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宛先不明郵便  作者: 村良 咲
13/16

受取人

 真崎直人。この名前を目にした時、あれ?どこかで聞いたことがあるような気がする。そんな気がしてネットで検索をしてみた。


 そうだ、教育現場で働いた経験を元に、教員がいかにハードな職業なのか、年代がそれぞれ違う何人かの教員の1日を描いた、「教員のある1日」という本の出版を機に、過酷な教育現場で働く教員たちの働き方改革に一石を投じた人物だということに思い当たった。一時テレビで話題になっていたことも思い出した。もうすでに校長を勇退し、現役を退いているという。


 高齢の、父でもある玄信和尚から、宛て先不明郵便を預かり焚き上げるという役目を引き継いだ時、住職がしてきた手紙の内容を確認し、危険を感じるものには細心の注意を払うようにしてきたということも引き継いだ。


 手紙の内容は、決して口外しない。そして心を持って昇華させるよう焚き上げる。その中で目にしたこの手紙は、キチンと差出人の名が書かれており、それが本名かどうかは別として、興味を引いたのだ。


 そして、本来は差出人個人として知ることのない差出人が、自分も名を知る人物だとわかり、そのうえで内容を確認すると、今まで誰ともわからぬまま読んでいた内容と違い、「貴女」が誰なのか、「貴女のお母様」がどんな人物なのか、それぞれの人物がキチンと人形ひとがたとなってその存在が感じられ、俄然興味が湧いてきた。そしてその「貴女のお母様」が残そうとしたUSBメモリーの中身も、いったいどんなものだったのかも興味が湧いて、ほんの少し胸をざわつかせた。


 だが、それを調べるようなことは決してしてはいけない。それはこの真崎直人と同じ考えだ。


 この、真崎直人という人物が、ここを信頼しての心の一つを送ってきたのだから、その想い、確かに受け取りましたと心で呼びかけ、ネットで見つけた真崎直人の顔を思い浮かべ、恵真和尚は心を込めて焚き上げる。


 それは、いつもと変わらぬ寺での光景であった。

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