4話 お約束の自己紹介とチート能力
◇勇者の中土翔斗◇
レベル:1/∞
ギフト:【神王剣】
◇勇者の坂原由紀◇
レベル:1/∞
ギフト:【超新星】
◇勇者の有原匠◇
レベル:1/∞
ギフト:【守護神】
◇勇者の田辺花梨◇
レベル:1/∞
ギフト:【大賢王】
おうおうおう天使さんや。
∞にする力があるならせめて100は欲しかった。
いくらなんでも3はひどいっ!!
「次は業平の番だぜ」
「ああ、俺のギフトは」
さて、どうやって切り抜けるべきか。
【皇化】???
頼みの綱の説明もこれだけしかなかった。
どうやら自分のステータスだけは【鑑定】なしで見れるみたいだ。
仕方がない裏の手だ。
「俺のギフトは【エターナルデッドヒール】って言うんだ」
【エターナルデッドヒール】
病気以外のダメージを死亡と同時に回復する。
ギフトの説明をした時、みんなの顔を見たら唖然としていた。
落胆されても仕方がない。みんなのようなすんげぇーギフトじゃないからな。
でも、これで仲間を切られるのは嫌だな。せっかくの日本人同士なんだし。
「……す、すげぇ」
「うんうん! だって実質不死じゃん! 死んでも蘇生確定でしょ?」
あれ?
「役に立たないとかじゃなくて?」
「そんなわけないじゃん! 私のとかよりもよっぽど強いよ!」
そういう由紀のギフト【超新星】は超大規模攻撃だ。
憧れるチート能力の1つだな。
でも確かに蘇生能力と考えればいいのか。
魔法やギフトで回復出来る世界だったら死ぬ事なんてそうそうないと思うけど、そのもしもをカバーしてくれる。
確かに安心できるな。
「話は終わったみてーだな」
「あっ、チョーザさん! どこ行ってたんですか?」
「野暮用だ。それよりも自己紹介が終わったなら俺と一緒にゴブリン狩りに行かねぇか? あんちゃん達みたいなビギナー向けだぜ?」
後ろから声をかけてきたのは世紀末モヒカンことチョーザさんだ。
ゴブリン。お約束通りかもしれないが、それ故にベストかもしれない。
「な、なぁ業平。この人は?」
「ああ、紹介するよ。チョーザさんだ。俺をこの世界で拾ってくれた人だな」
「悪い人ではないんだな」
「そこは大丈夫だ」
とりあえず納得してくれたらしい。
見た目が見た目なので女性陣はまだ怯えている。
無口な匠は無表情。何を考えているかよく分からない。
「でも、俺達まだ装備も何も無いよ」
「それならギルドの貸し借り無料のやつがある。金が溜まるまではそれを使えばいいぜ」
冒険者ギルドはそこまでやってくれるのか!
正直今は猫の手でも借りたい。
結局無一文で、今日の寝床もない。この世界に来てから何も変わっていないのだ。
「ゴブリン狩りなんて勇者様たちには軽すぎる仕事かもしれねぇが、ようは試しだ! 1回くらい体験しても損はしねぇと思うぜ」
「業平に任せるよ。業平が行くって言うなら俺達も行くよ。なっ?」
翔斗がそう言うと他の面々もうんうんと頷いている。
一刻も早く金が欲しい俺にとっては悩む要素がない。
即決だ
「行こう!」
これが勇者の初陣となり、嫌でもチートぶりを目にすることになった。
☆
「大丈夫かな~?」
「どうしたのアリーサ」
「いやね、件の勇者様たちがチョーザさんのゴブリン狩りに着いて行ったんだけど……」
「あーそういう事ね。勇者様っていう程なんだし体だけじゃなくて精神も強いはずだよ……多分」
「そうだといいんだけどねぇー」
☆
「ストップ。ここで1度ストップだ」
郊外の森に入って歩き続けること30分。
険しい森の中を歩いているはずなのに疲労を全然感じない。これも勇者とやらのパワーなのだろうか。
あ、俺……勇者じゃなかったんだ。
「ぼーっとして、どうかしたのか業平? 」
「ん? 悪い、ちょっと考え事をしてた。チョーザさん、後どのくらいで着きますか?」
「それを今から話そうと思ってたんだ。まずはゴブリンの性質についてだ」
チョーザさんは手で皆に座るように指示をして、地面に何か書き始めた。
「ゴブリンの巣は芋づる式だ。巣が地下で繋がっていて、一つの巣を見つければ直ぐに他の巣のゴブリンに伝わってしまう」
「アリの巣みたいな感じか」
「アリってのがよく分かんねぇけど、あんちゃん達の考えてるので間違ってねぇだろう。巣によって違いはあるが10〜20体のゴブリンが2、3セット続くと思って挑むぞ」
「挑むってことは出てこないのか?」
「……いや、そうとは限らない。ゴブリン達は独自の言語を使う。人間が考えるより狡猾だ、何があるかわからねぇからどんな状況になっても安心出来るために心構えくらいはしとこうって話だな」
そのことを話すチョーザさんは暗い顔をしていなかった。しかし、彼の顔には哀愁と何かに対する憎悪が剥き出しに現れていた。
その彼の顔を見て、臆病な世界で育った俺達は改めて異世界に来たんだと再確認させられた。
命の覚悟。それに触れた瞬間だったと思う。
それでも、頭の中を駆けめぐるのは最悪の結末。
自分たちが全滅するという妄想に囚われ怯えていた。
「巣の入り口はあの大樹の下だぜ。昔、鉱物を採掘するとかで掘られた穴がそのままゴブリンたちに活用されたらしい」
「改めて確認していいか」
「ええっと翔斗だっけか? そんなに心配か?」
確認とはそれぞれの役割の確認とルールの確認のことだろう。
「ああ、出来ることは俺もやっておきたいと思った。ビギナーはビギナーらしく準備しないとな。勇者だからって死なないわけじゃないんだ」
覚悟。
そう呼ぶにはまだまだ甘いのかもしれないが、この世界に順応してきたのだろう。
顔つきが完全に先程までとは別人だ。
これが勇者に選ばれる人と俺の違い。
俺はチョーザさんの話を聞いて怖いと思い、怯えていた。ただそれだけしか出来なかった。
「前衛は俺と業平と匠。中衛がチョーザさん。後衛が花梨。サポーターが由紀」
前衛はアタッカー&ディフェンダー。
中衛はバランサー。
後衛はヒーラー&ビッグアタッカー。
サポーターはドロップ品や魔石の回収。
後衛の由紀さんがヒーラーと、ビッグアタッカーを1人でこなさなければならない。
ビッグアタッカーは一発逆転の一撃を放つ役割だが、今回はそれは二の次になる。
その理由は
「地下では範囲が大きい攻撃はできない。崩落したら大変だからな。だから由紀はヒーラー、花梨はサポーターに徹してくれ」
「おっけー!」
「わ、分かったよ!」
という事だ。
野外などでの戦闘では大活躍できる魔法使いも地下ではサポーター。
その穴を埋めるのは前衛の働きにかかっている。
勇者2人に期待大だ。
「よし、じゃあ入るぞ」
一致団結。
心を一つにして仲間と共に死地へと向かう。
しかし、俺の心の中はひとつの目標で埋め尽くされていた。
【ブレイブショット】が当たりかハズレか。
それをハッキリさせてやる!
読んでくださってありがとうございました!