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第十一話 二日目終了



 森の更に奥へと進むと舗装されていた道は徐々に無秩序な獣道へとその姿を変えた。横から飛び出る雑草が鬱陶しく体に当たり、行く者の神経を逆撫でする。

 だが、前を歩くシルバーは行く手塞ぐ雑草の中でも楽しそうに鼻歌交じりにどんどん進んでいく。若干、音程がオカシイのは既存の曲じゃないからだろう。


「ファング、今レベルいくつ?」


 悠々と上機嫌に歩くシルバーは前を向いたままオレに訊ねる。


「……今、9だ」

「そうかぁ、なら今日中に10まで上げて終わろう。いい加減疲れただろうし」


 最初にビックベアを倒してから約二時間が経過していた。その間、シルバーの案内で森を適当にぶらつきながらモンスターを倒して順調にレベルを上げていた。

 この森に生息するモンスターは決まっているらしく、兎や熊の他にも蛇や狐なんかもいる。

 モンスターに出会う事を『エンカウント』と言うらしく、プレイヤーと出会ったモンスターの動きはリアルの動物と同じ。逃げるか襲うか基本この二択だ。なので、モンスターを探す際は少し慎重にならないといけないというのがシルバーの話である。

 

「……いや、まだ大丈夫なんだけど」


 二時間近く動き回っているが、いまだに体に疲れは来ない。父さんとの稽古に比べればこのくらいでバテる訳もない。

 しかし、オレの言葉にシルバーは首を振った。


「自分がそう感じていても、リアルの体は疲れているかもしれないだろ。ファング確かVRゲーム初めてって事だから知らないと思うけど、二時間置きに休憩するのとゲーム前にはトイレや水分補給を済ませておく、これは鉄則だよ」

「……そうなのか?」

「うん、仮想世界はリアルだからね。モノも食べられるし、味も感じるから疎かにする人もいるけどこの体を操っているのは生身の体だという事は忘れちゃダメなんだよ」


 口調が先ほどまでと違い真面目なものだったからか、彼の言葉がすんなりと耳に入って来る。恐らく、彼の言っている事は本当に大切な事なのだろう。


「……分かった、お前の言う通りにしよう」


 自分は素人、向こうは玄人。ここは素直に言う事を聞いておくべきだろう。

 オレが頷くのを見たシルバーは、にっこりと微笑んだ。

 

「それにしても、随分奥に来てしまったな」

「……来たことないのか?」

「うん、俺もここまで奥には来たことない。ここまで来ると、多分フィールドボスのいるエリアまで出ると思う」

「……フィールドボス?」


 聞き慣れない単語に首を傾げる。オレの声に、シルバーは面倒くさがる事なく答えてくれた。


「フィールドボスっていうのは、その名の通りフィールドにいるボスモンスターだ。BGOは【ガウス街】から東西南北それぞれにあるエリアからスタートし、各地にいるボスを倒す事で次のエリアに進む事が出来るらしい」

「……らしい?」

「まだ、誰一人としてフィールドボスを倒すどころか発見していないから本当にそうなのかは判明出来ないんだよ。まぁ、それでもその内誰かが見つけると思うけど」


 つらつらと、まるで途切れる事なく言葉を並べるシルバー。まだこのゲームがリリースされて一週間も経過していないというのによくそこまで知っているものだ。どこでその知識を得られるのだろう?


「え? 全部普通に取説とかホームページに載っていたけど?」


 興味本位で訊ねたら常識とばかりにそう言われた。

 やめてくれ、その『え、そんな事も知らないのこいつ?』みたいな目を向けるのは。聞いた自分が恥ずかしくなるから。



 と、そんな風にシルバーにこのゲームについてご教授してもらいながら進む事数分。ようやく、オレのレベルも目標の10に到達した。


「……ふぅ、倒した」

「お疲れ~、最初の頃に比べれば慣れてきたみたいだな。そもそもの運動神経もいい方みたいだし、これならすぐに俺のレベルに追いつくよ」


 シルバーからのありがたいお墨付きをもらい、上がったレベルで得たステータスポイントを割り振る。

 数時間前までは全然よく分からず振っていたステータスだが、シルバーのアドバイスを受けながら振ったら最初よりもだいぶそれらしくなっていた。





 アバター名『ファング』 所持金10500E


 レベル:10  HP:1200  MP:420

 STR:50 INT:30 VIT:70 AGI:40 DEX:20 LUK:20 TEC:20 MID:20 CHR:20


 装備:ナイフ 冒険者の服


 控え装備:なし


 保持スキル:【体術】Lv1


 控えスキル:なし 


 スキルポイント4





 スキルを得るにはスキルポイントが必要らしい。

 スキルポイントはレベルが5上がるたびに1追加され、最初はボーナスとして3ほど貰っている。これは、簡単にスキルを習得出来てしまうとカオスになってしまうからだろとシルバーは言っていた。

 まぁ、確かにそう簡単に技が身に着けば苦労などしない。

 残りのスキルポイントはまだ他のスキルが発現してないので保留。それに、スキルによってはポイントが2や3必要なのものあるらしいから慎重にならないといけないらしい。


 VITに振ったのは、HPが少ないのが気になったからだ。大抵の攻撃は躱せるのだが、それでも何度か喰らってしまう。その際に徐々に減るHPが怖いと思ったのだ。

 

「へぇ、耐久型にしたんだファング」

「……あぁ、とりあえずは攻撃喰らっても大丈夫なようにしておきたくて」


 よく母さんや杏沙から心配性と言われるのだが、何事も最悪を想定しておくべきだと思う。

 

「ふぅん、ファングはタンク向きなのかな」

「………タンク?」


 もはや、何度目かと思う疑問。

 シルバーの口からはよくオレの知らない単語が出てくる。まるで、四次元ポケットのようだ。

 

「う~ん、それはまた今度かな。一気に全部教えても分からないでしょ?」


 ありがたい。自慢じゃないが、オレは勉強が出来る方ではない。シルバーの言う通りまとめて用語を教えられても覚えている自信はなかった。


「それじゃ、レベルも上がった事だし。今日はもう帰ろう」

「……分かった」


 郷に入っては郷に従え。ここではシルバーの方が先輩なのだ、大人しく言う事を聞いておく。

 結局、オレたちはその後来た道を辿って街まで戻るとログアウトした。



 ログアウトした途端、すぐにトイレに行ったのはここだけの話。

 確かにこまめな休憩は必要だとこの時みっちりと体感した。





 

 








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