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山の恵みを感じていたかった

作者: ナナシ

 美味しい実を実らせる木が沢山沢山その山にはありました。

木々の根元には食べてはならないものもあるけれど美味しいキノコも生える場所がありました。

 人が近づかない森の中、ゆったりとした時間が過ごせるその場所に私達は家を建て、切った木々の数だけ花や木を植えてきた。

 しかし、静かな時間を過ごせたのは本当に束の間だった。

ガタガタガタガタ!ウィーーーン!がっしゃん!

 静かだった森の中に響く機械音。

私達の家の真向かいの土地が買われて、その土地を買った人が木々を伐採していきます。

 美味しい実を実らせる木々も、キノコも彼等にとって邪魔なものでしかないのでしょう。みるみる内に更地になっていきました。

 1ヶ月も経つと真向かいの土地は綺麗さっぱり何も無くなってしまって、私は悲しみを覚えました。

美味しい実を実らせる木々が生える真向かいの土地に良く小鳥や獣達がやってきて憩う姿を観察できたというのに、これではもう彼等の姿を観察する事なんて出来ません。

 広い土地を更地にした彼等は別荘として休みの日にしか来ないというのに、何故ここまで土地を開拓したのだろうかと思っていると、答えはそれから1年後に発覚した。



 「キャンプ場………」

大きな大きな看板が立ったのを見て私は何も言えなくなりました。

わざわざ………そう、わざわざキャンプ場を作る為に広大な動物達の居住地を奪い土地を更地にしたのかと思うと悲しくなりました。

 彼等が切った分の木々を植える姿は見受けられません。きっとこの先何十年と経ってもあの地には何も実らない事でしょう。

 父も母も、兄達も皆がっくりと項垂れました。静かに過ごしたかっただけなのに……と皆が思いました。

 私達は山に住まわせて貰っているという感謝を込めてこの地に来て、家を建てさせてもらったが、真向かいのあの家族はきっと土地を買ったのだから好きにしても構わないだろうという考えを持っているのでしょう。

 木々を切り、動物達の居住地を奪って、県外からの客がその地にテントを張る様子に私は一体何が楽しいのか分からなくなりました。

 自然を感じる為にキャンプをするのでしょうがその自然を壊してまでキャンプをする地を作らねばならないのでしょうか?

 私達は自然を愛し、山の恵みを感じていたかったのに………無念でなりません。




 今日もわいわいと真向かいさんが賑わっております。

自然豊かな山を壊したその場所で………。

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