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七話

「まだ俺の患者だ。お前らは引っ込んでいろ」


 銃を持つ白井に対しても臆することなく、葛西はそう告げた。外科医としてまだ患者を諦めた訳ではない。まだ足さえ諦めれば命を救える可能性は充分にあるのだ。


 メスで皮膚を切り、鉗子で血流を止めている。既に全身にウイルスが回った可能性もあるが、変異したのは足だけである。


「治療は続行する。大人しく見てられないなら出ていけ」


 本来であれば天幕の中にも入れたくなかったのだ。野外で無菌状態を保つ事など出来る訳がなく、これが精一杯であった。感染症のリスクはあるが当初は足を失うよりはましであると考えていたのだ。


 このままでは足だけでなく命さえ危ないのだ。葛西は血管を結紮(けっさつ)し、足を切断する準備に入る。


「それはできません。私の任務は貴方の護衛であり、貴方達を特危獣の危険から護ることです」


「なら大人しく見てろ。駄目なら俺ごと撃て」


 無影灯などなく、明かりも普通の照明で賄っていた。影が術野を見えなくするが、そこは経験で葛西は補った。手は万能の道具である。微細な違いが分からない様では外科医は務まらない。


 そして消防官に電気カッターを準備させる。骨を削るのは大仕事であり、用途も違うが、今ある道具で何とかしなくてはならないのだ。レスキューも出動していたことで用意は出来たが、医療行為は医者にしか出来ない為に使い方を教わる。


 変異は(くるぶし)から徐々に膝へと上がって来ており、膝より下を早急に切断する必要があった。医療用モルヒネを患者へと追加投与し、準備は整った。赤十字に要請した血液はまだ届いていないが、それでも一刻を争う状態なのだ。


 足だけで済んだと思うかは患者次第であるが、医療は日々、進化している。出血を最小限にしつつも膝から下を切断した。本人の同意がとれている為に民事訴訟を起こされる事はないだろう。


 葛西が諦めていれば、完全に変異していなくとも人に害を為そうとした時点で射殺されていただろう。患者は警察官であり、特危獣が出現した現場に出動した。警察官の中には特危獣と相対するリスクを鑑みて職を辞した者も多くいた。


 誰でも正義感で命を賭けられるとは限らないのだ。危険と給料が合わないと考えれば辞めるかどうかは本人次第だ。救急指定されている病院でも特危獣と接触した可能性の高い急患の受け入れを拒否するのだ。


 元々、病院は医療関係者に多くの負担を強いている。長時間労働が常態化しても新しい医者を雇う事の出来ない病院は多い。専門によっても異なるが医療ミスで訴えられるリスクはどの科にもあり、感染症の二次感染の可能性も一般人に比べれば高いだろう。


 報酬が労働に釣り合うものかは疑問であり、命を扱う重圧に耐えられずに医者を辞める者もいるのだ。天幕は封鎖され、患者も小康状態を何とか保っているが、搬送先の決定に時間がかかっている。


 変異した足は現状では近くのコンビニで調達したアルミホイルに包まれているが、貴重な研究資料であり原因を追究する大きな手掛かりである。現場にいた人間は感染のリスクが低いと判断されるまで拘禁される。


 普通であれば二・三日の経過観察で済み怪我を負っていなければ変異した報告がされていない為に半日もかからずに解放される事もあるが、空気感染も否定出来ない状況下で小田原城に居た人間がグールとなってしまったのだ。


 防護服を身に纏っているのは極僅かな人間だけであり、空気中の成分を調べても放射線などは検出されなかった。変異にかかった時間も個人差があり、規制線の中から外に人を出してしまったのは明石の失策かも知れないがウィルス保持者が直ぐに発症するとは限らず、これまでの出動で感染はしていたが、発症していなかっただけであるとも考えられた。


 グールとなってしまった被害者の身元を割り出すのは骨の折れる作業だ。警察官であれば、出動記録から死亡が確認できるだろうが、治療の為に血液型を登録していてもDNAまでは登録するかは個人の自由である。


