量産と準備
遅くなって申し訳ありません。
焼いては皿にのせ、手の空いた人に持って行ってもらう。「美味しい」と声が聞こえる度に嬉しさと、気恥ずかしさを感じる。空いてるコンロを全て使用してステーキを量産しながら思う。ああ、やっぱり「美味しい」と言ってもらえるのはいいなと。
少し前は飲食店を出すのは躊躇われたが、子供達に料理を教えて安くて旨い屋台をさせて、儲けた分を将来ここを出る時の足しにしてあげるのも悪くないかもしれない。
メニューはそうだな・・・ファーストフードにしようと思う。他の露店を見る限り売っていないし、簡単に作れて原価もそこまでかからないだろう。肉は狩りでどうにでもなるから、主に野菜やパン、調味料等の食材の確保と、販売する場所、販売する許可かな?
後で、リン姉に相談してみるか、軽く考えただけだけど意外に悪くない様に感じる。もちろん材料費や、場所代等が高い可能性もあるが、材料費はいつも買ってるからそこまでかからないのも分かっているから値段の予測は出来、寧ろ大量に買えば更に安くなる可能性もあるので大丈夫だろう。そうなると場所代等か・・・あの辺境伯と村長の親子が高額な税金場所代、税金を取るほど愚かではないと思う。
税金はこの村の維持に必要だ。街道や外壁の補修や維持なんかに使われているだろうし、リン姉に聞いたがギルドの報酬の補填や維持にも使われているらしい。何故リン姉がそんな事を知っているかは分からないが・・・。
そう言った必要経費としても当てられているが、もちろん辺境伯や村長達の生活にも使われている。まあ公務員と思うと分かりやすいから勝手にそう思っている。実際には違うのだろうが、理解しやすいから辺境伯や村長を県知事や市長とかってイメージになっている。
辺境伯と言う爵位持ちなのでなんとなく想像は付くが、彼らの上に王が居て、彼らも集めた税金から国に税を納めている。もちろん辺境伯は商売もしているからそこからも納めているだろう。
国によっては税金が驚くほど高く、その日を生きるのもギリギリな国もあるらしいが、この国は他の国に比べて比較的低いらしい。
例えば辺境伯達が、生活を豊かにする為に税金を高くすると、一時的に税収は上がり、懐は暖まるだろう、俺みたいな馬鹿でも分かる。だけどそんな感じで税金を集めようものなら、村人はこの辺境からさっさと出て行きその結果税収は下がるだろう。
この国自体そこまで高い税金を要求してはいないし、移住なんかを制限しているわけでもない。先ほど話した税金の高い国は逃げれない様に移住なんかを禁止して、他国に逃げた者が居ればその隣に住む者に罰が与えられるなんてとこもあるらしい。だから、隣人が逃げない様に疑いお互い監視をするとこもあるらしい。逃げるかもしれないと疑心暗鬼になり、お互いを監視しながら高い税金を払い、ギリギリの生活をするのは精神的にも肉体的にもきつそうだ。少なくとも俺には耐えられそうにない。
話がそれてしまったがここは一応"村"だ。国が移住を禁止している訳でもないので、税金が高いと近くの例えばクレント村や街などのこことそれほど変わらない村や、ここより栄えた街に移住するだろう。
だから活気があり、人が集まり"街"と言っても過言ではないこの大きな"村"の長達はそんな愚かではないと思う。何よりあの親子がそうでないと思いたい。
時折つまみ食いをしながら大量のステーキを焼き上げた。
普段全く気にもしない税金とかのことを考えるより、何も考えず、料理してる方が俺に合ってるな。
途中からおかわりが無くなったが、そのまま一心不乱に焼き続けてかなりのストックが出来た。これなら腹ペコモンスターズがいくら食べても大丈・・・夫?
・・・・・・あれ?足りるか心配になってきた。
繁盛店のランチの時並みに焼いた。しかも一人ではなく、ノランやカーナといった普段料理してる子達も頑張って焼いてくれた。コンロだって、二十五個もあるのをフルに使い焼き上げた。
正直飽きるだろうけど、俺が一日三食毎日食べたとしても一ヶ月はもちそう・・・いや確実に余るくらいはあるはずだが、不安は拭いきれない。
・・・・・・先ほどの減り方を見てると一週間もつかも心配になるほどだ。肉を焼いてくれる人でもいいから雇いたい。料理は好きだから苦ではないが、肉を焼くだけじゃなく色々作りたい、それに可愛い女の子を探・・・ゴホンゴホン。村を探索したり、森に狩りにだって行きたい。
よし、これも相談してみよう。多少高くても雇えるように狩りで頑張って稼ごう。
「今居る子にお願いしたらいいんじゃない?皆料理レベルは1以上あるよ」
なるほどね。わざわざ別に雇ってしてもらう必要はなく、今居る子達でも充分らしい。最初から料理スキルを持っているから、料理も期待出来る。
リン姉にお礼を言って、狩りに行かない子達に何が作れるか聞くと、ハンバーグが作れると言う子が居たので詳しく聞くとノランに作り方を教わったそうだ。せっかくなのでその子には人に教えながら三人でハンバーグを作ってもらい、他の子にはステーキを焼いてもらう様にお願いした。
ハンバーグが焼ける子が三人にくらい居れば充分屋台を開けるしな、ついでにリン姉に屋台を開く相談もする。
「・・・なるほどね。いいと思うよ。屋台の製作と仕入れはお姉ちゃんに任せて。でも営業する許可は村長に聞かないといけないからそっちはお願いしていい?」
「なるほど、じゃあ明日にでも聞きに行くよ」
「うん、お願いね。あ、今日はこの後狩りに行くんだよね?」
「もちろん。ランク上げないと」
「じゃあ部屋で準備してくるね」
そう言って食堂から出て行くリン姉を見た後、俺も一度部屋に戻り、着替えた。ワイシャツの上からホルスターを付け、新しくもらった魔導銃を差し込む、その上から色の違う皮で補強された朱色のコートを纏う。
手甲や脚甲は森に着いてから展開しよう。結構目立つし、刺々しいところがあるから当たって怪我したら危ないしな。因みに手甲や脚甲の状態でも、指輪の状態でもステータスが上がらない様にする方法を教えてもらったので、上がらない様にした。あの万能感のまま無双してたらすぐに腕が鈍りそうだし、なにより楽しくない。ステータスは上がらない様にはしたが、手甲と脚甲の硬さ自体は変わらないらしく、めちゃくちゃ固いままだった。
大剣は大き過ぎて背負うと、揚げ物の名前が入ったちょんまげ頭の某カラクリ人形の様に剣を引き摺ってしまうので、背負うのは止めて、アイテムボックスに収納した。
端からみると丸腰にしか見えない。後どうでもいいが、この格好で大剣背負って、髪の色が銀色とかになったら、スタイリッシュに悪魔でも狩れる気がする。
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