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十六話

 (むん)大統領は軍に期待はしていなかったが、それでも開戦となるかも知れない状況下で、日本に対する威嚇射撃を命じた事に少しでも日本に打撃を与えれば恩の字だとその時までは考えていた。


 衆人環視下で、日本の船を沈めたのはどう考えてもやり過ぎであった。日本は周辺国家に対してEEZ(排他的経済水域)での軍事行動を通告していなかった。


 我が軍の大規模演習を警戒する形で艦隊の派遣を行っており、それは何時も通りのことだった。韓国の老朽艦を標的艦にしての演習を行い、不幸にも日本の船籍に直撃してしまったと言うのが韓国の公式見解であり、EEZ内での軍事演習を禁止する法律はない。


 日本と韓国ではEEZは重複する部分があり、韓国は日本へ事前通告は行っていたのだ。日本のEEZに近くなってしまったのは偶然であり、韓国政府は日本政府に軍事演習を拒否される謂われは無いのだ。


 日本との軍事的な緊張が高まっているのは韓国にとっても好ましい事ではないが、韓国にも自衛の権利はある。


 アメリカ軍との合同軍事演習は有意義であるが、韓国も領海の防衛には憂慮しているのだ。明確な敵対行為ではあるが、あの平和憲法が有る限りは大丈夫だと考えていたのだ。


「戦果は護衛艦一です」


 軍部からの報告は疑わしいものだった。無人艦と思われる護衛艦がEEZに放置され、攻撃してくださいと日本が置いていったのだ。


 艦隊を動かした以上は成果が必要であり、神原島(かんばるとう)の実効支配が今回の軍事目的であった。計器による観測で無人艦を攻撃したまでは良かったが哨戒ヘリを撃墜したのは想定外であった。


 リスクをゼロにするのは不可能であり、韓国世論は日本への反撃を期待していた。年配者ほどに反日感情は強く、文の政治基盤も富裕層であり、財閥の長も多い。


 彼等の意見を無視することは難しく、理性的である様に努めているが、日本の厚顔無知さには呆れるほどであった。


 日本は領土的野心を持って韓国を攻めたのは一度だけではない。韓国は侵略者を許しはしない。アメリカも今だけだ。


 世界ででかい顔をしてられるのは。日本は今回の軍事行動で更なる譲歩を強いられる事になるだろう。平和憲法様々である。


 韓国の発展のために犠牲になった自衛官には追悼の意を示すのも藪さかではないと考え始めていたのだ。そう、日本が自衛権の行使をするその時までは。


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 今回の作戦は政治的な意図が強いと感じていたが韓国艦隊の司令官の(ちぇ)現実主義者(リアリスト)である副官の意見を退けて日本艦隊への攻撃命令を出した。


 目の役割を果たす哨戒ヘリは目障りであり、対空攻撃によって撃墜した。韓国政府は結果を求めており国民も日本人の血が流れる事に同意するだろう。対艦ミサイルの射程圏内に既に日本艦隊を捉えており、後は攻撃するだけなのだ。


 財閥の一員として権勢を誇っている我が一族にとって大統領と言えど首を横に振ることは許されないのだ。確かに崔は武官ではあったが、引退後には政界へと進出する予定であり、日本に損害を与えた英雄の肩書きは魅力的に映ったのだ。


 作戦行動前に士気を落としかねない親日発言をした副官は頂けないがそれが奴の仕事であるのだ。


 与えられた情報が正しくなければ幾ら優秀な指揮官であっても判断を誤るのだ。そして政府は手痛い一撃を日本に与える事を軍に望んだのだ。


 人が乗っていようがいまいが、日本艦を沈める事に意味がある。そして、今回の軍事行動は演習である。演習地域に不用意に近付いて来る方が迂濶なのであって誤認したこちらには非は無いのだ。案の定、日本からの反撃はない。


 腑抜けた日本は政治的配慮と言って国防を疎かにする阿呆が国のトップなのだ。平和呆けしているとしか言い様がない愚か者に侵略された祖先の借りを返すのは朝鮮民族の悲願であり、義務なのだ。麾下の航空団にも出撃命令を下した。


