5時【未読】
※被傷的表現が含まれています。苦手な方はご注意ください。
コンコンコン
廊下に、扉をノックする音が響く。
「千流!夜ご飯できたわよ!」
と、母親は扉の前で千流に呼びかける。
『・・・』
だが声は愚か、反応すら帰ってこない。
ひたすら静寂だけが廊下中を包み込む。
「なにかあったら言ってね・・・」
『・・・』
そう声掛けをして、廊下を歩く。
昨日からずっと部屋に籠りっぱなしで、娘は昨日の昼ご飯から何も食べていない。
早朝から遊園地に出かけていって、数時間してすぐに帰ってきて、自分の部屋に閉じ籠ってしまった・・。
なにか辛いことがあって籠ってると思うと、心が痛くなる。
自室に籠るのは実は2度目になる。
1度目は“あの事件”のすぐだった。
今回もきっと“あの子”のことで心を閉ざしているのかもしれない。
あの子の中ではそれほど辛く、受け止めきれないものだったのだろう・・・。
そう思い、涙をこらえながらリビングに戻る。
リビングには食卓の並んだ机と椅子があり、椅子に腰かける。
私が座ったのを見るなり、向かい側に座る旦那が話をする。
『千流は、やはりダメだったか・・・』
旦那の顔は心苦しい顔もちで聞いてくる。
「ええ、、そうね、、、。きっと辛いことがあった筈よ。今はそっとしておきましょ・・。」
互いに悲観的な顔を浮かべる。
私も旦那も彼女の事を想い、大切に育ててきた。
“何かある”たびに必ず引っ越しも繰り返し、彼女を守ってきた。
その時その時は私と旦那の判断で、彼女を守ろうとやってきたが
今回は、そうはいかない。
もし、彼女を強制的に外に出してしまったら、心が崩壊するかもしれないからだ。
心の整理がつかないままだと、どうなってしまうかわからない。
そして、あの子も成長の機会を失ってしまう。
辛いと思うけど、一度一人で悩んで、一人で解決しないと感じた時にきっと相談してくれる。
私は、あの子から打ち明けてくれるのを願ってる。
それまで、待つことしかできない。
声掛けをすることしかできない。
でもそれが、親としてどれだけ不甲斐ないことか、、。
「何もしてやれなくて、、、ごめんよ、、、」
母はそう苦言を漏らす。
このままの空気感ではいけないと感じた父は、
『なぁ、俺のカッターナイフは知らないか?』
と、話題を変えた。
涙を袖で拭き、父の質問に答える。
「カッターナイフ?どうして?」
旦那は少し訝し気に話す。
『さっき、仕事場で使う工具の確認をしたら、カッターナイフだけなくなってたから、誰か使ってないのかなって思ってな』
「そう、、私は知らないわ、、」
『そうか、、うーん、、千流は昨日から降りてこないから取れないだろうし、、、』
と、顎に手を置いて考える。
結論が出たのは数秒後、
『やっぱり、仕事場においてきたんだろうなぁ、、、明日探してみるかぁ、、、』
と言いながら、旦那は頭を掻きながら困り顔を浮かべる。
(まさか、、ね、、、)
そう思い、さっきまで居た扉の方を見つめる・・。
嫌な予感がしたが、すぐに頭を振って取り払う。
「それより、さきに頂きましょう」
『そうだな』
「『いただきます』」
二人は、手を合わせて互いに同じご飯を食べ始める。
旦那は味噌汁を口に入れて、また話を始める。
『なぁ、話は変わるんだが、、、』
「次はどうしたの?」
私も一度味噌汁を一口飲む。
『いつになったら借金は返せるんだろうな・・・』
「・・・その話、何回目かしらね・・」
『さぁな・・・』
その日の味噌汁は少しだけ、しょっぱかった。
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彼女はベッドの上に座り込んでいる。
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「痛いよぉ・・・」
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カーテンは閉じられ、電気も点いてない。
昼間は薄暗く、夜間は暗い。
少女は一人、涙を流し、
発狂し、
嘆き、
苦しみ、
痛みに耐えている。
それでも、彼女の右手は振り下ろされる。
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「彼は生きてる彼は生きてる彼は生きてる彼は生きてる」
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何度も復唱しては、自身を傷つける。
彼女は自らを痛めつけるしかできなかった。
彼はいるのだと思い込み続ける。
それが彼女が生きていられる道で、救われる為の選択。
崩壊した心は彼を求め続ける。
ただそこに、彼のような存在が居てくれればよかった。
自分が“やってきた過ち”の全てを忘れさせてくれる。
君を感じ続けたい。
だから、いつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでも・・・
君に閉ざされままでもいい。
なのに、私以外の人は不思議そうに見てくる。
「どうして?」
彼はもう【いない】と言う人もいる。
「どうして?」
「どうして?どうして・・・どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!!!!」
また一つ傷が増える。
「彼はいる、生きている、いつまでも、死んでも、永遠に、私の傍に、居てくれるって、、、」
また一つ傷が増える。
彼女の右手には父の名前が書いてある【カッターナイフ】の存在があった。
彼女の腕からは“赤く染められた液体”が滴り落ちていた。
その滴り落ちていく様を見ながら、彼女は虚ろな顔で微笑む。
それの光景はまるで、
【狂人】のようであった。
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「千流ちゃん、、明日の学校来てくれると良いな・・・。」
一人窓の外を眺め、呆けたような顔を浮かべる。
「明日元気で千流ちゃんがきますように・・・」
一人、少女は天に向かって双方の手を握り、祈る。。。。
【明日、元気で学校に来てね。】
千流に送ったLIN○は【既読】が付かず【未読】のままだった。
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・・・・どうでしたか。
彼女の運命は大きく揺れ始める。
たどりつく結果を見届けよ・・・。