森と魔王
遅くなって申し訳ありません。
魔王か・・・・・・。
ゲームとかじゃラスボスか黒幕に操られたラスボスっぽいやつってイメージなんだよな。しかも大抵は人類の敵ってスタンスだ。
ここで考えるのはゲームか否かってとこだな。
ゲームは好きだし、ストーリー的に魔王=倒すべき敵って感じでも、問題はなかった。所詮はゲームだしな。
・・・けどここは現実だ。ゲームみたいにセーブやロード、リトライやコンテニューとかある訳じゃない。斬られれば血は出るし、痛みがある。負けて死んでも教会で復活も出来ないし、数百円くらいで復活するアイテムなんかもない。有ったとしてもそんなものが安いはずがないだろう。
話は逸れてしまったが、これらを踏まえた時、「魔王ってどう思う?」かの質問に対して、人類の敵とかって言えるか?俺なら言えない。ズルいかもしれないが、俺はーー。
「分からない」
としか答えれなかった。
「そう・・・ですか」
俺の一言を聞き、安心したような、ちょっと残念な様な複雑な感じで返事をした。
「魔王について良く知らないんですよ。多分気付いているかもしれないんですけど、俺迷い人ってやつなんですよ」
「なんとなくそんな気はしてました」
「前に居た世界では、ゲームと言って、なんて言えば言いかな・・・現実では出来ない非現実のことが出来る物があったんですよ」
頷くディレスティナさん。俺はそのまま喋る。
「その中で魔王が出てくる物が多数あって、その大半は人類の敵として出ます」
「・・・ジンさんは・・・」
「・・・今言ったのはあくまでゲームの話です。ゲームをする人に向けてあくまで分かりやすい敵として作られています。でもここはゲームじゃない。作られた話と違って魔王にも戦わざる負えない理由や、もしかしたら戦わず一方的に敵とされているのかもしれない」
そこまで言うと、ディレスティナさんは俯いてしまった。
「さっきの質問の答えをもう一度言います。分からない。魔王が何をしたのかも、何をされたのかも、どう思っているのかも、どう思われているのかも・・・だから教えてもらえませんか?"魔王"ディレスティナさん」
「・・・・・・どうしてそれを?」
震える声で聞いてきた。
「髪に馴染んでていい感じだけど、それは髪止めじゃなくて角ですよね?魔人族とか魔族とか種族の呼び方は分からないけどずっと気になってました。次に朝ポロっと溢した長く生きてるってのは違うかなって思ったんたんですが、見た目通りのあなたみたいな若い人が言うセリフじゃないので、それも引っ掛かってました。極めつけが、さっきの質問かな。唐突に言われたら、流石に馬鹿な俺でも気付きますよ。もしかして知って欲しかったんじゃないですか?」
ビクッと反応するディレスティナさん。
「まあ、何が言いたいかと言うと、ディレスティナ、俺は貴女と争うつもりはない」
そう言うと勢い良く顔を上げこちらを見てくる。
「貴女は自分から何かされる様な事をした?」
ゆっくりだが頭を横に振る。
「俺や俺の仲間を傷つけようとか、殺そうとか思っているか?」
頭を横に振る。
「なら俺がディレスティナ、貴女の敵にはならない。今までずっと一人だったんでしょ?米を買ったりしていたから多少の交流はあったかもしれないけど、正体がバレないよう最低限だけでポーラと二人、こんな不便な森の中に住んで居たんでしょ?傲慢かもしれない、何を勝手なことを、と思うかもしれない。だけど言わせてもらう。俺が君を守る。例え世界中が敵になったとしても君を守る。守らせて欲しい」
「どうして・・・」
「そんな寂しそうな顔じゃなくて、笑顔が見たいから。俺としてはこれ以上ない理由だよ。貴女みたいな美女に涙は似合わないからね」
そう言って、ディレスティナさんの肩を掴んだ。
「だから、俺の家族になってよ」
目を大きく開けたディレスティナさんの綺麗な顔が歪み、一粒一粒涙が溢れてきた。
俺の胸に頭を当ててきて、嗚咽が聞こえる。
頭を撫でると、そこからせきを切った様に泣き出したディレスティナさんを抱き締めた。
そこから十分ほど経ち、泣き止んだディレスティナさんは目を真っ赤にしながら恥ずかしそうに。
「ありがとうございます」
と言った。
ああ、やっぱり美人には笑顔が似合うな。そう思いながら頭を撫でた。
それから、ディレスティナさんの生い立ちを少しだけ話してもらった。
魔人族という種族に産まれたディレスティナさん。元々魔人族は産まれつき高い魔力を持っていて、その中でもディレスティナさんは破格の魔力を持っていたらしい。両親は自分たちの事のように喜んでくれ、将来何があっても困らない様にと、幼いディレスティナさんに魔法や魔力を操る術を教えていったそうだ。
ここまでは順風満帆だった。愛情を注いでくれる両親。一緒に育っていく友達。見守ってくれる大人達。
ディレスティナさんが十歳になった頃バレンシア神王国が勇者達を召喚してから、徐々にディレスティナさんの人生が狂い始めた。
召喚された勇者達は魔人族や獣人族といった者達を、まるで遊んでいるかの様に狩っていった。もちろん魔人族や獣人族も反抗はした。反抗はしたが勇者達の圧倒的な力の前に、一人また一人と傷つき、倒れていった。
魔力が高い者で魔王、獣人のなかで力が強い者を獣王と呼び、それらは協力して、勇者達やそれを有する人族と戦った。
召喚をされて二年。勇者達はついにディレスティナさん達が住んでいた村に来た。
その頃にはディレスティナさんの父親が魔王となっていて、村人やディレスティナさんを守る為に戦ったそうだ。
奇襲を行ったりしたが、勇者達にはあまり効果がなく、村人は傷つき倒れていく。
そこでディレスティナさんの父親はまだ幼かったディレスティナさんに村にある食材や素材を持てる限り持たせて村から逃がしたそうだ。
村から出たディレスティナさんは森に入り家を建て、魔物に襲われ死にかけたり、ポーラと出会ったりしながら魔物を狩り、その素材を売って細々と暮らしていたそうだ。
「・・・いつも通り狩りをしていたら、いつもの数百倍の数に囲まれてたところをジンさんに助けていただいたんですよ」
なるほど、迷ってなかったらディレスティナさんに出会えてなかっただろう。迷った俺グッジョブ。
そして一気に話終えたディレスティナさんは疲れたのか俺にもたれ掛かってきてそのまま寝てしまった。
起こさない様に気を付けてソファーに横にして布をかけて寝顔を一目見て外に出る。
夜風に当たりながら先ほどの事を思い出す。
「だー!!なにが君を守るだよ!!クサいセリフ良く出たな!!恥ずかしい・・・・・・。しかもトドメは家族になってってまるでプロポーズみたいな事言って・・・言うタイミングってものがあるだろう!!傷ついた子に言うセリフじゃねぇよ・・・。はぁ・・・とりあえず守るってニュアンスは伝わったと思うから明日もう一度確認してから村に連れて行こう、ポーラもそれでいいか?」
隣に来たポーラの頭を撫でる。ポーラは一度頷き扉を器用に開け家の中に入っていく。
・・・この世界のペットは頭いいな。
「・・・バレンシア神王国か・・・・・・覚えておこう」
満天の星空を見ながら拳を握り締め、そう呟いた。
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