 潜水艦も日本の海域へと集められており、海・空両面作戦を韓国軍は立案・実施している。日本の護衛艦隊を無力化してしまえば後は切り分けられるのを待つだけの憐れな七面鳥の出来上がりだ。


 この時の為に韓国は爪を研いできたのだ。北に対する防衛も無視できない問題ではあるが、北が動けば在韓アメリカ軍は動かざるおえない。


 北のミサイルは確かに脅威であるが、アメリカ軍による戦略爆撃が行われると噂されて久しいし、アメリカの大統領となったホワイトは国外に対して厳しい姿勢を示している。


 メキシコとの国境は警備隊レベルではなく、陸軍主力レベルの戦力が配置されており、密入国者は捕らわれ、逃げ場のない本国へと強制送還されているのだ。警察と麻薬カルテルの抗争は激化しており、高収入を得ようとしたら麻薬に関わるしかない。


 メキシコが特危獣に襲われ混乱する姿は不憫であり生き地獄であったが、陸続きで他国と接する大陸国家共通の悩みであるとも言えるのだ。


「戦闘機、発進」


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 海野は海将として出来得る限りの事をしているつもりである。藤家も時枝も今は防衛出動のための会議であり、文民の指示が聞ける状態ではない。


 事前通達によって艦隊に向かって来るミサイルについては破壊許可が出ていたが、韓国の艦隊に対しての自衛権の行使は容認はされていない。


 しらゆきが撃沈された事はまだ許せる。物的損害はあっても人的損害はないからである。だが、哨戒ヘリには自衛官が乗っていた。生死は不明であり戦時とも言える状態で捜索は不可能である。


 海野は統幕を通じて内閣危機管理室へと通報を行った。防衛出動はまだ仮の状態である。


 国会の同意を得て初めて日本は国として自衛権の行使が可能となるのだ。日本の平時の法律では領空や領海に侵入してきた所属不明機・所属不明船について退去を命ずることしか出来ないのだ。


 明確な意思を持った軍に対して日本と言う国は無力である。韓国の軍事行動を日本は容認する訳には行かない。しかし、近代文明の原理の一つである文民統制(シビリアンコントロール)を崩す事は悲劇を生むと世界は学習していた。


 日本領海へと近付いており、軍艦には強力な無線が設置されている。直接、藤家の判断を仰ぐ為に内閣危機管理室への電話も用意されていた。緊急事態に備えて使用する事が無いように願っていたが、使用を決断するしか無かった。


「自衛隊、海上幕僚本部所属海野海将であります。事態は切迫しており、韓国艦隊に対する自衛権の行使を容認して頂きたい」


 日本艦隊は上手く攻撃を凌いでいるとは言え大破判定を受け、僚艦へと移送作業中の艦もあった。海自隊員だけでなく、船乗りに最初に求められるのは、船体のダメージコントロールである。


 艦長だろうが、食事担当だろうがダメージコントロールが出来ない者を船に乗せる訳には行かないのだ。船の上では逃げ場はない。


 船員同士の絆もさることながら一つの運命共同体であることを強いられる特殊な環境なのだ。


「議決の結果は未だ出ていない。防衛計画による行動を遵守するしかない」


 統幕長も好んで部下を死地に送っている訳ではないのだ。現代戦においても先取先制が有利なのは事実である。命中精度が著しく向上したことによって被害も無視できるものではない。


 音速で飛ぶ戦闘機であっても対空ミサイルから逃げる手段は限られており、たかが一発であるがされど一発と言って良いほどには貴重な人材と兵器が失われる事になるのだ。


 兵器が優秀であっても使用するのは人間だ。馬鹿と鋏は使い様と言うがこれほど簡潔に事実を表した言葉は無いだろう。専守防衛では現場の自衛官に撃たない事と犠牲を強いるのだ。