 通常の身元不明の遺体と同様に歯の治療記録などから照合が行われるのだろうが、たまたま居合わせた人間に対しては失踪届けを受理していても遺体と断定するのが難しい。歯や骨が変質するとは考えにくいが、グールは皮膚はただれ骨や臓器が露出しているのがほとんだ。


 グールを焼くのは殺菌の意味合いが強く、骨も所々が炭化しているのだ。身分証も焼けており、録画画像から特定する事になるだろうが、決め手に欠けるだろう。葛西と看護師は民間人であり、政府としてはそれが事実であったとしても口外される訳にはいかない。


 発表するにも社会に大きな混乱を招くのだ。家族が隣人がいつ化物に変異するか分からない状況で平然と生活できる者は少ないだろう。長く拘束し続けても疑惑を呼ぶが少なくとも血液検査の結果が出るまでは解放する訳にはいかないのだ。患者の警察官は下手をしたらリハビリが終わるまでは警察病院に閉じ込められる事になり退院できるかも分からないのだ。


 部分的にとはいえ変異し、切断することでそれ以上の変異を食い止める事が出来たが調べる事はいくらでもある。調査の見返りとして治療費の負担と生活費の保障がされるかも知れないが癌と同じでいつ再発するかもしれない恐怖と戦う事になるのだ。


 変異箇所がもし体の中心に近ければ、足の切断を強行できるスキルと意思を持った葛西がいなければ既に特危獣として駆除されていた可能性は高いのだ。白井も現場に居た為に同じ処遇となるが、それでも引き金から指を外していない。


 全員分の血液を採取し、搬送先が見つかれば天幕は焼却処分される事になる。中央特殊武器防護隊の隊員のものものしい格好を見ると非常事態である事を認識するが、それでも天幕にいる人達は夢の世界にいるかの様な錯覚を感じていた。白井は自衛官として報告する義務を負っている。


 警察官を撃とうとしたのは藤堂からの命令であったとしても実際に殺害していれば精神的な治療を必要としていただろう。葛西も多くの修羅場を渡り歩いて来たが、人がグールに変異する様な時代がくるとは想像できなかったはずだ。患者の警察官も現場に出ることで負傷するリスクは感じていたのかも知れない。


 靴をグールに噛まれ、必死に振り払おうとしている時に靴は脱げ噛まれたのだ。何時もと同じ様に起きて仕事場に行った筈だ。そして何時もと同じ様に一日が終わる筈だったのだ。患者となった警察官に敬意を込めて涌井ワクチンと呼ばれる様になったワクチンが開発されるのには時間が必要だったがそれはまた別の話である。


 明石は自衛隊と連携をしながら自分に出来る事をしていた。小田原市内では特危獣に襲われたとの通報が相次いでおり、対応する人員を増やしていたが焼け石に水だった。人が変異してしまったものなのかも情報が錯綜しており確定していなかった。既に治安出動が決定されており、一種の災害出動がされていたが、なるべく肌を露出する格好を避け効果があるか分からないがマスクで防御するしかなかった。


 一時期はマスクの値段も普段の数倍の価格で取引されていたのだ。マスコミが不安を煽ったことでマスクや除菌関連のグッズの需要が増えたのだ。メーカーも増産体制で出荷したが、品薄となったことで更に希少価値が高まる結果となった。


 群衆心理を完全に掌握する事は難しく、急遽、県境に検問が設置される事になった。不調を訴える者は例外なく隔離される事になる。感染を拡大させない為に法律で定められてはいるが、不安を煽る行為であるのは否定できない。


 藤家にも人の変異者が出た事が確定情報として報告された。人型特危獣のゴブリンやグール・オークは猿などである可能性が高いと判断されていた。正確にはそうであって欲しいという願望が強かったのかも知れない。


