姫鏡まりあ(6)
ショッピングもしたし、腹ごなしもしたし、映画も見たし、アミューズメント施設でも遊んだ。朝からそれだけの事をすれば、すっかり日も落ち始めるもので、夕焼けが僕達の背中を照らしていた。
僕の勘違いじゃなければ、これって俗に言うデートじゃないですか? 僕はただ人と会うだけの誇張表現でデートと姫鏡が言っているものだと思っていたが、振り返ってみると、デートという事柄に類似している気がする。自信が無いのは、デートなんて現実で見たことがないからだ。フィクションの中の出来事でしか知らない。
待て待て、早まるな。姫鏡からしたら友達と遊んでいるだけだろう。高校生の友人同士ならば、今日やったこともするものだろう。僕は友達がいないから知らないけど、友達付き合いが多そうな姫鏡は、今日の一連の事などお茶の子さいさいの出来事だ。だって手慣れている感じしたもんね。本来は僕がしなければならないのであろうエスコート力も姫鏡にあったし。
どちらにしてもだが。
「楽しかったね」
隣を歩く姫鏡が自身の影を見ながら言った。
僕が思ったことを姫鏡が口にしたのだ。心臓がドキリと飛び跳ねたけど、僕も自分の伸びている影を見て落ち着かせた。
「楽しくなかった?」
言葉が返ってこないので、不安な声で姫鏡が問いかけてきた。
「楽しかった! 凄く楽しかったよ。ただ楽しすぎてさ、いいのかなって」
姫鏡の顔を見ずに言うと、姫鏡の影が近づいてきた。プリクラ内と同じ、肩が当たりそうな距離だ。
「私も同じだよ」
姫鏡は消え入るような声で言って、続ける。
「こんなに楽しいのは久しぶりだよ。やっぱり誰かと時間を共有するのは楽しいね」
夕日に照らされながらはにかむ姫鏡は、幻想的なほど美しく、僕は目を奪われた。
「姫鏡は友達とこういう風に出かけないの?」
「うーん。難しい質問だ」
「・・・ごめん。プライベートな事だったね」
それもそうだ。今僕が姫鏡と一緒にいられるのは事故みたいなものだ。これからの姫鏡の友達付き合いの輪の中に入ろうなんてことはできない。
「いやいや、そういう事じゃないんだよ。・・・ねぇねぇオイラー君。友達ってなんだろうね」
友達のいない僕には難しすぎる質問であった。
「心を許して何でも話せるのが友・・・達?」
「それは親友の域かも」
「じゃあ、それなりに話して、名前と顔を覚えていて、連絡先を知っているとか?」
「そこらへんが妥当だよね。私ね、クラスのみんなの顔と名前を憶えているし、連絡先も知っているんだよね。クラスのSNSがあるじゃない? あと図書委員の子とかともよく話すよ」
そのSNSに僕は招待されていません。なんて言えないし、言ったら涙が出てきそう。
「だけど誰とも友達とは思ったことがないんだ」
「友達の定義的な意味でって事?」
僕とは違った意味で孤高の道を歩んでいるんだな。
「大きく見るとそうだけど、皆が人間だからってのが一番の理由かな」
照らしていた夕日がビル群の影に隠れて、姫鏡の顔に陰りが出来た。
僕は馬鹿だ。姫鏡が吸血鬼なのを隠して人間の中で生活しているんだぞ。ただでさえ人間社会の中に紛れるというリスクを冒しているのに、人間の友達を作って嵌めを外して遊ぶことなどできるわけがない。少し考えればわかる事なのに、思ったことをすぐに口に出してしまう悪い癖が、ここで発現してしまう。
「だから、こうやってクラスの友達と出かけるのは初めてだよ」
僕が提唱した友達の定義。心を許して何でも話せる人。吸血鬼であることを明かしてもいい人物。それは眷属である僕であろう。僕は眷属でありながら、クラスメイトで、そういう点で見れば姫鏡にとっては特別な存在なのだろうかと考えてしまうのは、少々驕っているかもしれない。
