〈1話〉俺tueeeは若干引く
この世界には4つの大陸、180ヶ国の国家がある。
軍事国家が数多く存在するバゼル大陸、
法律国家が中心のリビルト大陸、
95ヶ国の小国家が集中するアカシャ大陸、
そして、他3大陸の間に位置し、各大陸の人間が
行き来するユクルト大陸。
そのユクルト大陸北部に位置する国家フレンスに
俺たちは住んでいる。
比較的、他の国々より資源が豊かで大陸中心
国家より近すぎず、田舎国家にも近すぎない
住みやすい国だ。
そして、今現在俺は、その住みやすい国で…
やさぐれてた。
「かーーー!命張って稼いだ金で飲む酒は
美味いね〜!なっ、サーニャ」
近所にある行きつけの居酒屋でビールを片手に、
目の前にいる女性店員に語りかける。
「ちょっと、アルク静かにしてくれる⁉︎」
「まーまー、そんなに邪険にせんでくれよ」
アルクってのは俺の名前で今年に冒険家試験に
合格した新米冒険家だ。
そして、今俺が会話している店員がサーニャ、
銀髪の長い髪に肌白で、一般男性ほどの俺の
身長より少し背の高いエルフ。
俺が冒険家見習いをしていた1年前に知り合って、
すっかり顔馴染みだ。
ギルドでの仕事終わりはここで仕事の疲れを
癒すことが日課になっている。
「邪険にするのも仕方ないでしょ!多少五月蝿い
なら構わないけど、あんたのは多少じゃないの!
しかも真昼間から!」
「仕方ないだろ、今回の依頼が夜にしか出没しない
モンスターの討伐で、仕事が終わって街に
着いたのが朝だったんだから!あと、五月蝿すぎる
ことは大目に見てください!すいません!」
ギルドにくる依頼によっては早朝からだったり、
夜からだったりするのでいくらか生活習慣が
乱れるのは仕方ない。
夜からの依頼なら朝から夕方まで寝て、
夜に起きる。依頼が終わって朝に帰ってきたと
しても体感的には今は夜なんだから、
晩飯なんだから。
「大概大目に見てるわよ!でも、もう少し大人しく
してなさい!いいわね!」
「で、でも」
「でも、じゃない!」
「はい…」
サーニャの圧力に負けた。まあ、
毎度のやりとりだ。
周りの女性店員もクスクスと笑っている。
仕方ない、大人しく飲むか。
しばらくすると、あまり見かけない若い女性店員が
ソワソワしながら近づいてきた。
俺に近づくと、あまり周りに悟られたくないのか、
俺の耳元に手を添えて話をしてきた。
「あ、あの〜、今日は騎士様はいらっしゃらないの
でしょうか?」
「騎士様?………あー、そっゆことー」
「え?…ヒッ⁈」
あからさまに俺の不機嫌な表情が顔に
出てたのだろう。
俺の顔を見た店員の子が怯えきった表情をしていた。
自慢じゃないが、俺は目つきが悪い。
両親には
「お前の目つきはいずれ人を殺めるやもしれん」と
言われるほどに。
物心ついた時、初めて自分の目を鏡で見て
自分で自分に殺されると勘違いしたのはいい思い出だ。
先ほどの俺の目つきで怖がらせてしまったせいか、
すいませんと繰り返し謝罪している。
「気にしないで、ごめんね、怖がらせちゃって。
君の言う騎士様はあと少ししたら来ると思うよ」
そう言うと「すいませんでした」と一礼した後、
許してもらえた安堵感か、彼女の言う騎士様が
くることの喜びか、どちらか分からない笑顔を
浮かべてカウンターの方に戻っていった。
……恐らく後者だろう。




