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改築と密談

ジン以外の視点があります。

  置いてけぼりにした三匹に謝った後、速度を合わせて走り、休憩と夜営を行い、次の日の昼頃にはクレント村が見えてきて、ホッとした。

  ちなみにあれから休憩と夜営の時の夕食と朝食とで三回食事を取ったが、腹ペコモンスターズは今までの三倍以上食べた。お陰で大量に焼いてアイテムボックスに入れていたステーキのストックがほぼ無くなってしまった。

  あの体のどこにあんなに入るのだろう・・・。てか今までの食事量足りてなかったのか?

  ・・・今度時間作って大量に焼いておこう。ひもじい思いはさせられないからな。



  村の近くでトランスポーターから降りて、門に向かう。

  あの門番は見たことあるな、訓練に参加してた人だな。・・・名前は分からんが。

  軽く挨拶をして村に入ったが、なんだろう・・・ほんの三、四日居ないだけだったけど、若干違和感を感じる。

  建物・・・は特に変わらない様に見えるから人かな?物凄く見られている気がする・・・。敵意は全くない寧ろ観察する様な感じだな。

  ・・・はっ!!そうかティナか!?見た事がない美女を引き連れているから目立っているんだな。俺だって街を歩いてこんな美女を見たら視線が釘付けになるな。そう考えつき隣を歩くティナを見る。

  凛とした感じの美女。歩く度に長い髪が揺れ、ついでにお胸様も揺れるこの姿・・・目立た無い訳が無いな。

  パンと音がしてそちらを見ると、奥さんの様な人にビンタされてる男性の姿が目に入る。・・・こんなに素敵なものはつい見ちゃうよね?しょうがないよね?・・・けど奥さんが居るのにいけませんな~俺も指導させてもらおうかな?・・・決して綺麗な人と結婚してて、幸せそうで嫉妬してる訳じゃないから。だからめっちゃ頭を下げて足早に行かないで、手加減するから一発だけって、あぁ・・・見えなくなった。


  教育的指導(ビンタ)をしようとしたら逃げられたので気持ちを切り替えてマイホームに帰ろうとしたら、後ろから呼び止められた。


  「ジンさん。お帰りなさい」


  そう声をかけてきたのはメイド姉妹の姉のアイナだった。


  「アイナ、ただいま」


  そう言うと隣から若干視線を感じるがそのまま会話をする。


  「まだ昼食は食べてないですよね?腕によりをかけて作りますから、早く帰りましょう・・・って、ジンさんその方は?」

  「ああ、今日から一緒に住むディレスティナだよろしくな」

  「ディレスティナです。ティナとお呼びください。これからよろしくお願いいたします」

  「アイナです。こちらこそよろしくお願いいたします」


  一緒住むって言った瞬間かなり驚いた様だけど、すぐに表情が戻り、挨拶していた。アイナも美人だから、ディレスティナの美貌に驚いた訳じゃないだろう。頭の角で魔人種と気付いたから驚いたのだろうけど、魔人種と言ってもほとんど人族と変わらないからって大丈夫と伝えよう。・・・皆で仲良く住みたいし、種族はどうにもならんが、『家族になって』とこっちから言ったんだし、そこはどうにかしなければ!!


  「アイナ、ディレスティナは・・・」

  「ディレスティナさん・・・いや、ティナさん、後でお話があります」


  そう言って、家に向かって歩き出したアイナとその後を着いていくティナ。ポツンと残される腹ペコモンスターズと俺。


  少しの間止まっていたが慌てて二人を追いかけていった。



  家に着く前に追い付き、三人と三匹で、門をくぐり、玄関に向かおうとするが、ここでも違和感を感じる。確かに大きめの家だったよ?けど門から玄関まで歩いて三十秒もかからなかったはずなんですけど・・・。外から見た時は変わらなかったのになんなんだ?