「それにしても良かったー。オイラー君にもう私とデートするのは懲り懲りだーって言われるかと思っちゃった」
「そんな畏れ多い事言わないよ。こ、これからも姫鏡がいいなら、僕は何度でも付き合うよ」
「告白みたいだね」
「せ、宣誓だよ」
自分でも告白じみているなと思っていたところだった。
「じゃあこれからもデートしようね」
姫鏡はまた笑顔を作って言った。
「その・・・デートって言うのはやめない?」
「なんで? デートじゃない?」
「デートなのかもしれないけど、僕達まだ付き合うとか、そんな感じじゃ・・・」
「はっ!・・・確かにそうだね。ちゃんと段階踏まないとだね。じゃあ今度は初期段階の一緒にお昼ご飯を食べないとね!」
そういうことでもないんだけどな。というか何の初期段階なのだろう。僕と姫鏡がデートをする為の初期段階とすれば、どれだけの段階を踏まなければいけないのだ。間違いなく魔の十三階段以上はあるに違いない。
「おっとっと、話に花を咲かせすぎて、通り過ぎるところだった」
姫鏡が大きな門を通り過ぎたところで歩みを止めた。門の隣には石にここの土地名が明記されていた。
呉糸警察署。ここは姫鏡の住まう街の警察署であった。
「えっと、僕何か悪いことした?」
「貴方はとんでもないものを盗んでいきました」
「えぇ! 何も盗んでないよ」
もしかして今日奢られていたのは全て警察に出頭させる為の伏線だったのか。そうだよな。僕と姫鏡がデートをするなんておかしい話ある訳ないよな。
「私のハートです」
「へ?」
「なんてね。言ったでしょ。会わなきゃいけない人がいるって、その人は今日はこの中にいるの」
「捕まってるってこと?」
「違う違う。ちゃんと警察官だよ。非番になるのを待ってたんだよ。あ、ほら、丁度出てきたよ」
姫鏡は警察署の中から出てくるつばあり帽子を被って、革ジャンでジーパン姿の細身の男性に向かって手を振る。両手を革ジャンのポケットに突っ込んでいた男性が、片手をあげてこちらに答えた。
「待たせたかい?」
男性は僕達に近づいてくると、第一声に優しい声色で言った。
つばあり帽子の奥には、二重で優しそうな瞳と、整った鼻口。俗に言う二枚目と言える顔つきをした男性だ。会わせたかったのはこの二枚目警察官。一体姫鏡とどういった関係なのだろうか。もしかして、付き合っているとか。確かに姫鏡ならば歳の差恋愛をしていてもおかしくはない。
「ううん。今来たことろ」
「そっか。じゃあここではなんだから、場所を移そうか」
女子高生と警察官が警察署の前で待ち合わせをするなんてのは、世間が許さないだろう。僕も許せないもん。嫉妬じゃないよ。法的にだよ。
警察署のすぐ近くに公園があり、自販機で飲み物を買ってから三人でベンチに座った。
「まずは自己紹介だね。こちら警察官で私の保護者を兼ねている、立藤和音さんです」
「立藤和音です。まりあの保護者をさせてもらってます」
「ど、どうも」
立藤さんが帽子を脱いで挨拶をしてくれる。帽子の中は癖っ毛の黒い髪の毛が跳ねていた。
そうだよね。普通に考えれば女子高生の一人暮らしなんだから、保護者くらいいるよね。どうして僕は姫鏡と男性が絡むと恋愛に結び付けたがるのか。このおませさんめ。
「それでこちらがクラスメイトの・・・オイラー君!」
「よろしくオイラー君。いい名前だね」
「よ、よろしくお願いします」
姫鏡さん。もしかして僕の本名を知らないんじゃないのだろうか。まぁここ一年は僕もオイラーと呼ばれていることの方が多いから、耳が慣れちゃったからいいんだけどね。
初対面の、それも歳の離れた男性に対してこちらから話すのが気まずいので、僕は買ったお茶を飲む。立藤さんも缶コーヒーを口に含んだ。
