ようこそ異世界へ
困惑を隠せないまま私はこの胡散臭い異世界の旅人と共に父を復活させる為に異世界に旅立つ決心がついた
そもそもどうやってこの世界に訪れたのだろうか…
「どうやって向こう側の世界に行けるの?」
「それはねー!どうやったら行けるか考えてみてよ~~!」
イラッとする一言に私は駄目エルフと再認識した
クイズ形式で答えるしかないようだ…
「この部屋には現実世界と異世界を結ぶ空間があるのです」
女神様はヒントを与えたくれたが答えは言わないつもりなのである
私としてはどうでもいいのだが、異世界でお世話になるわけなので、ここは大人の対応をして考えてみた
「ええ…っと…つまり…出入り口があるってことなんだよね…」
「うん!そう!そう!」
まさか…と思いながらも答えを言うしかない…
「ロッカールーム?」
「正解!」
マジかー…と、口には出さないが表情が出てしまう
なんでロッカールームが異世界に通じる入り口と出口の役割をしているんだよ!とツッコミをする気持ちも失せてしまった
「あー…わかったよ、それじゃ異世界に行こうか…」
「あー!そんな気持ちとテンションで行っていいの?」
「ファンタジーってさ、驚きを繰り返すと、どうでもよくなる気分になるんだわ…」
「そんなことないって!私だってこの世界に来たときは驚きの繰り返しとワクワク感とテンションMAXだったんだから!」
「あーはいはい…」
ロッカールームがワープ空間なんて誰も信じてくれるわけない
女神様はそんな私を心配したのか駄目エルフをフォローした
「と、言っても魔法の力で点と点を結んだだけですから!」
「それって私が通っても大丈夫なのよね?」
「ええ、勇者候補なら安心してください!大丈夫です!たぶん!」
女神~~!!とツッコミしたいが、それも抑えて次に進んだ
「他に必要なものは何があるの?」
「それなら大丈夫よ!もし何か無くて困っても魔法の力で異世界から現実世界に召喚すればいいだけなのよ」
「うへぇ~!何それ…」
「魔法の力ですッ!」
上級魔法使いのエルフ様は頼りになるのであった
「それじゃー!今から私たちの異世界に行きましょう!!」
「…だからどうやって行くの?」
「どうやって?ロッカールームに入るのよ」
「そのまま」
「そのままなの?」
「そのままです」
そのままロッカールームに入り込んだ
扉をピシッと閉めて部屋が真っ暗な状態なのである
音も聞こえないまま返事もしないまま、一分間くらい静寂な時が流れた
外から声が聞こえる
大丈夫ー?と聞こえてくる
私はそのまま動かないで返事をした
「大丈夫ー!…たぶん…」
何やらこちらに近づいてくる音が聞こえる
足音が段々と近づいてくる
ロッカールームに押し込まれて
こんな身動きできない真っ暗な状態だと足音が恐怖心を煽ってくる
内心はビビりながら冷や汗を流しながら
その声を信用するしかなかった…
足音が止まり誰かが扉を開こうとする
一生懸命踏ん張っているのがわかるくらい鼻息が聞こえた
「ふんぐー!ふんぐー!!」
しかし、不安は一気に消えていく
それはこの鼻息の持ち主がエルフだとわかったからだ
エルフの癖に品がないなと想いながらもホッと安心した
~~10分経過~~
……どんだけ扉を固く閉めたんだよ!はやく開けろよ!