 人権保護も良いが、被害者よりも加害者の人権の方が護られるのが日本という国だ。現状では勢力不明のテロリストとして韓国軍を扱うしかないのだ。


 宣戦なき戦争を仕掛けて来る韓国首脳陣の神経も疑うが、ここまでされても自衛権の行使が出来ない平和憲法にも呆れるしかないのだ。三次元の戦いでは制空権を得た方が圧倒的に有利である。


 日本艦隊も防御態勢を維持した状態で日本の領海付近まで組織的な撤退を可能としたのは日々の訓練の賜物であろう。EEZ内での戦闘は制限されるべきであり、主権が及ぶ領海内において日本は他国に遠慮する必要はない。


 本土まで距離があるとは言え、弾道ミサイルの射程圏に本土が捉えられているのだ。


 高射群によるミサイル破壊命令も下っているが高射隊は日本を護る最後の砦であり、本土攻撃を許す訳には行かないのだ。日本は国連大使によって国連での非難決議を行うかどうか判断しなくてはならないが、実効性に乏しいのだ。


 国際社会という学級を管理する教師(国連)はPTA(常任理事国)の顔色を伺わざるおえず生徒(国連加盟国)が学級内で虐めにあっていたとしても有効な解決手段を提示することは出来ないのだ。


 仮に学級会(国連総会)を開いてもPTAから苦情があれば虐めっ子を裁く事は出来ないのだ。校長(国連事務総長)は事無かれ主義であり、既に学級崩壊しているのだ。


 国連加盟国の中でも発言力の低い発展途上国は民主主義の正義である数の力を借りて抗議するが、しないよりはましと言うだけであり、それは先進国でも変わりはない。


 日本は優秀な生徒ではあるが、学級に与える影響力は限定的である。PTAが難色を示せば喧嘩(武力闘争)の仲裁すら教師にできるか疑問でしか無いのだ。アメリカの影響力を削ぐ形でロシアや中国が賛成してもアメリカが頷くかは別問題である。


 藤家はアメリカの介入なく事態を終息させたいが、韓国も沖縄を狙うほど浅はかではないだろう。


「議決まで後少しだ。それまでは耐えてくれ」


 統幕長の握られた手は血が流れていた。これほど責任のある立場と状況で自身の無力さを実感するばかりである。


 現場指揮官である海野は失われるのが職だけであれば部下を救う為に反撃を命じていただろう。だが、文民の回答は否であり、自衛官としては従わざるおえない。されど文民は自領においては最低限の武力行使を容認していた。


 終わりが無いと思われた逃走劇もゴールが見えて来ている。航空優位を確保するために基地からは既に多くの編隊が出撃済みであり、海自が流す血は同じ国を護る自衛官の血なのだ。反撃は徹底的に行われるだろう。それまでの辛抱だった。


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 議員達は炎に包まれる護衛艦を見て言葉を失っていた。前大統領の失策があり、今代の文大統領も政治的にも危ない立ち位置に居る事は理解しているつもりであった。


 目の前で映されるのは明確な殺意がある戦争行為だった。韓国の反日はただならぬ感情が渦巻いており、JPOPを禁止していた時代すらある。共通の敵は確かに国内を纏めるのには有効かも知れないが、劇薬である事を忘れてはならない。


 反韓感情が高まっていたが、日本国民は理性的であった。韓国が嫌いだからと言って攻撃(武力行使)しようとは思わないし、実行しないだけの分別があった。


「これより投票に移りたいと思います」


 自衛官の命が危険に晒され間接的に国民にも危機が迫っているなかで反対票を投じる事ができる議員はそう多くは無かった。


 防衛出動は国会において追認され、会議は韓国に対応するために一時休憩をとる事になったのだ。藤家は内閣危機管理室に通じる電話を取る。


「藤家だ。良く耐えてくれた。自衛隊の総司令官として全自衛官に命ずる。日本に迫る脅威を適切に処理したまえ。遠慮はいらん。責任は私が取る」


 内閣総大臣として国会を離れる事は出来ないが、防衛大臣の時枝には命令を下して貰わなくてはならない。これから内閣不信任案の議題が提出され議論に入るが内政問題は外敵の直接的な脅威に比べれば優先度はかなり低くなる。


