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第二十六話 部活動見学3



 アバター名『ファング』 所持金92694E


 レベル:15  HP:1200  MP:420

 STR:60 INT:30 VIT:70 AGI:80 DEX:20 LUK:20 TEC:20 MID:20 CHR:20


 装備:ファイターグローブ ナイフ 冒険者の服 サラマンダーレザー


 控え装備:なし


 保持スキル:【体術】Lv5 【索敵】Lv1 【強打】Lv1 【見切り】Lv1 【発見】Lv1


 控えスキル:【ナイフ】  


 スキルポイント1



☆☆



 翌日。

 喧騒に包まれる朝の教室で、オレは眠たい目を擦りながら昨夜のことを思い出す。

 あの後、シルバーに付き添ってもらいながらスキルを習得しに行ったのだが、これが意外と大変だった。

 まず、【索敵】はモンスターに気づかれずに見つけるのが条件で、それを10匹続けないといけない。物音立てず、かつ迅速にモンスターを補足するのは意外と神経を使った。

 【強打】は自身の攻撃力を通常より僅かに上昇させるスキルだったため、これもモンスターへの攻撃にクリティカルヒットしなければいけない。

 【見切り】は、敵の攻撃をギリギリで避けるという条件だった。これはシルバーに付き合って貰いあいつの剣をギリギリまで引き付けて避けることで習得。

 【発見】は、アイテムを地面に埋めてそれを僅かな目印を頼りに見つけることで習得することが出来た。

 習得条件はガイドブックに載っているから良かったものの、実行するのに骨が折れた。もしも、一人でやれと言われたら相当苦労したことだろう。結局、全部覚えるのに時間をかけすぎてレベル上げを行うことなく解散となった。今日ボス戦なのに大丈夫なのか?


「あ、おはよう灰原君」


 今晩のイベントに少々不安を覚えているところに横から元気な挨拶が聞こえる。そちらへ顔を向けると、加賀が明るい笑顔を浮かべていた。


「……あぁ、おはよう」

「なんだか眠そうだね。寝れなかったの?」

「……いや、朝はちょっと苦手で」


 気持ちの良い布団がどうしてもオレを離してくれないだけだ。しかし、そんな話は母さんには通じない。少しでも起きるのが遅くなると部屋に突撃され、十字固めや三角締め、酷い時はジャーマンスープレックスが飛び出す。……実の息子をプロレス技で起こす母親とは一体。

 だから、寝坊するにしても杏沙が起こしに来るか、母さんが下から声をかけるまでがボーダーラインになっている。

 まぁ、そんな我が家の朝事情を加賀に告げることもなく。加賀も「そっか」と軽く相槌を打つと席に座り、鞄から教科書を机へしまう。


「そうそう、灰原君。部活、どこにするか決めた?」


 ふと、思い出したのだろう。加賀はこちらへ顔を向け訊ねる。

 気のせいか、その眼がどこか期待しているようだった。


「……いや、まだだけど」


 正直に答える。実際、昨日の部活見学でも目ぼしいところはなかったしな。

 

「そっかぁ……」


 しゅん、と項垂れる加賀。その姿はどこか犬を思わせる。耳を尻尾があれば垂れている所だろう。

 なんか、非常に申し訳なく感じてしまう。あんなに熱心に連れまわしてくれたのに。


「でも、昨日先輩たち驚いていたよ。教えたらすぐに出来ちゃうし、特に柔道部の人たちから熱心に勧誘されていたよね?」

「……まぁ、そうだけど」


 総合格闘家の父から色んな技術は教わっていた訳だし、自慢じゃないが基本となる受け身や投げ、寝技は出来る。わざわざ部活に入るメリットがない。

 けどなぁ、加賀の言う通り昨日柔道部の勧誘はきつかった。顧問の先生からも誘われる始末だったし。

 運動部は、やめておこう。ジムにも行って部活はきつい。

 なら、入るとしたら文化部だな。しかし、これには問題がある。

 文化部は大人しいイメージがある。そんな人たちがオレのような奴を快く受け入れてくれるのかが問題だ。


「……はぁ」

「ど、どうしたの?」

「……いや、ちょっとこれからのことについて憂鬱になっただけだ」


 机に突っ伏すオレに加賀は困った表情を浮かべて見ていた。



☆☆



 あっという間に放課後。授業も終わり、皆一斉に教室から出て行く。もう既に部活を決めた者は練習に参加するようで、スポーツバッグを持っている。加賀もテニス部に入部したようで、別れの挨拶を済ませるとすぐにテニスコートへと駆け出して行った。

 さて、今日はどうしたものか。昨日は加賀が付き添ってくれて部活動見学したけど、一人で見て回るのは……正直きつい。

 仕方がない。今日の所は大人しく帰ろう。今日はボス戦も控えているし。


 心の中で口早にまくし立てると、鞄を持ち教室を出る。廊下に出れば友達と話をする同級生の姿がちらほら。その姿はBGOでよく見かける光景に似ていた。

 廊下に出て、昇降口へと向かう。窓の外からは運動部が部活の開始を告げるように掛け声を発し、吹奏楽部の音楽が響き渡る。

 やがて、昇降口の手前まで来るとふと視界の端に大きく四角形の掲示板があった。そこに、多くの部活動勧誘ポスターが貼り出されていた。力強い文字から可愛らしいイラストまで、もはや掲示板からややはみ出ているものもある。


「……意外と色々あるんだな」


 昨日は運動部を中心に回ったが、この光景を見ると全然見て回れていないのだと気づかされる。まぁ、大抵の生徒は最初からどこに入部するか当たりをつけているだろう。加賀もそうだったし。

 興味が出てきて、暫く掲示板にあるポスターを眺めてみる。


「……野球部、サッカー部、バスケ、バレー、吹奏楽に演劇部まであるのかよ。……あ、漫研も」


 王道からマイナーまで、マンモス校だからこんなに種類があるんだろうな。

 そんなことを呟きながら流し目で、左から右へ視線を泳がせていると__


「……ん?」


 ふと、ある一枚の紙に視線が固定される。

 綺麗文字だが他と比べて部員を集めようする工夫を感じさせない、質素なポスター。


『歴地化学部』


 一瞬、首を傾げる部活名。じっくり見てもやはりよく分からない。

 れ……れきちかがくぶ? 読みづらい部活名だ。

 えっと、何々『歴史、地理、化学が好きな方は是非見学へ 旧校舎二階理科室』。えっ、概要これだけ? 

 あまりに雑な説明に少々胡散臭いものを感じる。

 でも、ふむ歴史か……。最近ゲームばかりでやっていないが、昔から戦国武将とか好きだったしな。この間も作っていた。

 これは……ちょっと、興味深いかもしれない。

 オレはもう一度部活場所を確認する。旧校舎の二階、理科室。まだ理科で利用したことはないけど、これだけ分かれば大丈夫だろう。


「……よしっ」


 気合を入れるように小さく呟く。一人で行くのは心細いが、男は度胸、ここで退くのは情けなさすぎる。

 シルバーだったら、一目散に駆け出しているところだろう。

 ふと脳裏にあいつの顔がよぎり、思わず吹き出してしまう。

 そのおかげか、心細く、速まっていた心音が落ち着きを取り戻した。


「……それじゃ、行きますか」


 来た道を振り返り、オレは旧校舎へと向かった。

 

  

 


 

 









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