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第6話 集まる魔力と魔女の儀式

 テーブルを取り囲むように現れた魔女達は、強子ちゃんや雪の女王をジロジロ見ながら好き勝手に口を開きます。


「ひぃーひっひっ、久々の魔女の儀式かと思えば、ソルの呼び出しとはねぇ」

「で、魔女になりたい馬鹿たれはどこだい?」

「おやおや、まさかマッチ売りの少女かえ? 頭の中まで凍っちまったんだねぇ」

「こりゃ驚いた、雪の女王までいるみたいだよぉ」

「……ソル。なんのつもりだい?」


 魔女の一人がソルシエールをにらみながら、この状況の説明を求めました。


「あら、メレンダ。私の役目は健気な少女の願いを叶えることよ? もしかして、忘れたのかしら?」


「ソル! 馬鹿にしてるのかい! ちゃんと説明しな!」


「あらあら、相変わらずせっかちなのね。貴女のお菓子でお茶をしてから説明をしようと思ってたのに……。いいわ、お話を先にしましょうか。実はね――――」


 ソルシエールから強子ちゃん達のことを全て聞いた魔女達は不気味に笑うと、杖を鳴らして馬鹿にしました。


「――こんなガキんちょ達に魔法使いの掟が破れるもんかい! 頭に花でも咲かせたんじゃないのかい、ソル。

 ガキんちょ達も魔女なんかならないでお菓子の家にでも来たらいいさ。美味しいお菓子で太らせたら、スープにして食ってやるよ」

「いやいや、カエルにしちまうのはどうだい?」

「ハツカネズミも素敵だねぇ~」


 恐ろしい声で脅しの言葉をかけてくる魔女達に、強子ちゃんは胸を張ってこたえます。


「やってみないとわからないじゃない。私達、魔法を使ったことはないけど物語は変えたことあるのよ?」


 その言葉を聞いた魔女達は、強子ちゃんに向かって罵声を浴びせようとしました。

 しかし、メレンダと呼ばれた魔女が、床に杖を強く突くと口を開きます。


「ひぃーひっひっ、口だけは一人前のガキんちょだね。……どのみち掟を知られたからには無事に帰ることは出来ないよ! できるだけ醜い魔女になるがいいさ」


 お菓子の家に住んでいる魔女、メレンダはふんっと鼻をならして言いました。

 強子ちゃんはメレンダの方へと体を向けるとにっこり微笑みこたえました。


「口は悪いけど良い魔女だって聞いてたのは本当ね。ありがとう、メレンダさん」


「ソ、ソルッ!? あんた、なにデタラメを――」


 メレンダが顔を真っ赤にしてソルシエールに詰め寄ると、その様子を見ていた魔女達は恐ろしい声で笑いました。




 魔女達が強子ちゃんを囲み、ソルシエールが優雅に力強く杖を振ると、強子ちゃんを中心に黒い魔法陣が浮かび上がります。


「――では、魔女の儀式を始めます。これからあなた達に魔女達から魔法の試練が与えられます。その試練の結果によって、あなた達がどんな魔女に成るのかが決まるでしょう。……詳しいことは言えなくてごめんなさいね。でも、あなた達の夢を手に入れる為には、全てを諦めちゃ駄目よ」


「ソル、お喋りはおよし! どうせこいつらは途中で諦めて、醜い魔女になっちまうさ。私達のようにね……」


「あら、ふふふ。私はそこまでヒントは言ってないのに。相変わらずね?」


 顔を真っ赤にするメレンダと笑うソルシエールさんに頭を下げて、強子ちゃんはその時を待ちます。

 そして、月の光が強子ちゃんを照らしたと同時にソルシエールは呪文を唱えました。


「……時は来た。月の光に知らせよう、新たな夢の始まりを! 陽の光に知らせよう、新たな力の誕生を! 我等は定める……その魂の在り方を!」


 黒い魔法陣は強く輝き出すと、その光は強子ちゃんを包み込もうとます。


 強子ちゃんは体から力が抜けるのを感じましたが、両手を胸にあてると心の炎を燃やして踏ん張りました。


「なんて力だい! こっちが焼かれちまうよ!」

「無駄口を開く余裕があるなら、もっと力を込めな!」

「魔法使いのシジイどもにも使い魔を飛ばしたよぉ!」

「私もお手伝いいたします」

「あらあら、とっても、賑やかに、なって、来たわねっ!」


 魔女達が力を込めて強子ちゃんを黒い光で包み込もうとしていると、扉がノックされて一人のお爺さんが入ってきました。


「おお、久しぶりじゃのぉ……! お主ら大精霊でも怒らせてしもうたんか!?」

「マーリンかい!? ボケッとしてないで手伝いな! これは魔女の儀式だよ!」

「魔女の儀式!? コレがか? ……とんでもないのぉ」


 ソルシエールの可愛い家の中は魔女と魔法使い達で溢れかえり、なんとかその中心にいる強子ちゃんを黒い光で包み込むことに成功しました。




 ――――強子ちゃんは歯を噛み締めると、暗闇の中で足を踏ん張りながら立っていました。

 気を抜くとすぐに意識を失いそうなのです。


「アリュは、大丈夫?」


(まだまだ、平気、だよ!)


 本来なら気を失い、目が覚めてからが魔女の儀式の始まりなのですが、それを知らない強子ちゃん達は必死に気を失わないように頑張りました。

 寝ている間に魔法使いの掟を身体に染み込ませるはずだった黒い光は、強子ちゃんとアリュメットが発するオレンジ色の炎で身体に近付くことができません。


「ふぅ、試練って何をするのかしら?」


(全てを諦めないでって言ってたよ?)


 強子ちゃんは周りを確認しますが、真っ暗なのでなにも見えません。

 でも、アリュメットの体からオレンジ色の炎が溢れているのはわかります。

 強子ちゃんは気合いを入れ直すと、大きな声をあげました。


「よし! とりあえず、諦めたら負けってことよね。絶対に諦めないんだから! ね、アリュ」


(うん!)


 強子ちゃんとアリュメットから溢れるオレンジ色の炎は、ますます大きく輝くのでした。


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