 会見も行わなくてはならないが、日本は自助救済をしなくてはならないのだ。韓国軍は対馬を攻撃対象とする可能性は高く、日本として現場の日本艦隊から韓国艦隊に対して警告する事を忘れない。


 韓国政府に対しては既に日本の対応は駐韓大使を通じて通告している。後は自衛隊の自衛官の日々の訓練の成果を世界に対して示すだけだ。


 それがロシアや中国に対する牽制となる。自衛権の行使と言う前例ができれば以前では困難であっても今後は躊躇う理由にはならない。


 前例踏襲はお役所仕事と言われる理由の一つでもあるが、誰だって安定した職を失いたくはないし、責任だってなるべくであれば取りたくないだろう。どんなに蓄えがあっても無くなる時はあっという間であり、信頼を築くのは難しいが崩壊するのは一瞬だ。


 人それぞれに理由があり、働かなくても食べていける者は極少数派に過ぎない。世間は無職に対して冷たく、歳を取れば働きたくとも職がないなど珍しい事でもないのだから。


「柳川君には連絡をしておいてくれ。防衛省もそうだが、それ以上に国連大使が果たす役割は大きい」


 藤家は閣僚に対して指示を出して、緊張から来る喉の渇きを水を飲んで潤したのであった。


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「統幕より通達。これより反攻作戦へと移行する。諸君の健闘を祈る。以上です」


 様々な電子機器を積み込み戦闘能力は他の護衛艦に依存することの多い斑鳩(いかるが)であったが、電子特化型は伊達ではない。各艦からのダメージコントロールの状況さえ把握しており、艦隊の頭脳なのだ。


 日本版イージスシステムを搭載したミサイル護衛艦によって護られ、損害は殆んど無かった。そして、待ちに待った通信は福音であった。


「こちら海野だ。全艦に通達。自衛権の行使が内閣総理大臣によって承認された。諸君、良く耐えてくれた。再度の警告の後に威嚇射撃を実施する。蛇足かも知れんが絶対に当てるなよ。最後の警告だ。引き返さないのであれば痛い目に遭ってもらう」


 EMCによって艦に向かってくる対艦ミサイルの目標を誤認させ尚且つ、対艦ミサイルによる迎撃を行っていたが、それでも少なくない損害が出た。


 自衛官に死傷者が出るのは初めてではないが、戦闘によってとなると軽視は出来ない。内閣が総辞任するほどの出来事であり、自衛する側であったとしても国民は死傷者に対する補償と政府の怠慢を指摘するだろう。


 ベストを尽くしたと断言できるが外野は勝手なものだ。自衛権の行使の適用は厳密に行われるべきだが、運用する側からしてみれば己の命すら危ない状況下で撃たない事を求められその責任を現場がとるのは冗談ではないのだ。


 大砲は対艦ミサイルを撃墜するために対空機関砲へと姿を変え前時代的な巨砲主義は時代と共に過去のものになった。


 自衛官達は韓国の練度に助けられていた。百発百中とまではいかないが現代の対艦ミサイルは高い命中精度を持つ兵器である。もし、相手がロシアやアメリカであったのであれば日本艦隊は反撃の糸口すら掴めずに回復不可能な損害を受けていただろう。


 戦闘機も制空権を確保するべく、空へと上がり空中格闘戦を展開し始めている。空自に所属する彼等は実戦経験こそスクランブル発進のみで、戦いの経験も皆無に近いが、熟練した教導隊のパイロットも多く参加していた。


 両艦隊の距離は離れているとは言え十Kmくらいでは至近距離であると言っても良い。つかず離れずは最も日本艦隊が気を付けて撤退をしていたからであり、韓国も攻撃してこない敵を一方的に撃てる機会を逃す筈がなく、ずるずると日本の領海付近まで引き込まれていたのだ。


