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闇堕ち偽勇者のハードライフ  作者: ヒナの子
12/27

12話 ご都合主義と暴君誕生

 どのくらいの月日をこの暗い谷底で過ごしたのだろうか?


「空腹を拒絶する」


 そう言って、食に困らなくなり、ここでも問題なく過ごせるようにはなったが、飽きもくる。


「ガルゥ?」

「あんだけ殺しておいて心配でもしてるのか? 大した学習能力だ」


 ケルベロスは完全に服従していた。世に言う恐怖政治だろうな。

 今となってはどうでもいいことだ。


 今日まで俺はこの魔獄谷から出たことは無かった、地上に戻ろうとしても出来ないだろう。

 しかし、人間暗い所にずっといるとネガティブになると言うように、俺も気持ちのいいものでは無い。


「ここを出る。隣の谷に攻め入るぞ」


 そう。俺がケルベロスの言葉を理解できなくてもケルベロスは俺の言葉を理解している。

 さらに、この谷に終わりはなく、縄張りごとで別れているらしい。途中で諦めたがひたすら歩き続けて2時間経っても終わりはなかった。

 その2時間歩いた地点でケルベロスが急いで俺を止め始め、必死に絵を描いて教えてくれた。


 隣の谷にも魔物がいて、その魔物には翼があるということ。


 なら、ここと同じように支配してしまえば地上に出られるかもしれない。


「ガルゥ!」

「俺を背中に乗せて縄張りの境界線まで送り届けろ」

「ガル!」


 俺に1番懐いているケルベロスは初めに俺に襲いかかってきたやつだ。

 まだまだ怯えて逃げるやつや、たまに襲いかかってくる奴もいる中で、こいつは完全に子分だ。


 現に今も俺が乗りやすいように腰を低くして俺を待っている。


「おし、行け!」

「ガルゥッ!」


 乗り心地は悪くないが、風邪がすごいな。まるで車の上に乗っているような気分だ。


「風を拒絶する」


 これで安心だ。あとは目的地に着くまでゆっくりしとけばいいか。


 行く先にいるケルベロスは俺を見るなり、道を開け怯えた目で俺を見る。そんなに怯えなくても何もしないからその目はやめて欲しい。


「早く言語を理解できればいいんだけどな」


 言語理解のギフトがないのは辛い。と言うか、普通はないのだろうが、そこは異世界転移の特典として欲しいところだ。

【公用語理解】のギフトはまだ残っているはずだが、ケルベロス達の言語は理解できない。公用語の基準がわからないから使い勝手の良いギフトとは言えないな。



「ガル?」

「ガルガルゥ!」

「ガルゥ!」


 うん、分からない。


 衛兵的なポジションなのか、縄張りの境界線であろう場所でケルベロスに声をかけられて(?)俺の子分も止まった。


 うーん、名前が無いとめんどくさいな。

 じゃあ子分第1号はポチにしよう。ケルベロスも犬だしな。


『名付けにより個体名ポチの主となりました。よってケルベロスの能力の一部を取得します』


「やったー! 御主人様に名前を貰ったー!」

「し、喋った?」

「御主人様! 御主人様がなんで僕達と同じ言葉を話してるのー?」

「いや、俺もわからない」

「へー、そうなんだー!」


 ご都合主義と言わざるを得ない出来事だな。

 ポチの主となったのはいいが、それでケルベロスの能力の一部を取得したってことだろ? 毛むくじゃらになったりしないのか?


 ……今のところはなんともないな。


「で、話を戻すけどこの先が?」

「うん! 翼を持ってるクソ野郎どもが住んでる谷だよ!」


 翼を持ってるクソ野郎の部分にそこはかとなく悪意を感じるのは気の所為か?

 そんなに仲が悪いのか? ご近所的な関係だと思ってた。


「とりあえず突撃だ」

「うん!」


【神霊・拒絶】がある限り負けることはないのは確定だ。

 ポチに跨ったまま走り始める。景色が変わることも無く、ケルベロスの縄張りと同じ赤黒い壁だ。


「ガァル!!」

「御主人様!」

「攻撃を、間に合わなっ!?」


 いきなりの容赦のない攻撃。当たり前か。


 空から垂直飛行してきた魔物がその鋭い牙で俺ごとポチを噛み砕こうとしてきた。

 完全に奇襲を成功させられた。ギフトを使う時間もなく、とりあえずポチを蹴飛ばして逃がし、大人しく噛まれた。


「御主人様!!」

「死んでないから。いや、死んでもう生き返ったから」

「はー、良かったー!」


 久々の死の感覚。

 全身に走る喪失感と無理矢理肉や骨が再生される激痛が俺の心身を削る。

 慣れてきたら喪失感はどうにかなるが、激痛は慣れても痛い。


 てか、その前にポチを蹴飛ばしたけど、俺って約3mの肉の塊を蹴飛ばせるほどムキムキだったっけ?

 もしかしてこれもケルベロスの能力の一部か?


 だとしたら主になるだけですごいパワーアップだな。


「何者だ人間っ! それにクソ犬野郎」

「御主人様になんて口を! 飛ぶことだけの低脳が!!」

「はんっ! 人間ごときの下僕になるまで堕ちたのかケルベロスは!! この期に攻めいるのも手かもしれないな」


 おうおう、どうどうどう。


 俺を無視して罵倒試合を始めるな。


「両者、話すことを拒絶する」

「なっ!?!?」


 それにしても、まさか翼を持ってるクソ野郎が……キマイラだとは。

 こいつら重量級に見えるけど、あの頂上まで飛べるのか?


「もういいぞ。質問に答えろ」

「人間、何者だ!」

「質問だ、お前は頂上まで飛べるか?」

「何者だ! 答えろ!」

「質問の回答以外を拒絶する」

「むっ!」


 めんどくさいから、拒絶じゃなくて命令がよかった。

 尋問のギフトとかないのかな?


「飛べないことは無い。だが、ギフトを使うために同族の翼を奪うことになる」

「ならいい。それはともかくーーここは支配させてもらうぞ」


 別に犠牲を払ってまで地上に出る目的はない。

 ここまで来たんだし、支配だけして帰ろうかな。


 「御主人様、片手間に支配なんて傲慢だね」

 「そうでも無いだろ。力があるんだから、使わないとな」


 完全実力行使、暴君、恐怖支配。


 それの何が悪いのやら、力が全ての世界だと言うのに。

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