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十五話

胸がざわつく。

とうとう結果発表だ。

自信があるかと言われれば微妙だ。

それでもどこかに希望を抱いている自分がいる。

「じゃあこれから配役について発表します」

那奈先輩がそう言う。

那奈先輩の口からどんどん配役が発表されていく。

と言っても他は希望者が一人づつだったのでほとんど希望を取った時の通りだったのだが。

主役の発表は、最後だ。

「……それでは最後に主役のオーディション結果を発表します」

僕の心臓は大きな音をたてていた。

那奈先輩が深呼吸をする。

「票数は、同票でした」

周りにいた先輩たちがざわつきはじめる。

「同票って」

「今までなかったよね」

「どうすんの」

騒がしくなりはじめたところに、パチンと手を叩く音が響いた。

那奈先輩だった。

「静かに。騒がしくなる気持ちもわかるけど、今は話を聞いて」

辺りが一気に静かになる。

那奈先輩は気を取り直すと言わんばかりに咳払いをした。

「前置きになりますが、これは部長と顧問で決めたことです。だから反論があったら、オーディションを受けた二人に言うんじゃなくて、まずは私に言ってください」

さすが部長だと思った。

言葉の一つ一つに責任感があった。

那奈先輩がゆっくりと瞬きをする。

「二人とも技術的にはまだまだでした。セリフもそれぞれ聞き取りづらい部分があったりと、正直言ってどんぐりの背比べという感じです」

僕は軽く唇を噛んだ。

わかってはいたけれど、直接言われてしまうとグサリと刺さるものがある。

「でも、それだけではありません」

窓から風がそっと吹き込んだ。

「二人が演技をした時、確かに胸が動かされた。それはお世辞でもなんでもなくて。きっと、これまでの二人の経験が演技の中にたくさん詰まったがゆえの結果だと思います。私はあの時、できることなら二人の演技をもっと見ていたいと、そう思いました」

那奈先輩はそう言って優しく笑った。

「そういうわけで、今回は『ダブル主演』ということでいいですか」

突然の展開に、周りがシンと静まる。

「もちろん多少の台本の組み替えは必要になりますし、それはもちろん私が責任を持って行います。この結果で、どうでしょうか」

みんなの顔が真剣だった。

少しすると、どこからか拍手が聞こえてきた。

それが合図であるかのように、一つ、また一つと拍手が増えていった。

まるで誰かが優しく抱きしめてくれているかのように、心が温かくなる。

「じゃあそれで決定します」

ふと、ゆづと目があう。

ゆづは顔をくしゃりとさせて笑った。



一緒にがんばろうね!!



まるでそう言うかのように。

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