第一話 灰原敦獅
BGOの外伝始めました。この話はBGOが稼働してからの話となっております。
本作の主人公は___
読んでからのお楽しみという事で。
それでは、本作をごゆっくりどうぞ。
※更新はまばらとなります。その間にBGOで過去について触れると思いますが悪しからず。
人と関わるのは苦手だ。公園のブランコでサッカーをして遊んでいる同じ年頃の子たちを見てそう思う。
自分は普通の人間とは違う。自分には友達なんてものが出来ない。いつしかそんな暗い考えを持ち、すべて諦めていた。
しかし、あの日、あの時、あの場所で、太陽に会った。キラキラと輝き、誰にも等しく照らされる太陽のように、眩しい笑顔を向ける人。こんな自分に全く嫌な顔せず接してくれる人。
運命なんてよく分からない。だけど、あの時自分は確かに実感したんだ。
こいつは自分にとっての太陽なんだと。
☆☆☆☆☆☆
ピピピピピピ!
ベッドの上でけたましく鳴り響く邪神の存在がオレの耳に届く。顔を起こすことが億劫で毛布の中から手探りで邪神様を探し、その頭を思いっきり叩いた。
バキンッ!
あ、やっちまった…。
何やら鳴らしてはいけない音が漏れたようで、ゆっくりと顔を出すとそこには形を成していない可哀そうな残骸が存在していた。
やばい、またやっちまった……
徐々に覚醒する脳が状況のまずさに気付き始める。すると、部屋の外からトトト、と軽快な足音が聞こえてきた。
「おにぃ? 朝だよ~……」
いつもの朝、いつもの習慣のごとく開けられたドアから覗かせる可愛らしい顔は、我が妹灰原杏沙。くりっ、とした眼に愛くるしい唇に長く艶のある黒髪をなびかせるその姿は俺とは似ても似つかない美少女である。
そんな可愛らしい目が破壊された目覚まし時計を捉えると瞳孔を大きく開かせた。
「あぁ~! おにぃ、また時計壊したの!? これで何回目なのよ~。おかーさん、おにぃがまた時計壊した~!」
「……これは、その、あの」
朝から元気のよい妹の声が階下へと響く。オレの必死な弁明も虚しく朝食前に母さんに怒られてしまった。
最悪の朝である。
☆
「まったく……毎回目覚まし止める度に壊されたら溜まったもんじゃないわよ」
「……ごめんなさい」
朝食の席で斜め前に座る母さんがため息とともに吐き捨てる。
反論の余地もないので謝罪するしかない。オレの隣に座る杏沙はニコニコとウインナーを口にしている。
……可愛い。
「ふぅ~、いい汗掻いたぜ」
すると、野太い声とともにリビングのドアが開かれた。
ドアから現したのは我が父灰原友、額に汗を流し首元のタオルで拭うその姿は子供二人を持つ親とは思えない。我が父ながら恐ろしい。
「おはようお父さん!」
「おはよう父さん」
「……おは」
朝から暑苦しい光景であるが、見慣れてしまっているため朝食を摂りながら挨拶をする。
「おう、おはよう皆!」
だが、ウチの父はオレの冷めた態度に凹むことなく母の隣に座る。
いや、せめてシャワー浴びてから座ってくれ。
「ねぇ、聞いてよお父さん。おにぃがまた目覚まし時計を壊したんだよ?」
「ほう、またか……」
杏沙め、余計なことを……。父さんの目つきが変わったぞ。
「その有り余るパワーを父さんと発散させないか敦獅?」
「……いやだ、父さん絶対手加減しないから」
「そんなことないぞ? 毎回ちゃんと加減しているぞ」
「……あれで手加減しているならもう無理だ、そもそも小学生が父さんについて来れる訳ないだろう」
オレの心から叫びに父さんは首を傾げる。自覚がないのが余計質が悪い。
何を隠そうウチの父は、現役の格闘家。御年40だと言うのにいまだにその戦い方は獅子のごとしと呼ばれその筋では有名らしい。というオレはあまり父さんの仕事には興味がないためあまり知らない。杏沙と母さんはよく試合とかに行くらしいがオレは部屋で趣味の日本名城モデル(40分の1スケール)を作っていたりする。
「……いや、あれでもよくついてこれていると思うわよ」
母さんが何やら呟いたように聞こえるが味噌汁を飲む音でかき消されてよく聞き取れなかった。きっと息子の苦労を同情してくれているに違いない。
「なぁに、この春から中学生になるんだ。今までより体も大きくなってくるだろうしイイ感じに練習相手になると思うぞ?」
「……いや、無理だから。いくら体が大きくなろうが父さんの練習相手なんかになれないから」
まったく、この父親は少々親バカが入ってるんじゃないか?
業界で有名な格闘家とオレのような子供なんて、象とアリくらいの違いだろうに。
白米を口に含みながら父さんを見ると「そうか……」とあからさまに残念そうな顔をしていた。いや、いくらしおらしい顔をしようとやらないからな絶対。
オレは普通になりたいんだ。