千絵ちゃんへ
ここに登場するのは、「鎮守の山」の小説の中に出てくる、幼馴染の2人です。
小説の中で描かなかった、「ハル」の隠れた一面を表現させてもらいました。
千絵ちゃんへ
私は、あなたが怖かった。
泉ちゃんを山に入れたことを知り、そんなことが出来る子だという怖さ。
そして、告白してくれたときに言った、
「ハルちゃんだって、泉ちゃんなんかいなくなればいいのにって言ってたし」
その言葉の意味を、瞬時に察知した私は、
泉ちゃんがいなくなったことの責任を被せられるんじゃないかと思った。
泉ちゃんを探しに行った気持ちの中に、それがあったことも……ある。
私のせいにされたんじゃあ、たまったものじゃない。
あれから私は、千絵ちゃんの存在にビクビクしていた。
だから中学生になって違うクラスになってホッとしたし、
同じ部活にも入らないようにしたし、高校も同じところに行かないようにした。
成人式の日に、千絵ちゃんが失踪したって聞いて、
私は……本当はその行方にピンときた。
……誰もに言わなかったし、今度は探しにも行かなかった。
泉ちゃんを見つけた時みたいな経験は、もうしたくなかったし、
それよりも、千絵ちゃんが山に入れられたんだと思った時、
これで千絵ちゃんと一生関わらなくて済む……そうも思った。
私は本当に怖かった。千絵ちゃんが怖かった。
私だって、泉ちゃんのことは大嫌いだったし、
いなくなったって聞いたとき、これでビンタされなくて済むと、
もう学校にこなければいいのにって、ちょっと思ったけど、
だからって……
それができてしまう千絵ちゃんが恐ろしかった。
私は知っている。
千絵ちゃんは、山の中だ。
その罪を罪とも思わずにいた罰を受けたんだ……
私は、探しに行かないよ。……ごめんね。
ハル




