村と防衛戦5
ヘルゴブとたのし・・・命がけの戦いの最中に視界の端に見える馬車。多分エルザード村に向かっているのだろうけど、若干こちらにも近付いてくる。位置が悪いな。少し離れよう。
・・・ヘルゴブはまだ気付いてないからいいけどいずれ気付くよな・・・って危ね!ヘルゴブの拳が頬を掠める。
考え事しながら相手するのヤバいな。・・・ヘルゴブの蹴りを受け流し、胴に蹴りを叩き込む。
少しずつ離れていこうとするも、馬車は村に向かってどんどん近付いてくる。
本気で蹴っても飛んだりしないから、立ち位置と攻撃で少しずつやるしかない。
ヘルゴブのストレートにこちらもストレートを当て、直ぐ様逆の拳も叩き込む。
攻守が瞬時に変わっていく中、ヘルゴブより先に、村の結界を破ろうとしていた魔物達が馬車に気付いた様で、ぞろぞろと馬車に向かい始める。
流石に魔物が向かってくると馬車は方向を変えるが、よりによってこちらに向かってくる。
くそ!折角村から離れながら戦っていた俺の努力を返せ!
ヘルゴブの回し蹴りを掌で流し、体勢が崩れたヘルゴブの脇腹をぶち抜くつもりで本気で蹴り飛ばす。
体勢が悪かった為か、今日初めて吹き飛ばす事が出来たが、斜め前から来る馬車のせいで、喜んでる暇がない。
「ここから離れろ!!」
御者に向かって叫ぶが返答はなくどんどんこちらに向かってくる。
てかあの御者めっちゃ人相悪いんだけど・・・いやいや待て!前のヒャッハーさん(仮)みたいに実はいい人みたいな可能性もある。疑ってかかるのは不味いよな。
そんな事を考えていると吹き飛ばしたヘルゴブが目の前まで迫ってきていて拳を振り下ろしてきていた。
『あ、これヤバい』
受け流す最中そう思ってしまった。
認識の外からきたヘルゴブの攻撃の威力と速度が、俺の技量を超えているのを感じ、受け流すのではなく受け止めようと気合いを入れる。
「ぐぞっ!がはっ!」
腕をクロスさせ振り下ろしてきた拳をなんとか受けきったと思ったら、黒ゴブは回転し回し蹴りを放ってきた。
何も出来ずに顔面に直撃し吹き飛ばされた。
200メートルほど地面を抉り、漸く止まった。
「いでぇ」
口に溜まった血を吐き捨てて、ヘルゴブを見る。
ヘルゴブは俺ではなく馬車の方を向いていた。
ヤバい馬車に気付いた!
ヘルゴブは魔物に追われながら近付いてくる馬車を見ながら一度口を歪ませた。
ヤバいヤバいヤバい!
溜めていた気を解放しながら、ヘルゴブに向かって飛び出していくが、蹴り飛ばされて距離が離れており、少し時間がかかる。
ヘルゴブと馬車の距離が10メートルほどになってしまった。
「くそ!間に合え!!」
全力で踏み込み、一瞬でヘルゴブの真後ろに居た。
訳が分からんが、今はいい。今はこのチャンスを生かす!
ヘルゴブの腕を掴み馬車の後方に全力でぶん投げ、スレ違う様に走る馬車に向けて、叫ぶ。
「さっさと逃げろ!」
「ああ!」
人相の悪い御者は一言だけ言い。そのまま走り去ろうとした時。
「・・・たす、けて・・・」
荷台の方から微かに聞こえ振り向くと、荷台を隠す様に布が巻かれた隙間から中が見えた。
この世界の奴隷でもされる事がない様な感じで縛れた子達がこちらを見ていた。
・・・流石に犯罪奴隷じゃないだろうし、てか犯罪奴隷でもあんな縛れ方しないだろ。
一度聞いてみるしかないな。
『助けて』って言われちゃったしな。
走り去る馬車を一目見る。御者の顔は覚えた。すぐに追い付いてやる!
ヘルゴブの方を見る。練気を解放した状態でぶん投げたので相当遠くまで飛んでいったみたいだ。ダメージもあるみたいで、地面に落ちた時のなのか肩の周りは傷だらけになっていた。
起き上がろうとするヘルゴブより先に動く。
足に力を込め踏み込むと先ほどと同じ様にヘルゴブの目の前まで一瞬で移動した。
・・・瞬間的に移動する・・・瞬動と呼ぼう。
これでまた一つ強くなってしまった。
・・・って浮かれてる場合じゃない。
起き上がっている最中のヘルゴブの顔面を蹴り上げて宙に浮かせて、落ちてくるヘルゴブに練気でステータスが上がった拳で連打を叩き込んでいき、最後に地面に叩きつける様に振り下ろして仕留めた。
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