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第三話 設定



 杏沙の当てたVRゲームで遊ぶことにしたオレは、段ボール箱を持って二階の部屋へと入る。

 同封されていた【Break Ground Online】のカードの説明を頼りに机の上に置いてあるノートパソコンの電源を入れた。ちなみに、このパソコンも杏沙が懸賞で当てたものだ。杏沙が使えばいいと思われるが既に家族全員分のパソコンが手元にあるため自然な流れでオレも自分のパソコンを持つ結果となった。ほんと、宝くじとか買えばいいのに……。


 説明によれば、なんかVR機の設定に時間がかかるらしくゲームを始められるのは明日の昼かららしい。こういったコンピューター系の操作は得意ではないため父さんを呼ぼうかなと考え止める。きっと今も汗を流しながらトレーニングしてんだ、そんな状態で部屋に入れたくなかった。


 出来る所までやって、分からなかったら母さんに訊こうと決めパソコンが動くのを待った。

 動き出したパソコンを操作して、オレはドリームのサイトを目指す。


「えぇと、ドリーム、ゲームで大丈夫かな?」


 某有名検索サイトから文字を入力する。パソコンも全くというほどしないので入力するのに時間がかかった。でも、画面に出た文字を見ると母さんの言っていた〈ドリーム〉の公式サイトが出てきた。すかさず、それをクリックする。


「で、ここから入って…」


 説明書を読みながら指示通りのページに行く。すると、【Break Ground Online】の購入サイトが出てきた。サイトに先ほど同封されていたカードに書かれているIDを入力してと……おっ、これでいいんだ。

 無事、ゲームをゲットできたオレはしばらくパソコン画面を眺める。インストール中という文字が浮かびあがり%が表示される。

 その間に、段ボール箱からVR機を取り出し、説明書を読む。

 えぇと、このVR機は、睡眠導入製であり使用前に脳波の検出と同時にゲームデータの読み取りを行う必要がある。っと………うん、全然分からん。後で母さんに訊こう。

 オレはベッドの上にそれをそうっと置いた。





 結局、あの後母さんに手伝ってもらって設定が完了したのは二時間経った頃であった。母さんも難しそうな顔をしていたが、オレはそれをヘルメットを装着して横になった状態で眺めるしかなかった。

 そして、現在昼食を家族全員で食べている。トレーニングを終え風呂から上がった父さんも当然一緒だ。


「そういえば、杏沙はまた豪華なものを当てたらしいな」

「そうなの、最新ゲームとVR機をね。我が子ながらその運が怖いわ」

「えへへへ」


 父さんや母さんに褒められて嬉しそうに笑う杏沙。……ご飯粒が付いているぞ。

 チャーハンを口にしながら家族の会話を傍聴する。すると、杏沙がオレのほうに顔を向けてきた。


「でも、杏沙興味ないからおにぃにあげたの」

「ほう、それはよかったな敦獅。あのゲーム父さんの知り合いも中々手に入れられないとぼやいていたからな」

「……へぇ、飽きたらあげてもいいよ」

「おいおい、皆が喉から手が出るほど欲しがっている品物だぞ」

「……そうらしいね。だから、やってみようとも思ったし」


 まぁ、そこそこ面白そうだけど歴史フィギアと比べてどの程度なのか。オレとしてはそこが重要だ。

 そんな家族の会話をしていると「あっ、そうだ」と父さんが何かを思い出したような声を出した。


「明日から遠征だからしばらく帰らなくなる。敦獅、家を頼むぞ」


 現役格闘家の父さんが遠方へ出かけることはよくある。今回は一体どこへ?


「えぇ~、お父さんどこ行くの? 杏沙も行きたいなぁ」


 杏沙が身を乗り出す。おいおい旅行に行くわけじゃないぞ。

 そんな杏沙を微笑ましそうに目元が優しくなっている父さんが返答した。


「今回はアメリカ、ブラジル、韓国を回ることになってるからな。杏沙は連れていけないな」

「ぶぅー、つまらない」


 頬を膨らませて拗ねた声を出す杏沙。そんな姿がまた可愛いらしかった。

 父さんは格闘界では知れた存在で、海外の格闘イベントなどによく呼ばれることが多々ある。

 ていうか、任せると言われても特に何かするわけもないし。まぁ、父さんがいなくなったら男オレ一人だけだし、そういう心構えでいろということだろう。中学生に何かできるとは思えないけど母さんたちに不憫がないようにしておこう。


「ま、母さんがいれば大丈夫だろうけど」

「……そうだな」


 多分、家で二番目に戦闘力が高いの母さんだし。その辺にいる大人の男よりも強いと思う。だから防犯面で被害が及ぶとは到底考えらなかった。


「ん? 何か言った二人とも?」

「「いえ、なんでもありません」」


 母さんの前で強い、とか脳筋、とかはご法度である。父さんに理由を聞いたら、「人には触れてはいけない過去があるんだぞ敦獅」と言われた。あんな顔をする父さんは試合でも見られなかった。

 そんな、家族の楽しい昼食を終えるとオレは再び部屋に戻った。

 昨日作りかけていた『戦国合戦フィギア~姉川の戦い~』を続きをして、完成させた頃には既に日が傾いていた。


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