 政府としても人が変異した特危獣を駆除しなくて済んだのは行幸であったが、必ず何時かは駆除しなくてはならない時がくる。問題を解決する為の時間ができた事は喜ばしいことだったが、事態の深刻さに胃痛を感じる藤家の姿があった。


 親の地盤を引き継ぎ二世議員として国政に参加し、順調にキャリアを積んで遂に内閣総理大臣までになった。無難に任期が過ぎれば総理大臣経験者として更に発言力を持つ事ができ、政界を引退した後には素晴らしい余生が訪れる筈だったのだ。


 内閣の支持率は高くもないが低くもない正に無難な政権運営をしていたのだ。閣僚によるスキャンダルもなく、常任理事国入りを目指して精力的に活動していた。アジアは北朝鮮によって情勢が不安定になっている。


 核保有の有無は周辺国家だけでなく世界中に影響を与える。それが民主主義国家でなく独裁国家なら尚更である。中国・韓国の反日は相変わらずであり、重箱の隅をつつくかの如く歴史問題で日本を批難するのだ。


 そして日本政府の公式見解として今も変わらないが尖閣諸島の領有問題もある。武器使用の緩和の動きがあり、特危獣対策にかこつけて正当防衛に関する要件も不審船に対する立ち入り検査も強化されたが挑発は繰り返し行われている。


 自衛隊の護衛艦は充分な戦力を有しているイージスシステムの独自開発も研究段階であり、アメリカに頼らない自衛隊の運用が検討され実行されている。純国産機の開発は急務である。ステルス戦闘機は最新技術の塊であり、ステルス技術の向上はアンチステルス技術の向上に繋がる。


 防空レーダーに映らない技術は転じればステルス機の発見に役立つのだ。泥棒が防犯設備に関して詳しくなるのと同じことである。一年目を無事に終え二年目の半ばが終わった頃に特危獣が出現したのだ。


 野党との調整を行いつつも特危獣対策特別措置法を即時施行した。相変わらず自衛隊の活動に理解を示さず批判する議員も国民も多かったが、自衛隊がなければ国防は成り立たないのだ。


 他国の軍隊に対して警察でどこまで対応できるのだ。警察が人殺しの為の組織であればそれも可能かも知れないが警察は犯人の逮捕が目的であって殺害は止むおえない場合でも容認できることではないのだ。そして自衛隊に特危獣対策警備隊が設立され、自衛隊が特危獣の駆除にあたる事になった。


 両腕を縛られた状況でなければ自衛官は軍人としても優秀である。国防費は抑えれば良いというものではなく、国の規模と地理などの実情に見合った物が必要になるのだ。海に囲まれている日本は国土は狭いが護らなくてはならない範囲は経済水域を含めると広範囲に渡る。空と海の対策が充分であって初めて陸上部隊が十全に能力を発揮出来る様になるのだ。


 国民にも被害を出しているが物的被害であり人的被害は滅多に出ない。外交下手と呼ばれる日本であってもここまで他国に嘗められては国益を損なうだけだったのだ。


 災害活動を通じて自衛隊に理解を示す人が増えたのも一助となっていた。身内を亡くし住む家や仕事を失った人は多い。中国と韓国の態度に辟易としていた者もまた増えていた。最新兵器を所有していても扱う人間が素人であったら意味がなく有事を想定した訓練をかかさなかった。


 一つ一つの事は大した事がなくとも積み重なれば大きくなるのだ。特危獣との戦闘には巻き込まれくないが、駆除する姿を目の辺りにした被害者が自衛隊に興味を持った。好きの反対は無関心であると言うが国防と国防に携わる自衛隊に関心が集まったのもこの時期からである。


 自衛官は引っ越しが多く、家を留守にしがちになるが、結婚相手としては公務員でありそう悪くはない条件だと女性が気付き始めたというのも藤家が前例を踏襲しつつも改革に着手し成功させた理由である。


