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闇堕ち偽勇者のハードライフ  作者: ヒナの子
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5話 甘い夢はチート能力で吹き飛ばされる

 地下に繋がるハシゴを降りて、陣形を取る。

 入り口で既に待ち伏せされている可能性もあるらしい。


「大丈夫みたいだな。ーー進むぞ」


 周りを確認して安全を確保。

 そして隊列を組んで進行。

 これの繰り返しだ。


 壁の所々に雑な造りの松明が置かれている。

 それのお陰で完全な暗闇ではないが、肝試しには困らない程度の不気味さが漂っていた。


 5分経っただろうか。

 薄暗い地下を進み続け、暗闇と緊張に慣れてきた頃だった。

 その慣れは決して慢心には繋がっていなかった。


「ギャァア!? ギャアァア!!」


 ゴブリンと遭遇した。


 不潔感の滲み出た緑色の肌にボロボロの服を被せている野生のモンスターそのものだ。

 醜い目で俺たちに敵意を向けてきているが、怯えよりも先に嫌悪感が襲ってきた。


「各自仕事をこなすぞ!」

「「「おう!」」」


 チョーザさんの掛け声に前衛の3人が躍り出る。


 翔斗の武器は【神王剣】を使うための両手剣。

 匠は左手に盾、右手に片手剣を持っている。恐らく【守護神】に適した装備なのだろう。

 俺は腰に短剣をぶら下げているものの、装備は小手のみだ。


「俺と業平で攻撃だ! 取りこぼしは匠が対応してくれ!」

「「了解!」」


 匠の前へ出てゴブリンとの距離を詰める。

 敵は7体。想定よりも少ない数だ。


 相手も距離を詰めてきている。後衛の役割をこなす変異種のゴブリンの1体を残して他は突撃してきている。

 後衛の役割をこなす変異種は主に低位の魔法を使う。

 決して油断ならない相手だ。


「俺が先にやるよ!」


 翔斗の持つ両手剣の輝きが増していく。

 オンボロだった刃も、今では神々しい光を纏いゴブリンをケチらそうとしていた。

 これが勇者の剣士枠。王道の強さだ。


 俺にはそんな、勇者の枠にハマった力はない。


 突撃していたゴブリンの内、前の3体は1振りで壁に押し付けられ、力なく倒れていた。

 あと3体が迫ってきている。


【ブレイブショット】

【ブレイブショット】

【ブレイブショット】

【ショートレンジ特攻】


 頭にギフトを浮かべると両手に光の玉が凝縮していく。

 腰を落として地面を蹴った。両手を2体の胸の位置に狙いを定め、そのまま突進する。


 ドゴォォォーン


 そんな轟音が響き、土煙が視界を覆った。


 両手がゴブリンと接触するかどうかの直前に【ブレイブショット】を放った。手応えはあった。


 元々頭の中にあったこの戦い方が使えるかどうかを試すことが出来た。自分の中では良かったと思う。


「す、すげぇな」


 ゴブリン達は一体残らず吹き飛び、絶命していた。

 胴体が吹き飛び、頭が転がっているだけという悲惨な状態の死体もある。


 命を奪った。

 相手はゲームでは雑魚キャラとしてお馴染みのゴブリンだが、この世界では違う。

 初めての体験と、あまりにも呆気なく散ったしまったことで感覚が麻痺したのだろうか。


 殺すことになんの感情も抱いていない。


「こんな簡単に殺せちゃうの?」

「いやいや、そんなことは無いはずだぜ! あんちゃん、一体何したんだ?」


【エターナルデッドヒール】のギフトしか所持していないと思っていたはずだ。

 俺は言えば死んでも大丈夫な便利な盾役、そんな印象だっただろう。


 俺がしたのは簡単なことだ。

 核となる【ブレイブショット】の威力を強化するために【ブレイブショット】ⅹ2を使った。

 3回同時に発動できたのだ。その度に光の玉は凝縮され密度が増していくように見えた。


 因みに4回同時発動しようとしても不可能だった。


 その強化版【ブレイブショット】を【ショートレンジ特攻】で更に強化した。


 ここでギフトの詳細の鑑定結果を紹介しよう。


【ブレイブショット】

 高濃度の光熱に指向性を持たせ、放つ。


【ショートレンジ特攻】

 攻撃範囲距離を固定し、本来の攻撃範囲よりも収縮した分に比例して攻撃の威力を上げる。


 これをただ組み合わせただけ。


 「企業秘密でいいっすかね?」


 少しおちゃらけた感じで誤魔化してみる。

 勇者が初めに貰えるギフトは1つ。

 もし、魔王後継者が複数のギフトを持って生まれてくるとかだったら面倒だ。

 勇者じゃないのがバレてしまう。


 「いいよ。誰にでも言いたくないことの一つや二つはあるんじゃないの?」


 意外にもそう返してくれたのは花梨だ。

【大賢王】の彼女からしたら強い前衛なら誰でもいいのかもしれない。

 それくらい無関心に見えた。


 「……そうだね。強い仲間ってことは変わりないしね!」

 「ありがとう。俺はお前達を裏切ることは無いよ」


 だって裏切ったら勝てる気しないし。

 どこかで聞いたことがある。

 極限まで特化したものに対して数で挑んでも焼け石に水だと。


 これが俺の戦い方だが、それには限界がある。

 この世界でレベルと魔法はほぼ直結している。俺がこれから新しい力を手に入れられるチャンスは無いだろう。

 その分の前借りが10連ボーナスだとすれば、納得だ。


 「あんちゃんの強さには驚いたが……音が出過ぎたな。来るぞ!」


 倒したゴブリンが来た道から続々とゴブリンがやってきた。

 醜い目を暗闇で光らせて、まるで肉に餓えるハイエナのごとき必死さで突進してきた。


 「私がやるわ。手っ取り早いし」


 花梨はそう言って手を前に突きだし、一言言った。


 「バニッシュメントシャイン」


 彼女の手から無限にも思える光の線が放出される。

 すぐに視界一面が白色の光に埋め尽くされたが、完全に無傷だった。

 光の線は俺達だけを避け、ゴブリン達を襲った。


 なんとそれは5分間も続いた。

 醜い呻き声や断末魔が聞こえ続け、光が引いた時。

 残っていたのは地面で光る魔石だけだった。


 チート過ぎる。


 今だけは勇者よりも力を手に入れたと自惚れていた自分が恥ずかしくなった。

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