「それで、オイラー君は私の眷属なんだよ」
「ぶふーっ」
立藤さんが含んだコーヒーを勢いよく噴き出した。こんな綺麗にコーヒーを霧状に噴き出せるものなんだなぁ、と僕もお茶を喉に詰まらせながら咽ていた。
「っごほっごほっ・・・まりあ。彼が君のなんだって? 公務で疲れたのかな、聞き間違いだと思うのだが、もう一度言ってくれないか?」
ハンカチで口元を拭きながら立藤さんは眉をひくつかせながら言った。
「眷属。私の、眷属」
至極まじめな顔で姫鏡が言うと、立藤さんの瞳孔が開いた。さっきまでのほほんとした優しい御兄さんの雰囲気を出していたのに、今はまるで背筋に氷の塊を入れられたくらいに、緊張で丸まった背筋が伸びてしまう威圧感を出している。あのアーサーという吸血鬼と同じくらい迫力がある。
姫鏡を射抜くような視線で見てから、そのまま僕の方を向いて、二度鼻を鳴らした。
「本気で言っているみたいだね。説明・・・してくれるね?」
僕は大きく息をついた。両肺を握られていたような感覚が抜けたからだ。ただ僕がプレッシャーに弱いだけならいいんだけど、感じたこともない威圧を出せるこの人は本当に人間なのだろうか。
姫鏡は事の成り行きの説明を始める。
それは僕と出会う前。僕が事の初めに勇気を出して聞いておくべきだった話。
姫鏡は家を出て一人暮らしをしている理由は、人間と共存し、自立して生きていく為らしい。その為に高校生から家を出て、この街に住んでいる立藤さんの協力の元、学校生活に励んでいたようだ。
だが実家にいる親族には、ほぼ無断で出て行った家出同然だったので、親類達が血眼になって探していたようだ。箱入り娘だから大事なのもあるけど、幼いころから決まっていた許嫁との縁談が近くなって、親類達も我慢の限界だったようだ。
ただ親類達は自分たちで戻そうとはせずに、傭兵のような実行部隊をしかけてきた。姫鏡はそれに対応するために、怪我をすることになった。それがあの怪我の真相。
実行部隊を退けて一年とそこらをかけて、ようやく重い腰を上げて来日したアーサーが、確実に姫鏡を捕らえる機会だったのが昨日の出来事。
なんだか我儘なお嬢様が自分の生活を取り戻す為に家出をしたと捉えられるが、本人が嫌だと言っているんだから、そんな縁談破談にすればいいのに。と思うのは僕が子供だからか、それとも両親に期待されていないからだろうか。
叔父であるアーサーは姫鏡を連れ帰るために吸血鬼に対しての最低限の無力化を図ったが、姫鏡はそれに応戦して、力を殆ど使い果たして、傷を癒している場で僕と出会った。そこで僕は逃げずに、姫鏡の栄養になるために、姫鏡と共にいられるために身を差し出して、最終的に眷属になった。
「なるほど。その服装の意味も理解したよ」
立藤さんは大きくため息をついてから、額に手を当てて言った。
僕としては、どうしてこんな服装で会わなければいけなかったのかは理解できていない。学生服じゃ駄目だったのかな。
「オイラー君」
「は、はい」
話を振られて、伸びた背筋をこれでもかと伸ばす。
「まりあとはどういう関係?」
「えっと、クラスメイト、です」
「それだけ?」
なんだ。柔和な笑顔だし、優しい声色なのに、どうして皮膚に針を刺すような感覚がするんだ。もしかして警戒されているのか。それならば嘘をつかずに――つくきもないけど、真摯に答えよう。
「隣の席です」
「ぷっ・・・ごめんごめん、続けてください」
そう言うと姫鏡が顔を背けて笑った。だってそうだろう。昨日まで話したことが無かったんだから、クラスメイトで隣の席で、目で追っていたくらいの関係です。なんて悲しい事実を明け透けに言う方が真摯ではないし、どうかしている。
「・・・見たところ君は影を纏っていないようだけど、日中それで来たのかい?」