 批判は自衛隊にとっても望むところであった。今までの広報は自衛隊に興味を持った人にしか効果をあげていなかったのだ。特危獣との戦闘によって自衛隊の活動を知るきっかけとなった者もいた。理解を示さない人も確かにいるが、それでも理解してもらおうとしなくなれば活動はしにくくなり救えた命が手のひらから零れ落ちてしまう事を知っているのだ。


 藤家は対等に交渉したいだけなのだ。先の戦争では確かに日本は過ちを犯したのかも知れないが、そういう時代であったとも言えるのだ。現代であれば世界規模の戦争は起こらないだろう。実際に起こってしまえば辿り着くのは人類の滅亡かも知れないのだ。藤家は日本政府の最高責任者として事態を収拾する義務があるのだ。


 門外漢である事を自覚しているためにただ隊員達が動き易い様に環境を整えるただそれだけで良いのだ。トップとしてはそれでは失格なのかも知れないが、責任だけは手放すつもりはないのだ。自国民が脅威に晒されている時に手をこまねいているだけだったら誰でも出来るのだ。


 東京の戦力を手薄にする事は出来ないが、藤家は予てより準備していた特殊作戦群の投入を決定し、命令書に署名した。調査をしても原因の全てが判明するのは稀であり分からない事の方が多いだろう。それでも小田原に出現した特危獣を駆除しなくては安心して眠る事は出来ないのだ。官房長官を通じて負傷した警察官へと接触をする事に決めた。


 内閣官房機密費を遣えば国内外に知られることなく協力が得られ、日本には優秀な科学者が多く在籍しているのだ。規制緩和さえすれば彼等は何かしらの成果をあげる事は可能だろう。


 日本の政治を混乱させた政治家として名を残すか日本の命運を決めた優れた政治家として名を残すかは分からないが、少なくとも誰かがやらなくてはならないことであり、今やらなくてはいけないことなのだ。それは核ミサイルのボタンを押すのと同じ行為なのかも知れない。


 だが、より良い未来を提示するのが政治家の仕事であり優遇に対する義務でもあった。危機管理室では分からない事も多いが日本中の情報が収集され分析されこの部屋に集まっていた。そして藤家は法務大臣・厚生労働大臣に連絡をとった。


 白井達が連れて来られたのは廃病院を政府が購入・改築した研究機関の一つである。主任研究員は瀬戸忠博(せとただひろ)であり、元は大学の教授として遺伝子工学を専攻していた。人為的に遺伝子を操作する事は危険性を伴うが、バイオセーフティレベル四に対応した数少ない施設であり、特危獣の細胞を抽出し培養も行っている。


 国立感染研究所の分署として特危獣に特化しており周囲一帯が国有地であり周辺住民の反対を受けることなく実験を行う事が出来る。変異したての細胞の入手は困難であり、今までの細胞と異なり正常な人の細胞と比較することで変異細胞の特定が期待されている。


 負傷した涌井巡査部長と接触した人物の隔離は各地で行われており、特に手術に立ち会った人間は最もリスクが高くなるために隔離病棟として収容される事になった。現在、最も機密性が高く外部との接触を絶つべき涌井は麻酔から覚め事態の説明を受けていた。


 警察官の駐在所があり、用もなく近付く事も不可能な天然の要塞となっている山奥にあり、自衛官による警護も行われる事になった。隔離しなくてはならないのであれば白井が適任であり、感染の疑いがある人物を増やさない為には合理的な判断であったが、白井は憂鬱だった。


 人を撃たなくて良かった事には安心したが、ここに来てしまったら通常の任務には戻り辛くなってしまうからであった。ただでさえ隊員が少ない特危獣対策警備隊であったが、出動する度に隔離されるのは公務ではあるが休暇みたいなものだ。命令とはいえ特危獣に変異している涌井の手術に立ち会ったのは不運でしかなかった。


 自衛隊幹部であり、レンジャー資格を保有していることで隊内では危機管理の責任を嫌でも背負わされるのだ。涌井の保護は政府としても急務であり存在を他国に知られる訳にはいかないのだ。


