久しぶりの敗北
私たちの暑い夏が終わった
一人のバッターによって終わった
呆然と立ち尽くすチームメイトの中で風を切り涼しい表情で一塁、二塁、三塁をゆっくり走りホームベースを踏むホームランバッター
そこからは勢いで押し切られる展開のサヨナラ負け
全国大会三連覇をかけた夢が地区大会の決勝試合で藻屑となった
私が投手だったら…
私が投手だったら…
せめて捕手だったら…
いろんな考えが過るけれど、女性という立場だけで試合にも出せない私が口を出せるわけがない
私は相手陣地で休んでいる代打のバッターを睨んでいることにも気がつかなかった…
睨まれた相手は私にニコッと微笑みかけた…
これが敗北
今まで味わなかった敗北感が重くのしかかってきた
それはドス黒くて火照った身体も一瞬で凍り付かせてしまう感覚
光すら見えなくて目の前の景色が真っ黒になる
そんな状態が一分間続いたのである
審判のゲームセットの声と同時に整列するチームメイト
歓喜の汗を流す選手と絶望の冷や汗を流す選手の違いがそこにあった
私はどうしても相手の代打選手が気になって仕方なかった
何故ならデータになかった選手だということ
しかも見た目は華奢な身体で色白、パッと見た目は外国人選手のような風貌、
そして何より驚いたのは…たぶん女子
ユニフォーム越しに出ている胸のサイズは女のことしか思えない
試合に出れない私と違って試合のヒーローになった女の子
悔しい…悔しい…
妬みと憎しみが入り混じって禍々しい感情が湧き出る
本人の確認しないと治まらない
ロッカールームで落ち込んでいるチームメイトに励ましの声をかけることすら忘れて
私は相手チームのロッカールームに走っていった…
この時はまさかエルフが現実世界で野球をしていることになっているとは私も考えが思いつかなかった
続く