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オイラー君(1)

 彼女は。

 姫鏡(ききょうまりあであろう。

 いつも横目で見ている。がっつり脳裏に焼き付けている。地獄の中に咲く華だろう。


 その姫鏡まりあが、右目から血の涙を流し、右手首を欠損し、右脚が膝から下まで無いまま、学校の授業を受けるような凛とした姿勢ではなく、我が校の制服姿なのに酔っ払いのような大股開きで、両腕を椅子の背もたれに預けて、煙草を吸いながら天を仰いでいた。


 僕は思考がままならなかった。見てはいけないものを見てしまった。

 まず初めに思ったのはここに来なければよかった。ここに来なければこんなグロテスクな光景に直面することもなかった。地獄に咲いた華の蕾が落ちることもなかった。

 そもそも僕が勉強嫌いにならなければ、こんな夜遅くまで勉強することもなかったのだ。


「ねぇ」


 心臓が飛び跳ねた。

 登ってきた階段から転がり落ちるところだったけど、踏みとどまった。転げ落ちておけばよかったのかもしれない。だけど、初めて姫鏡に声をかけられて僕は舞い上がっていたようだ。


「ちょっとうるさかな」


 姫鏡は天に輝く星々を見上げながらも、咥えている煙草を動かしながら鬱陶しそうに言った。


 声は姫鏡なのだけども、態度が学校で見ていた姫鏡とは全く違った。

 でも上を向いていても見間違うことは無く、街灯に照らされているのは姫鏡なのは間違いなかった。


 そもそも僕は一言も喋っていない。もしかしてこの僕ですら煩いと思っている心臓の鼓動を聞き取られているのか。


「そうだよ」


 はたまた話しかけられて驚いた。よく見ると、姫鏡の視線が天から僕に向きを変えていた。


「よく理解しているね」


 やっぱり僕のことを認識していて、話しかけているようだ。だとしても偶然にも会話が成り立ってしまった。


 何度も周りに人がいないかを確かめてみたけど、ここには僕と姫鏡しかいなかった。

 落ち着け、落ち着け。と、自分を諭しながら大きく深呼吸をする。


「こっちに来なよ」


 姫鏡は何ともない左腕でポンポンと空いている隣の席を叩いた。


 右目から血を流して、右手首と右脚を欠損しながらも余裕の表情だ。激痛であるはずなのに悲鳴も苦痛の表情もせずに、いつものように凛としている。


 それは姫鏡が人間ではない何かだとオカルトと二次元脳が警鐘を鳴らしている。だってそうだろう。こんなことあり得ている方がおかしいだろう。僕は現実に打ちひしがれているのに、こんなにも非現実的なことがあっていいわけないだろ。


「何もとって食べようって気じゃないよ。クラスメイトのよしみでしょ。ほら、おいでよ」


 姫鏡は外ではこんな喋り方なのか。それとも挙動不審で疑心暗鬼になっている僕を諭す為にこんな喋り方をしているのかは、姫鏡にしかわからない。


「ねぇ、私まだ歩けないし、あんまり大きな声も出したくないんだ。だからさ、話す気ならこっちにおいでよ」


 悪魔的な誘いだと思う。あの姫鏡まりあとほぼ密着して話さないかと問われて、断る男子がいるだろうか。例え右目から流血し、右手首から下と右膝より下の物がない状態でも、そこに目を瞑れば・・・・・・話したい。


 しかしいいのか? こんな現実離れした状況でまともに取り合って――まともに取り合えているのかも些か怪しいけども。だからと言ってこの機会を失えば、本当に今後一生僕の人生では姫鏡まりあとは関わり合いがないかもしれない。そんな予感がする。


 問題という壁が突然出来上がった。


 だから僕は壁に向き合うことをやめ、歩を前に進める。


 知らず知らずの内に姫鏡の左隣――と言っても姫鏡とは距離を取って、椅子の端っこの方に腰掛けた。


 なんでこんなことになったんだったけ。



きりのいいところまで書いています。


なにかしらの↓のリアクションやらを頂けると励みになります。何卒よろしくお願いします。



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