ガバッ!とロッカールームの扉が開いたと同時に綺麗な光がビシッと差し込んだ
眩しくて目を閉じてしまったが、すぐに目が慣れた
「ここはどこ?」
「ここが異世界よ!ようこそ!異世界サイ・ファミ・リアンへ!!」
驚いた
何が驚いたって
私が中に入ってたロッカールームがそのまま異世界に来ちゃった…
イメージと違った
扉を開いたら異世界に行けると考えてたのに
行けたけど…そうじゃないって…
シルフィーはポカーン状態の私に話しかけた
「ほら~!驚いたじゃな~い!その顔が見たかったのよ!」
「誰だって驚くわよ!、山の天辺にロッカールームがあるんだもの!!!」
興奮状態の私を見ながらニヤニヤが止まらないシルフィー
「それじゃーロッカールームは元の世界に戻すわ」
早くそこから外に出なさいとシルフィーに言われ出る
精霊魔法を唱えた彼女はロッカールームを現実世界に返還したのであった
魔法を唱える時は右手が緑色の光に包み込まれ紋章が浮かんで消えた…
初めて魔法を見たのである
そこで私はハッとした
「っていうか山の頂にいるんですけど!!」
「そうよ、ここは風の国だから自然に囲まれているの」
「風が強いよ~~!」
「そうね、風の国だものね!気持ちいいでしょ?」
「風に飛ばされたらどうするの~~!」
「飛べばいいじゃない」
「飛べるわけないでしょ!」
「それは現実世界のあなたでしょ?今は異世界のあなたなのよ」
「どういうこと!」
「耳を触りなさい」
すぐに触った
細く長くなっているーーーー!!
「まさか…これって…」
「おめでとう!勇者様はエルフになりました~~!」
震えが止まらない
どうなちゃったのよ私
「どうなちゃったのじゃないわよ、エルフになったのよ、魔法が使えるようになりました~!」
「魔法ってどうやって使えるの?いやいやなんでエルフになったの?もうわからない!」
「怖がらなくていいの!魔法に関しては私が教えます!」
「どうやって教えるの!」
「ん~教えるというより伝えるって表現が正しいかもね」
「それよりなんでエルフの姿になったのよ!」
「あなたと私は契約したのよ」
「契約?いつしたの?」
「あなたの世界で私の変装を見破った時から勇者様とエルフは契約されたのよ」
「え…」
「つまり私とあなたは一心同体の状態になったの!んでもってこの異世界では結ばれた種族の姿になるのよ」
「そんなの聞いてないよ…」
「そんなの言ってないよ?」
「あなたって綺麗な見た目と違って酷い人なのね」
「酷くないよ!それに人じゃなくてエルフだもん!それにお父さんを救うんでしょ?」
「……うん」
「だったらそれくらいのリスクと覚悟を決めてもらわないとね!」
「私は本当にエルフになったの?」
「いいえ、ハーフエルフよ、人間とエルフのハーフなのよ」
「それって?」
「見た目はエルフだけど中身は人間ってことかな?魔法も使えるわ」
「そうなんだ…本当かな…」
さっきまで興奮してた私はようやく冷静に落ち着きを取り戻した
「魔法ってさっきのでしょ?どうやったら伝えられるの?」
「えー…それはねー……」
モジモジして照れているシルフィー
--次の瞬間
キスをされた
無理やり唇を奪われた
いきなり強く抱きしめられて唇に唇を重ねる
固まっている私に熱い抱擁と熱い接吻をしながら少しだけ腰を上下に動かしているのもわかった
ぷはぁー!と同時に離れた女が目の前でドヤ顔を披露した
「もしかして初めて?ファースト?」
「はぁ?セカンドよ!」
ピッチャーしか経験のない私はファーストを経験したのであった
「これで完了よ、魔法が使えるようになるわ」
「そもそも魔法が使えるってどういう仕組みなのよ」
「私は勇者のあなたにとっては従者の立場になったから私が使える魔法はあなたが使えるようになったのよ」
「…実感はないけど」
「今はそうかもしれないけど試合で魔法を使うのはルールとしてはは認められているからそのうちわかるようになるわよ」
「うん」
「それに私の魔法は人を傷つけるような魔法じゃないから安心して」
「はい」
「驚かないの?あなたにしか使えない魔法だってあるんだから」
「そうなの!?」
「ええ、そうよ、魔法はイメージして使えるようになるから」
「うん」
「私たちの場合は精霊と契約したりして使えるようになるから面倒なのよね」
「契約ってことは何か手続きもあるの?」
「あるわよー!色々ね」
シルフィーは魔法使いとしては上位クラスなのかな…
「さて!話もここらへんで済ませて私が育った里に行くわよ!女神さまも待っているわ!」
完全に女神さまを忘れていた
異世界は飛び込んだ私はようやく最初の村に出発するのであった…
続く




