姉弟と移動
新しい服を貰い、早速玄関でブーツの紐を結んでいる。
リン姉は子供達の装備をささっと作ると言ってそのまま部屋に残った。
なので買い物は俺一人だ。
家から出て、一度ギルドに行って、フォースコッコ、ワイルドボア、ホーンバッファローを売り、財布が温かくなったところで、露店で必要な物を買い漁っていく。一応他の人も買うだろうからいくらまで買っていいか聞いてから購入する様にしている。
いつも大量に買うので顔を覚えられていて。
「今日は豆が色々揃ってるよ。どうだい?」
なんて声を掛けられる。
豆ね。大豆とかあるかな?と見ると大豆は無かったが、小豆っぽいのがあった。
「おばちゃんこの豆全部くれ!」
「今日も豪快に買うね。7000グランだよ」
一山はあった小豆っぽいのを袋に入れて渡してくるので受け取り、アイテムボックスに入れて、そのまま金貨を取り出し、おばちゃんに渡す。
「あんた金貨なんてそんなにお釣は無いよ」
「釣りは要らないと言いたいとこだけど、おばちゃんが困りそうだから、次回購入分ってことで、また入荷したら、多めに欲しい」
「そんなに?」
「ああ、この豆は大好物なんだ!」
「そうかい。ならまた入荷したらあんたの分に取っておくからね」
「ありがとうおばちゃん」
「またおいで」
小豆が手に入った。
どら焼きにおはぎに餅、あんぱんに外郎に羊羹にぜんざい。夢が広がるな。外郎は好きだけど作ったことないし、米がないから作れないのもあるけど、いずれ小豆を使ったお菓子作りをしたい。
小豆のインパクトが強すぎて色々大量に買い漁ったけど、何をどれだけ購入したのかあまり覚えてない。
こうゆうところが使い過ぎって言われる所以なのかもしれないが、ちゃんと稼いでいるし、大好物の小豆のせいなので勘弁して欲しい。
エルザード商店でも同じように色々と買い漁った後、家に帰る。
家に着くと玄関の前にリン姉が立っていた。
「ごめん遅くなった」
「ううん。今来たとこ」
デートの前の待ち合わせか!
そう突っ込もうと思ったけど、女の子とデートなんかしたことないので止めておく。
「じゃあ行こうか」
「うん」
そう言って、トランスポーターをアイテムボックスに戻して門の方に歩るく。
クレント村方面の南門を抜けて少ししてからトランスポーターを取り出して跨がりキーを差し込む。
後ろに座ったリン姉が手袋を渡してくる。
「ありがとう」
早速手に嵌めてみる。これもいい感じにフィットする。更に手の甲と拳を当てる部分にメタルクラブの甲殻が付けられていて、その内側は柔らかい布が取り付けられていた。
めちゃくちゃ芸が細かいな。
きっと攻撃された方は硬い甲殻が当たり、攻撃した俺は柔らかい布で手を守られる様になっているんだろう。軽く拳を合わせてみたから間違いないと思う。
握ったり開いたりした後ハンドルを握る。
「じゃあ行くよ」
「うん」
そう言って背中に柔らかいものが当たる。
・・・うん。安全運転でゆっくり行こう。
背中に全神経を集中して、運転する。
のどかな風景と、背中の感触を楽しみながらクレント村に向かう。
「リン姉前の世界に戻りたいとか思わない?」
「うーん。この世界は弱肉強食そのものみたいだけど、努力したら努力しただけちゃんと返ってくるのは前の世界じゃそこまで分からなかったけど、この世界ではそれが良く分かるから、余計に頑張ろうって気になるよ。それにゲームみたいで楽しいし、ジン君が居るから・・・」
なるほどね。確かに努力がすぐに分かるのはモチベーションにも繋がるし、ゲームみたいで楽しいのも分かる。最近見せてもらってないけど、ステータスとして能力が表示されるのは嫌いじゃない。それに俺が居るからって言ってくれるけど、それは俺の台詞だよ。恥ずかしくて口には出せないけど、異世界って言う文字通り違う世界で面白おかしく生活出来ているのは、チートがあるからとか、前の世界でやってたことが役に立ってるとか、勿論あるけど、それよりもリン姉が居るからだよ。リン姉が居るから、俺は前の世界でもこの世界でも、折れず曲がらず人の道を外れずにこうしてリン姉と一緒に居られるよ。
感謝してるリン姉。
「俺もだよ」
きっと俺の顔は真っ赤になっているだろう。
顔を見られる心配はないけど、声でバレそうだから一言だけ言った。
言った直後リン姉の締め付けが強くなった気がした。
安全運転で街道を走るが、流石はバイク。もうクレント村が見えてきた。
結構ゆっくり走ったつもりだったけど、もう着いてしまった。
楽しい時間は早く感じるみたいな?
クレント村の門の前で一度停まるとリン姉の幸せホールド(物理)が外れた。
・・・もっと楽しみたかったけど、行きにやったって事は帰りもやるって事で、帰りも楽しみにしてます。
俺もバイクから降りて、アイテムボックスに収納して門に向かって歩く。
門番の前でギルドカードを見せようとすると。
「ジンさんいらっしゃい!隣に居る綺麗な方は奥方ですね?奥方ようこそいらっしゃいました!」
違うから、まだ結婚もしてないし、姉だからって突っ込もうとしたらリン姉が。
「綺麗な奥方だなんて・・・」
綺麗だとか褒め慣れてるはずが、手で顔を押さえて真っ赤になって照れている。
照れてるリン姉も可愛いな。
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