 引き渡し請求など断固として拒否するが、強硬手段に出ない国がないとは限らない。合法的に国が涌井を拘束出来る期間も特危獣対策特措法によって定められており、生存権や人権が否定されるものではないのだ。治療としては切断した足のリハビリがあるが病院を指定する権利は本来であれば涌井にある。


 しかも公務中による負傷ともなれば見捨てる事は国としても外聞が悪いのだ。涌井は警察官として治療以外の研究にも同意したが、落ち着きを失っていた。


 これから家族に会えないかも知れないし、いつ特危獣になるかも分からないのだ。葛西によって切断された足はアルミホイルに包まれドライアイスで保存され救急車でここまで移動された。間に合わせでは限界があったがそれでも何もしないよりはましであった。


 白井達の新たな任務は涌井の護衛にあった。室内では使いにくいアサルトライフルでなく拳銃へと武器を持ち換え警備に就いている。仲間がまだ戦っているのに申し訳ないという気持ちはあったが、護衛もまた任務である。


 色々と思うところはあるが勇気を持って政府に協力を申し出た涌井は何としてでも護らなくてはならない。血液検査の結果を待ちつつ今回も特危獣への出動で生き残った事を実感するのであった。


 佐久間は教育隊へ配属されて前期教育の三ヶ月を終え後期教育の真っ最中ではあったが、教育隊にも出動命令が下っていた。教育中であるために後方支援ではあるがそれでも自衛隊の一員であることには変わらない。教育隊に拡がるのは困惑であり、佐久間の出動が決まったのは藤堂の要請があったからだ。


 新人の自衛官が配属されるのには特危獣対策警備隊は最悪の部隊になるが、経験だけはどの部隊よりも積めるだろう。佐久間と同じ教育隊には自ら志願し、選考中の女性自衛官が居た。田辺実(たなべみのり)二士は高卒であり進学予定だったが、両親の事故によって経済的な理由で進学を諦めていた。


 そう特危獣によって両親は殺害されていたのだ。生命保険金は下りたが、親を亡くして勉強している余裕がなくなったのだ。既に社会人となっていた兄は進学を諦める必要はないと実を説得しようとしたが、受けいられる事は無かった。


 実と同じ様に身内を亡くした者は多く、働けない年齢の者で保護者がいない者は養護施設へと入る事になったが、現状を受けいれられない者も多かった。ゴブリンやオークなどが出現する様になって一部のオタクは歓喜したが、大半の者にとって特危獣は迷惑でしかなかった。


 無双できるのはゲームや物語の中だけで現実はそう甘くはないのだ。初動が遅れ死傷した者からしてみれば警察や自衛隊を恨みたくはなるが、警察官も自衛官も必死に事態の収拾に動いていた。警察官の殉職率は高く感染のリスクは一般人と比べると高いのだ。


 通常の業務と平行して特危獣の対策にあたらなくてはならない為に犯罪率も若干ではあるが上昇した。文句を言うだけなら誰にもできテレビでは正確ではない情報が錯綜している。


 犯罪者を養うのも国税から賄われており、凶悪犯であり死刑が確定した死刑の執行を政府は求められたのだ。それは見せしめだった。法務大臣が命令書に署名すれば簡単に執行される。犯罪を行えば罰があり、命で償う必要があるのだと世間に示す必要があったのだ。


 特危獣が出現した際には仲間を見捨てて逃げ出した個人の情報がインターネットで流出した事もあって多くの関心を集めた。化物が襲ってくれば逃げ出したくもなるだろう。ゴブリンであっても素手で取り押さえるのは難しく、武器を所持する事が出来ない日本では逃げる事を政府も推奨している。人が多いところが狙われやすいと広報しても集団となって逃げ出す。


 一人でも特危獣に狙われればその者が襲われている間は安全だと思っているかの様に。そして、その一人には自分は含まれていないと根拠のない自信で餌食となるのだ。教官達に怒鳴られながらも二人は出動の準備を終えたのであった。

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