 主要言語による警告は既に終わり韓国語による警告も行われた。日本の艦隊に対する回答はなく、あくまでも所属国を鮮明にする気はないらしい。


 だが、それは日本にとっても好都合である。これだけの被害を出したのだ。誤認したと謝罪と賠償があったとしても納得できるものではない。船体スレスレに行われた威嚇射撃は数分に渡って行われ、海野の命令によって本格的な反撃へと移行した。


 日本の潜水艦によって海中から攻撃された艦も少なくはない。ここまでされたのだ舵を狙うなど甘い事はせずに艦の脆弱部分である機関部に向けて魚雷を放った。島国にとって海上封鎖は悪夢でしかなく、それを担う潜水艦を警戒するのは当然の事であったが、韓国にとってはそうで無かったらしい。


 地震計測用の計器によって位置情報を丸裸にされた韓国潜水艦は日本の潜水艦によって排除された。潜水艦と運命を共にしなくてはならない韓国軍兵士には同情するが、侵攻したのは韓国である。


 対潜装備を積んだ戦闘ヘリによって攻撃する事も検討されたが、被害を最小限にすることが自衛隊には求められるので断念された。敵艦とは言え艦が火に包まれ、沈んで行く姿は見ていて気持ちの良いものではない。


 後始末のために航空救難団による救助活動も予定されていたが、少なくとも戦闘中に救助活動を行うのは無謀である。


 パニックに陥った韓国潜水艦は海域にある動く潜水艦の全てを攻撃する事にしたらしい。日本は国防上は好ましいことではないが観戦している潜水艦を攻撃しない配慮を見せていたにも関わらずだ。


 米・中・露の潜水艦は存在を敢えて此方に知らせて攻撃の対象にならない様に配慮を両国に求めていたが、韓国潜水艦はそれどころでなく無差別攻撃を開始した。日本からして見れば攻撃したのだ。


 反撃される事も覚悟している。それが嫌ならば外交の失敗を戦争で取り戻そうなど考えなければ良いのだ。


 詳細な戦闘の映像が放映される事は無かったが、韓国艦と思われる軍艦が日本の護衛艦を攻撃する姿はそれだけで世界に衝撃を与えた。


 世界中で号外として日韓開戦が報じられたのは、日本の防衛出動が可決された夕方であり、韓国艦隊が日本艦隊を攻撃する映像が流れては止める事は不可能に近い。喉元過ぎれば熱さ忘れるではないが、韓国の行動が今回の戦争を引き起こしたのだ。


 続報を待つ両国の首脳部は政権を維持できるのかもそうだが、それ以上に悪影響を心配していた。日本は常に外交の窓口を閉ざす事はないが、国際社会からみればアジアの情勢が否応なく変化するのだ。ロシアや中国にとっても日本との領土問題は他人事ではなく、韓国と日本の決着に関係なく、対応を迫られる事になる。


 韓国と日本が総力戦となった場合には、軍人の数においては韓国が有利であるが質は日本が勝っている。経済基盤で考えれば日本が優勢ではあるが、戦前の様に戦時体制へと移行できるかは疑問である。


 日本の戦争アレルギーは重度であり、国民だけでなく自衛官が死傷する事に耐えられるかは微妙な問題なのだ。自衛権の行使についても国内で意見が割れるだろうし、藤家も否定側の勢力が強くなる前に叩けるだけの戦力は叩いておこうと考えていた。


 藤家は内閣不信任案の議決の前に緊急記者会見を日本国内だけではなく、世界に向けて発信しなくてはならなかった。日韓の武力衝突は戦前の負の遺産であり、これからも燻り続ける火種なのだ。


 国家としての正当性は開戦する前から国際社会に対して訴えており、敢えて特定はしていなかったが、テロと戦う事は国際社会の課題でもある。


 通商を邪魔する海賊問題や宗教や主義・主張による戦争はどこの国でも抱え込んでいる火薬庫であり、導火線に火がついていることに気が付いていないだけかも知れないのだ。


 日本はこうして戦場を掌握しつつあった。

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