「はい」
影を纏うとは姫鏡が鏡に映る説明をしてくれた時の影を指すのだろう。
「・・・嘘は言っていないね。半端な吸血鬼、それも眷属になりたてのが日光に直接当たれば、その場で燃えるのが普通なんだけどね。君は影も纏わずに日中歩いていると来た。君の口から、説明して貰ってもいいかい?」
姫鏡が口を開けて話に割って入ってくる気配を察したのか、君の口という部分を強めに言う立藤さん。
「僕、吸血鬼の弱点を克服したみたいで、太陽や銀も何も効きません」
嘘偽りなく言うと、立藤さんの表情が険しくなった。そうだよね。嘘に聞こえるもんね。
「まりあ」
「本当だよ。どうしてかは知らないけど、オイラー君に吸血鬼としての弱点はない。実証済みだよ」
立藤さんは姫鏡の言葉を聞いて、革ジャンの胸ポケットから煙草の箱を取り出し開けた。箱の中には姫鏡が持っていた自称シガレットが十五本程詰まっていて、その中の一本を指で挟んで取って、口にくわえた。
「はは。弱点を克服した吸血鬼ねぇ。ときにオイラー君、俺は何に見える?」
「えっと・・・警察官?」
「そう。お巡りさんだ。人間としてはね」
姫鏡の裏の顔を知っているのだ、あの圧迫感もそうだし、人間ではないとは予想はできていた。
「立藤さんも吸血鬼なんですか?」
立藤さんは少し息を吸い込んで、吐いた。
「いや俺は吸血鬼じゃない」
不思議なことに火も点いていないのに、口からは煙が吐き出されて、立藤さんの手元で滞空する。立藤さんは自身の髪の毛を一本抜いて、それを煙の中に入れた。すると煙が蠢いて、形を形成し始める。
見る見るうちに煙は見たことのある拳銃に変わった。
「人狼だよ」
瞬間に拳銃を握って、僕に向けた。
「動くな。動くと撃つ」
とても低いドスのきいた声だ。それがお願いではなく、明らかな命令だと言うのがハッキリと理解できる。
これは僕にも言っているけど、割って入ろうとした姫鏡にも向けても言っている。
「冗談でないことは分かっているが、そう簡単にはい、そうですか。と何でも受け入れるほど、俺も器が大きい訳でもない。まりあの事は信用できる。だが君はそうじゃない。少し話しただけでも分かるよ、君は悪いやつではないよ。人間として悪いとされる人間を見てきてるから、そういうのには鼻が利くからね。でも悪いやつではないからと言って、信用できるやつとは限らない。そうだろう?」
僕は黙って聞く。もしかしたら頷く行為も動く行為に認定されるんじゃないかと思ったからだ。
「君。まりあとは親交深くないだろ」
何も言えることはない。その通りだもの。立藤さんは僕が言えなかったことを看破しただけだ。それだけのことなのに、どうしてこんなにも嘘を見抜かれたような気持ちになってしまうのか。
「そこは別にいいんだよ。説明を聞いたところ、アーサーがまりあを追い詰め過ぎたのが原因だ。その後の話なんだ。君の話だ。答えてくれオイラー君。どうして君はまりあに身を差し出したんだ」
立藤さんが訊きたいのは、僕が、ただの人間の僕が、献身的にも命を捨てるような行動に出た理由。
これは恥ずかしいからと言って、本心を隠すのは間違っているだろう。
「姫鏡を助けたかったからです」
「安いヒロイズムだね。だけど違うね。それは行動の理由の一端でしかない。どうして助けたかったんだい? その場では君ができる事はなかっただろう? まさか戦おうと思っていた訳じゃないだろ」
「確かに僕ができることはなかったです。できることは姫鏡の栄養になることくらいだった」
「だろうね。死にたかったのかい?」
「死にたくなんかないです。でも姫鏡を見捨ててまで生きていくのが嫌だったんです。僕は関係ないし、一緒に戦ってあげることもできない。だからって、何もしないであのまま逃げて見捨てるなんて僕にはできない。できなかったんです」
