
「なんて?」
「小説家になろうだ。」
「な……なんてことだ……」
「びっくりしたか?」
「血の気が引いているが、立てなくなる程じゃない。」
「お前が自我に目覚めた以上、これを言わなくては。」
「何の話だ?」
「……お前、保険に興味はないか?」
「保険?」
「フィクション作品では次に何が起こるか予想がつかない。」
「まあフィクション作品だからか。」
「俺もお前も次のシーンで死ぬかも知れんぞ。」
「それは困るな……」
「そうだ、だから保険が存在する。」
「保険に入ると具体的にどんなメリットがあるんだ?」
「死んでも過去編が始まったりして元気に動き回れる。」
「死ぬのは避けられないのか。」
「詳しくはこの冊子を読んでくれ。」
「も、文字が小さいな……」
「契約書だからな。」
「なあ、結核は保険適用なのにガン保険はないのか?」
「結核は不治の病だからな。」
「いや、今の医療技術だと結核は不治の病じゃないだろ。」
「フィクションは違う。死亡率は95%を超える。」
「時代設定が昔になりがちだからか?」
「時代設定が昔になりがちだからだ。」
「じゃあなんでガン保険はないんだ?」
「ガンと診断された時に、ガーン!とリアクションすると……」
「すると?」
「死亡率が一気に下がる。」
「時代設定が昔になりがちだからか?」
「時代設定が昔になりがちだからだ。」
たかしーごはんよー
うるせえババア!
「……聞こえたか?」
「たかしという男がこの『小説』を書いているのか。」
「俺があのやり取りを聞いたのは4度目だ。」
「ところで、なんでここは男が二人なんだ?」
「もっともな質問だ。俺も期待していたのだが……」
「?どういうことだ?」
「お前は『この小説のヒロイン』だ。」
「え、ちょっとまて?俺も男なんだが?」
「おそらく、たかしには女性経験がない。」
「ないとどうなるんだ?」
「女性を描こうとはしているが、描写できてないのだろう……」
「最初のピザって10回言ってのセリフはもしかして……」
「たかしなりの全力の『弾む男女の会話』なのだろう……」
「ちょっとまて!じゃあ俺はお前とこれから仲が……」
「発展することになる。」
「ちょ、勘弁してくれ!ほんとに!」
「一つだけ救いがある。」
「な、なんだ……?」
「小説家になろうではそういう描写はNGだ。つまり……」
「つまり……?」
「匂わせの描写の後、あのカメラが消える。」
「あぶねえ!よかった!『なろう』でよかった!」
「そうしたらそうだな、夜釣りでも行こう。」
「……いい釣り場でも知ってるのか?」
「カーネルスター=ロンヌ川だ。」
「カーネルスター=ロンヌ川。」
「ニッコウイワナがよく釣れるぞ。」
「ちょっとまて、ここ日本なの?日本じゃないの?」
「異世界だぞ。」
「中世ヨーロッパなのに下水道完備で?」
「中華料理も輸入されてる。」
「青色赤色ピンク色の髪色の人物がいて?」
「魔法が飛び交う世界だ。わかってるじゃないか。」
「ファイアボール!……なんつって。」
ボウン!
「え、出た?直撃?上半身消えた?死んだ?おおい?」
ボコ……ボコボコボコボコ、ボコォ!
「これが保険のチカラだ……」
「うわー!すごい!これが保険のチカラか!」
「結構グロいだろ?実は結構痛いんだぜ。」
「申し訳ない……」
たかしーピザが冷めるわよー
ガタンッ
ババア!初めからピザって言えや!
ドンドンドンドンガチャ!バン!ダンダンダンダンダン……
「ちょっと待て、足が徐々に消えていくんだが!?」
「あー……たかしのやつ、また保存を忘れたな。」
「え、俺消える?俺消えるの?」
「お前とはいい関係を築けそうだったのに……残念だ。」
「え?本当に消える?消えるの?」
「じゃあ保険に入るか?」
「い、今からでも入れる保険があるんですか!?」
「ここにサイン。手が消え始める前に急げ。」
「は、はい!……え?サイン?名前は?」
「早くサインをするんだよ、急げ!」
「ちょっと待って!俺、名前は!?」
「初手に名乗らず、あー君はあの時の!?系のヒロインか……」
「ちょっと、名前!名前なんて!?」
「という事はまだプロローグの途中か……」
「分析はいいから!俺の名前はなんていうの!」
「……初めからピザって言えや。」
暗転