  と、とりあえず玄関から家の中に入ってみた。


  「・・・・・・」


  本当に言葉に出来ない事ってあるんだな・・・。

  俺はまた一つ賢くなった。


  ・・・って違う!!なんだこの家は!!元々デカくて豪邸とか思ってたけど、もうこれ高級ホテル並みになってんじゃねぇか!!

  玄関入って直ぐのところなんか、綺麗な受付嬢とかいたらエントランスとかフロントって言っても違和感ないから!!・・・寧ろ受付嬢が欲しい・・・って今は置いといて。もうこの部分だけでも屋敷の半分はあるんじゃないかと思うほど広いんだけど・・・。どうしよう他を見るのが怖くなってきた。早く自分の部屋に戻りたい・・・いや、キッチンは見て見たい。


  という訳で、アイナにお願いして、キッチンに連れて行ってもらった。


  案の定と言うかもうね、キッチンも凄かった。一体何十人分作るんだよってくらい広かった。魔導コンロとか何十ってあって「同時に色んなもの作れるな」って、テンションが上がってしまった。


  その後は自分の部屋の前まで連れて行ってもらった。

  ・・・大きく家が大きく成りすぎて、部屋が分からんかったのよ。部屋の前でアイナとティナと別れた。さっきの会話がめっちゃ気になってしょうがなかったけどアイナは有無を言わさずティナを連れて行ってしまった。

  最初は不安だったが、アイナの事を信じて俺は・・・この部屋に入る。

  家がこんなに変わっているんだ、俺の部屋が変わっていない訳がない!


  「ゴクっ・・・」


  ドアノブに手をかけゆっくりと回し、そこから一気に扉を開いた。








  ・・・そこには見覚えのある大きさの部屋にベッドとテーブルがあるだけだった。


  「・・・か、変わらんのかい!!」


  え?なんで?こんだけ家の中変わってるのになんで俺の部屋変わってないの?いや、変わって無くて良かったんだけど・・・だってこのくらいの方が落ち着くし、部屋大きくても使う場所固定されて結局使わないし、それに掃除する場所が増えるのが面倒だし。ハーレム用(予定)ベッドさえあれば満足だから。・・・けど、なんていうかオチは尋常じゃなく広い部屋にベッドがポツンと一つだけあって「広すぎるわ!!」とツッコミたかった。


  とりあえず、ハーレム用(予定)ベッド・・・長い。ベッドに寝転がる。まだ数回しか使っていないが、自分のベッドはやっぱり落ち着く。それにリン姉が良く使ってるらしい、前の世界でも嗅いだことある品のいい香水の様な匂いがする。

  ・・・こっちにも似た様な香水あるんだろうか?この香り結構好きだから後で売ってる場所を教えてもらおう。後、いい香りの香水をかけてくれるのはいいんだけど、勝手に入るのは止めて欲しい。・・・こっちの世界では持っては無いんだけど、18歳未満が買えない本とかDVDとかあったから。バレない様に巧妙に隠してて今までバレてないからいいけどね。バレたら?・・・すぐに部屋を探して一人暮らしを始めるレベルだな。









  ジンがベッドでゴロゴロしている頃、ティナは少し暗めの部屋に案内された。部屋の中央に置かれたイスに座る少女達に気付く。その少女達の真ん中に座る少女がティナに向かって話かける。

  「・・・ようこそティナさん。私達は貴女を心から歓迎するわ」

  「・・・あ、あの私は・・・」

  少女は否定の言葉を言おうとするティナを遮って話を続ける。

  「それ以上言わなくていいわ。私は理解しています。貴女がこれまでどう生きてきたかはね・・・」

  「それ・・・は」

  「ジン君に全てを受け入れてもらってまだ、その暗い過去と生きるの?」

  「・・・」

  「それとも・・・」


  少女はそう区切った後、ティナに微笑みながら一つの提案を持ちかけた。

  ティナにとってその提案はジンに受け入れられ、小さく灯ったばかりの心の灯が大きく、そして決して消えることがなくなるきっかけになった。


  提案を聞いたティナの表情を見た他の少女達も微笑んで、ティナを温かく見守っていた。



お読みいただきありがとうございます。

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