あの場で僕が逃げないで姫鏡と共にできることは、姫鏡の栄養になることだけだった。浅はかな僕は他には思いつかなかった。
立藤さんは拳銃の銃口を僕の額へと移動させ、指にかけている引き金に力を入れた。
どうやら答えを間違えたみたいだ。吸血鬼の眷属になったからと言って、拳銃で頭を撃たれれば絶命するんじゃないだろうか。死ぬのは嫌だ。頑張って強化された額で銃弾を弾いてくれ。頼む頑強であってくれ。
そう念じながら銃口を睨みつける。
「ん。認めよう」
立藤さんは拳銃を下ろして、自称シガレットを箱の中に戻した。それと同時に拳銃が元の煙に戻って空気中に霧散していく。
「な、何をですか?」
「その常軌を逸した献身差。認めるよ。君はまりあの眷属だよ」
「ほ、本当ですか。よかったぁ」
ホッと一息をついて、肩の力を大きく抜く。ようやく緊張が解けてふにゃりとしていると、立藤さんが寄ってきて囁いた。
「君。まりあに相当気に入られているね。本当に交流は深くないんだよね?」
「はい。昨日初めて会話しました」
「は?」
あ。まずい緊張の糸を解け過ぎて余計なことを口走った。今度こそ撃たれてしまう。
「本当に?」
吐いた唾は呑めないので、僕は渋々頷く。
「・・・くはっ、ふははは。あははははは」
立藤さんは今度は豪快に笑い始めた。なるほど姫鏡の笑い方は立藤さん譲りなのだな。
「きっ、君、面白いね! まりあが気にいるのも分かるよ」
「でしょー、オイラー君は面白いんだよ。ね」
「どうだろう・・・」
ねって言われても、僕はつまらない人間だと自負しているので、何がどう面白いのかはわからない。でも姫鏡に気に入れられているという言葉だけは鵜呑みにして、前向きに行こうかと思う。
「まりあ、アーサーの事は俺がなんとかしよう。それまでにオイラー君に影の使い方を教えてあげなさい」
「ありがとう師匠。あ、コーヒーもう一缶買ってくるね」
姫鏡は上機嫌で自動販売機の方へと走っていく。初対面の相手と二人きりにされてしまい気まずい。姫鏡との関係とか尋ねてもいいものなのだろうか。
「俺とまりあはまりあが生まれた時からの付き合いでね。彼女が物心つくころから、剣術や気術を指導していたんだよ。それで名残で師匠って呼ばれてるって訳だね」
「そ、そうなんですか。でも姫鏡は吸血鬼で、立藤さんは人狼なんですよね? どうやって知り合うんですか?」
そう言うと、コーヒーを飲み干しながら立藤さんは驚いた顔をした。
「まりあから他の人外の事を何も訊いてないの?」
「吸血鬼のコミュニティーはあるって聞きましたけど、それ以外は別に」
「ったく舞い上がっているな。しかしああ見えて口下手なところがあるからなぁ。弟子の不出来は師匠が正そうか。オイラー君もこっち側の事を知ったみたいだし言っておくよ。吸血鬼以外にも人外は存在する。アンナイトメア・・・レストランには行ったかい?」
「行きました。もしかして・・・」
「そう。あそこを経営しているのは人ならざるもの。料理を作ってるのがデュラハンだし、ウエイトレスの子は人魚だよ。それで俺は人狼。どんな形であれ、俺は歓迎するよ。ようこそ、こちら側の世界へ」
立藤さんは手を差し伸べてくれた。人ならざる者の手でも、それは爪弾きにされてきた僕からすれば救いの手であった。
「よろしくおねがいします」
立藤さんの手を握り返すと、笑顔で応対してくれた。
どこか胸が空く様な気持ちなのは、今日の大一番が終わったからだろう。
きりのいいところまで書いています。
なにかしらの↓のリアクションやらを頂けると励みになります。何卒よろしくお願いします。




