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第8話 自由な魔法と自由な世界

 その日、童話の世界に新しい魔法使いの少女が誕生しました。

 なんとその少女は、魔女と魔法使い達を物語の鎖から解き放してしまいました。

 自由になった魔女と魔法使い達は大きな笑い声を響かせると、ソルシエールの家の横に大きな記念碑を作り出します。

 その記念碑には、こう刻まれていました。


『自由の翼を得た本当の魔法使い達の誕生と、それを成した二人の少女の名をここに刻む』


 家から出てきた強子ちゃん達がその記念碑を見ると、少し考えた後に魔法で文字を割り込ませました。


『自由の翼を得た本当の魔法使い達の誕生と、それを成した二人の少女と、その少女を支え、導いた偉大な魔女や魔法使い達の名をここに刻む』



 その記念すべき日から物語をなぞるだけだったこの世界は、その在り方を変えてしまいました。



 ある魔女は、白雪姫の城に置いてある魔法の鏡に美しさとは沢山の種類があることを教え込み、「世界で一番美しいのはだれ?」と聞いてくる女王様に美しい生き方をこんこんと説明しました。

 その結果、もともと美しいためには努力を惜しまない女王様は、民のみんなから世界一素晴らしく美しい女王様だと讃えられるようになりました。


 王女の誕生を祝う祝宴に招待されなかった13人目の魔法使いは、王族ではなく民のために祝福を与える魔法使いになりました。

 その魔法使いに祝福を受けた子供はよく眠り、スクスクと育つようになると噂が流れ、世界中から祝福を受けたがる人々が茨の家に訪れるようになったようです。


 人魚姫に薬を渡した海の魔女は、王子に人魚姫の全てを伝えて短剣を渡すと姿を消しました。

 その後、王子が自ら腕を短剣で切りつけ人魚姫を助けると、その人魚姫の献身を知った王子の弟からの突然の熱い求愛を受けて、アワアワしています。


 ヘンゼルとグレーテルがたどり着いたお菓子の家では、口が悪い魔女が仕事と食事を与えてくれました。

 その後もその魔女は文句を言いながら、多くのお腹を空かせた子供の家にお菓子を投げ入れているようです。

 その影響か、ヘンゼルとグレーテルの将来の夢はお菓子職人になりました。


 シンデレラに魔法をかけた魔法使いは、シンデレラだけではなく世界中の健気な人達にチャンスを与えてくれました。

 そのことが世界中で噂になり、サンタクロースのようなお話が世界中の子供達に広まっているようです。

 お菓子の魔女の話も世界中に広まると、その魔女の愚痴を聞く魔法使いが、笑いながらお茶をしているという噂も。



 そして強子ちゃん達はというと……


 「『いかのおすし』よ! ちゃんと覚えておくこと!」


 桃太郎に出てくる犬、猿、キジと浦島太郎に「いかない、のらない、おおきなこえをだす、すぐにげる、しらせる」のかしら文字をとった防犯標語『いかのおすし』を教えていました。


 そのほかにも『かぐや姫』に出てくる月からの使者達と話し合いの場をもうけたり……


 悪さをしている鬼達の親分と相撲をとって『姉さん』と呼ばれるようになったり……


 その鬼達を連れて、迷惑をかけた人達の田んぼや畑の開拓などを手伝いながら、謝罪を一緒にしてみたりと……やりたい放題やっていました。



 それから一年が過ぎ、久々に世界の様子を見た神様は大きく口を開けました。


『な、な、なんだ、これはっ!!

 なんで魔女と人間が仲良くしてるの!?

 なんで鬼と人間が一緒に暮らしてるの!?

 なんで話が無茶苦茶になっているんだよぉぉぉお!!』


 驚きすぎた神様は、『なんで? なんで?』と赤ずきんちゃんのように地上に向かって質問します。


 でもそれは仕方ありません。

 注意書が目立つ竜宮城など、子供達の夢を壊してしまいます。


『……そうか。マッチ売りの少女がまだ生きていたんだね……。雪の女王もあっちの仲間か……ん? あれは……』


 マッチ売りの少女の近くに、珍しい色のお花畑がありました。

 それは青いバラのお花畑で、そのお花畑を空から見ると、文字になっています。


『たしか青いバラの花言葉は『不可能』だったけ……。ふふふ、僕への当て付けかな?

 わかったよ。僕が直々に出向いてあげよう。そして教えてあげる。この世界を変えることこそが『不可能』だということを……』


 神様の見つめる地上には、青いバラで『話し合いたい』と書かれているのでした。


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