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観戦と参戦

遅くなって申し訳ありません。

  一進一退の攻防は続く。

  まるでファンタジー物の映画やゲームの様な光景だ。

  自分より大きく強い敵を相手に、戦っている姿は心打たれるものがある。

  リン姉が作った防具を着けているので、一撃で木をへし折るレッサードラゴンの一撃を何度も耐えるのは厳しいだろうが一度や二度なら耐えられるだろう。

  ゲームなら、ゲームオーバー覚悟で何度も戦い、攻撃パターンやタイミングを覚えたり出来るが、これは現実だ。木をへし折る様な攻撃を耐えられると言っても、攻撃を受ければ傷付き、その痛みに恐怖も覚えたりもするだろう。ましてやコンテニューなどあるはずもなく、死ねばそのまま死んでしまう。そんな死と隣り合わせと分かっていながらも戦う姿に感動すら覚えてしまう。

  荒削りで、俺から見ても拙い剣さばきだ。武器は強すぎると、それに頼りきってしまうからきっと相応なものを渡しているだろう。それに反して命綱の防具は俺やリン姉が着てるコートと同じ素材を使用している様で、性能はかなりいいだろう。

  そんな装備と動きがちぐはぐに見えてしまう男に、自然と目が離せなくなっていた。

  きっとこうゆう人を惹き付ける奴が、物語の主人公だったりするのだろう。

  もしかしたら何年か経ったら俺より強くなっているかも知れないな・・・。


  ・・・うん。油断せず鍛えよう。


  視線をダリウス達に戻す。

  ダリウスは上段から刀を振り下ろすと、レッサードラゴンは爪でそれを弾き、反撃で爪を横薙ぎするも、バックステップで下がりながら、刀で受け流していく。

  ダリウスがゲームで言うタンクの様に、攻撃を受けつつ相手の意識を自分に向かわせている。

  ルーベンスはアタッカー、ゲームによってはダメージディーラーとちょっと格好いい呼ばれ方の所謂花形だ。ひたすら攻撃して、ダメージを与えている。

  ミミーはヒーラーやバッファーと呼ばれ、味方を回復させたり、能力を上げたりして、サポート役に徹して、パーティーを支えていた。

  脳筋の俺は基本的にアタッカーだった。

  タンクの様に自分に意識を向かせる様に立ち回ったり、ヒーラーやバッファーの様に周りの体力やバフを管理しながら戦うのは無理だった。なので、それをやるあの二人を心の底から尊敬する。


  徐々に三人が押し始めた頃、背後から木々を薙ぎ倒す様な音が聞こえてくる。

  俺は大剣を肩にのせながらそちらを向く。・・・全くいいタイミングで来てくれたな。ダリウス達の戦い見ていて俺もやりたかったんだ。


  「リン姉あれは俺がやるよ」

  「分かったよ、じゃあお姉ちゃんはあっちかな?」


  そう言ってリン姉が向いた方を確認すると、そちらからも木々を薙ぎ倒しながら近付いて来ていた。

  木々の隙間から現れたのはレッサードラゴンより一回り大きいドラゴンとリン姉が向いていた方からは全身金属の蟷螂が現れた。

  ・・・レッサードラゴンより一回り大きいドラゴンも中々強そうだが、全身金属の蟷螂も中々に強そうだ。どちらとも戦いたいが、俺はこっちに向かってくるドラゴンのお相手をするかな。

  大剣を構えて、ドラゴンに向かって飛び出していく。

  大剣を上段から振り下ろすも、ドラゴンは爪を器用に使い受け流しきた。勢いよく突っ込んでいたから、受け流され、そのまま反対側に飛んでいく。体勢を整える為、木に着地し、また飛び掛かろうとドラゴンを見ると、人なんか丸飲みに出来そうなほど大きく開けた口から、一メートルほどの火球を飛ばしてくる。流石に当たったらヤバそうなので、横に飛んで回避するも、回避した場所に間髪入れずに放ってきた。

  避けきれないと判断して、大剣の腹で受け流すが、近くに来るだけでかなりの熱を感じる火球に悪戦苦闘してしまう。

  前に戦ったヘルゴブリンキングが放った火球よりは威力は低いが、リン姉の負荷魔法を受けてる最中だから、かなりの脅威に感じる。いや、実際にこのドラゴンの攻撃は、チートなステータスなどない人からしたら、かなりの脅威になるのだろう。俺だって前の世界でこんなもの喰らえばただでは済まない。

  ・・・いかんな。チートなステータスで脅威を脅威と思わなく成りつつある。過小評価して、相手を舐めて取り返しのつかなく成る前に気を引き締めないとな。

  ドラゴンが放ってくる火球をステップで横に移動して、大剣で両断する。

  初めて試したが魔法も斬れるのか・・・。もっと技を磨けば対リン姉用に使える様になるかもしれないな。そして、「凄い、そんな事出来るんだ!」とリン姉に誉められ、「ジンさん凄い、素敵、抱いて」と女の子達に言い寄られて・・・ぐふふふ。

  おっといかんいかん。いつものクールな俺に戻ってと。


  「どんどん来いや!!」


  自分でも単純だとは思うが、美女達にホヤホヤされたいが為に、歩きながらドラゴンに近付き、飛んでくる火球を斬り飛ばしていく。

  バッティングセンターみたいで楽しくなってきた。

  初めは二十メートルほど離れていたが、今は五メートルほどに。飛んでくる火球も、口が開いたらもう目の前にあるような錯覚だ。もうステップで避けるほどの余裕は無く、ただ飛んでくる火球を叩き斬っているだけだが、当たってはいけないスリルと、魔法が斬れているという達成感で、めちゃくちゃ楽しい。

  五メートル手前で十分ほど火球を斬り飛ばしていると、急に火球は来なくなった。


  「ふぅ~・・・いい練習になった。今ならリン姉の魔法も斬れる気がする。負荷魔法かかってても結構いい動きが出来てるな。まあこれにブレスレット着けてたら何も出来ずにこんがり焼かれてたかもしれないけどな・・・」


  火球を吐き終えたドラゴンはその巨体に見合わないほどの速度で目の前に移動してきて、人の体ほどある巨大で鋭利な爪を振り下ろしてきた。

  大剣で捌こうとしたが、その瞬間嫌な予感が頭を過る。

  こういった予感は大抵当たるので、大剣で捌くのを止め、斜め後ろに回避する。避ける俺と入れ違いになる形で振り下ろされた爪は大きな音を立て、当たった地面はクモの巣状のヒビを発生させて、一メートルほど陥没した。

  危な・・・。今のステータスであんなの喰らえばひとたまりもないだろう。

  いいよ。こうゆうヤバい方が好みだ。




 

 

 

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