森と美女1
迷ったと気付いてから、そのまま進むの不味くない?と思い、一度止まる。
そして閃く。
『進んで森が深くなるのなら、その反対に行けばいいんじゃないか』と。
いやー『俺、冴えてる!天才か!』と思ったね。
そろそろ夕方くらいだろうから、急いで帰らないといけないから直ぐにメイを抱え、反対を向き走り始めた。
歩いている時はそうでもなかったけど、走ると地面の凸凹や木の根等で足を取られ走りにくく感じる。
早く帰らないとと思えば思うほど、この凸凹や木の根と言った障害物がもどかしく感じる。途中からメイには腰に張り付いてもらって、走ることに集中した。
走ってる最中、いい修練になるんじゃないかと思って、ブレスレットを着けようかと思ったけど、流石に止めておいた。
二時間ほど走り、辺りは薄暗くなってきた。
景色はほとんど変わっておらず、森が深くなって薄暗くなった訳ではない。ただ単に太陽が沈み始め暗くなり始めたのだろう。
・・・このまま遭難とかないよね?
遭難・・・今はまだアイテムボックスがあるから水や食料、調味料なんかは大量にある。それこそ一ヶ月は余裕だろう。だけど、このまま遭難し続けて水や調味料が無くなったら?
・・・水は池や川の水を探してなんとかなるとしても、調味料はなぁ・・・。ただ焼いただけの肉とか一週間くらいならいいけどずっとは無理だ。
そしてなにより、リン姉達に会えないのが一番嫌だ。
走っている最中少し離れたところから金属のぶつかる音や破裂音が聞こえてきた。
もしかしたら人が居るかもしれない!一縷の望みをかけて、音の方に向かっていく。
二分ほど走ると、尋常じゃない数の体長1メートルはあるデカい蟻が紫がかった髪の美女を囲み戦っていた。
美女は火や闇?の魔法で蟻を焼き、近付いてきたのを剣で斬り魔法で倒していた。
その一連の戦闘だけを見ると美女が圧倒していて、少数なら問題なさそうに見えるが、いかんせん蟻の数が多い。
木々が生い茂り、その隙間から見えるだけでも千は居そうだ。
もしかしたら大丈夫かもしれないし、獲物を横取りするなと言われるかもしれないが、目の前の美女とお知り合いになれるチャンスをみすみす逃す訳にはいかない。チャンスは自ら作っていかないと駄目だと、学生時代めちゃくちゃモテていた友人が言っていたからな。
もしかしたら、助けてくれてありがとうと感謝されるかもしれないしな。
そんな下心満載で、皮算用をしているが、美女との距離は200メートルほどある。
突っ切って行くのも時間かかりそうだな・・・。
「はあ、はあ・・・」
紫色の髪の美女はファイヤランスを蟻に放ち、直ぐに近付いてくる蟻を斬り飛ばす。結構な数倒したが、蟻は一向に減る様子はなく、寧ろ増えている様に感じていた。
(数が多い・・・。今までこんな事をなかったのに・・・今はまだ魔力が大丈夫そうだけど、このままじゃいずれ・・・)
少し離れたところに掌を向け、範囲魔法のシャドウボムを放った。大きな破裂音と共に十体以上は倒せていたが、確認する余裕はなかった。
次から次へと襲いかかってくる蟻を魔法で、剣で倒していった。
(私、こんなところで独りで死んでいくのかな?魔力も結構減ってきたし、今まで頑張ったんだし、最後くらい弱音吐いてもいいよね?)
すぅーと息を吸い込み、美女は最初は呟く様に、最後は力の限り叫んだ。
「お願い・・・助けて。・・・誰か・・・助けてよ!」
美女がそう叫んだ後、美女に噛みつこうと近付いていた蟻に朱色のコートを靡かせながら男が降ってきて、蟻を踏み潰した。
そして美女に向かって言った。
「助けにきた!」
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