道具と食事
初めて生き物?魔物を倒したが忌避感はあまり感じなかった。
それよりも空腹感に負けそうだ。
とりあえず食べよう。
りん姉ならナイフか包丁作れないかな?
「りん姉、魔法でナイフか包丁作れない?」
「ワイルドボア食べるの?良かった~お腹空いてたんだ、ちょっと待ってね」
そう返事をした。りん姉は目を閉じ、集中し始めたので、俺は竃でも作りますかね。
積みやすそうな石で少し大きな囲いを作り、その中に枝を詰め込んでいく。ナイフか包丁が出来たら、網とかも作ってもらおう。
枝を詰め込み終わった後、りん姉から声を掛けられた。
「仁君、包丁出来たよ。はい、これ」
多分土魔法で作ったであろう、光沢のある茶色の包丁を渡されたが、家で使っている包丁と形が一緒だから持ちやすいし、良さげな感じがする。肌触りも鉄の包丁と変わりなく、結構な力で曲げようとしても曲がらないところを見ると、固さもいい。
問題は切れ味か、まあ切ってみれば分かるか。
「包丁ありがとう。悪いけど、こいつを乗せる台と、竃に載せる網、皿と箸を作ってもらえる?」
「・・・はい、ここに置くね。お皿と箸と網はちょっと待ってね」
2メートルくらいあるワイルドボアを楽々載せれる1メートルくらいの高さの台を、竃の近くに出した後、網を作り始めるりん姉。職人みたいです。
りん姉の出した台の上にワイルドボアを出した。
さあ、ここからは俺の仕事だ。
とりあえず毛皮を剥ぎとる為に包丁を差す。この包丁の切れ味はいいな。家で使ってたのよりいいな。今度色々作ってもらおう。
この包丁、切れ味本当にいいから気をつけよう。シャレにならないことになりそうだ。
切れ味はとてもいいが、慣れていないから時間がかかりそうだ。
20分ほどかかりやっと、毛皮と肉に出来た。初めてにしてはいいんじゃないの?
毛皮は売れるかもしれないので、出来るだけ肉を落としアイテムボックスに収納、さあお待ちかねの肉だ。
「そろそろ肉切るから火の準備お願い」
「分かったよ」
竃にこぶしほどの火の玉を放ち枝に火を点けた。
どんだけ使いこなしてるんですかね?・・・俺も使いこなせるように頑張るので魔法欲しいです。
・・・肉に取り掛かろうかね。
膀胱と腸にに気をつけてと、間違って切ってしまったら悲惨だしな。
内臓は止めとくか・・・いずれはホルモンとか食べれるようにしよう。
ん?心臓のところに2センチほどの小石みたいなのがあるな。血で分かり難いが、紫色か・・・。
魔石ってやつかもしれないな。"魔物"だしな。後で鑑定してもらおう。
魔石をアイテムボックスに収納し、ブロックに切り分けて、慎重に取り除いた膀胱や腸などの内臓は、少し離れたところに捨てた。後で穴でも掘って埋めるか。
結構な量の肉のブロックが出来た。
そのままだと、長くは持たないだろうが、外に出しっぱなしよりはいいだろう。とりあえずアイテムボックスに収納し、りん姉にお願いして、水魔法で手と包丁と台を洗ってもらった。
血と内臓で汚れてるとこで、切るのはちょっとね。
蛇口から出るくらいの水で手を洗わせてもらった後、高圧の水で包丁と台を一気に水洗し、風で水滴を飛ばす姉。もうそんなに使いこなしてるんですか?流石です。
綺麗になった台を濡れてない場所に移動させ、その上に量の多い部位を出し、薄く切って一口大にして切っていく。
赤身がとても綺麗だ。新鮮だからかね?
2キロくらい切った後、残りはアイテムボックスに収納し、竃のほうを向くと、いつの間にかイスとテーブル、皿に箸、コップに水差しまで用意されていた。
とりあえず二枚ほど網に乗せ焼いていく。
パチパチと音をたて、徐々にいい匂いがしてくる。脂が網の隙間から落ち、多少火力が強くなったりし、いい感じに焼けてきた。
二枚ほど焼きあげ、りん姉と俺と皿に別ける。
「「いただきます」」
肉を口に入れる、焼きたてで熱かった、口の中に肉の味が広がる。癖は多少あるがくどすぎず、むしろこのくらいの味の方が好きだ。ワイルドボア病み付きになりそうだ。
「美味し~」
「美味いな、どんどん焼くから食べてな」
「うん」
肉を食べてる姉も最高だぜ。
塩コショウ・・・いや、塩でもあれば・・・なんて思ってしまうが、無い物ねだりはよそう。いずれ手に入れることを心に誓い、肉を焼いていく。
肉を食べながら、りん姉の用意してくれた水を飲む。
美味い、水がこんなに美味いなんて。市販のミネラルウォーターなんて目じゃないほど美味かった。
「水も美味いね、おかわりもらっていい?」
「良かった。はい、どうぞ」
りん姉が指を振ると、コップに水が溜まっていき、8部目で止まる。
「ありがとう」
「また言ってね」
2キロくらいあった肉はすぐになくなったが、りん姉は足りなさそうなので追加で1キロほど切り焼いてあげた。
色々作ってもらってるからね、お腹空いちゃうよね?
ちょっと食いしん坊なりん姉もまたいい。
「「ごちそうさまでした」」
「仁君美味しかったよ」
笑顔の姉を見ながら、早く調味料を揃えようと固く誓った。
食後だから少しゆっくりしていたいが、流石に森の中で野宿はしたくないし、させたくない。
・・・日はまだ高い。日がくれるまでにはどうにか人の居るとこに行きたいな。
「仁君そろそろ移動しよ」
「分かった、じゃあ竃の火を消し・・・」
「あ、ちょっと待って、竃の火は消さずにそのままアイテムボックスに入れて。火がどうなるか見たい」
ん?あぁ、アイテムボックス内で時間が止まるのか確認するのか、流石りん姉。
早速、竃を収納した。
収納する物の一部に手を当てるだけで、収納出来るのは物凄い便利だな。これさえあったら、部屋を片付けるのが楽だったのに。
竃の火は30分もしたら消えるだろうから、その時にまた確認しようかな。・・・いや、晩ごはんの時でいいか。
竃を収納している間に、テーブル一式片付け終わっているりん姉に声を掛け、移動を開始した。
俊敏のステータスのおかげで、普通に歩いているつもりでも大分速いみたいで、度々りん姉と距離が開いてしまう。その度に小走りで走ってくる、りん姉を見る。
・・・離れないように手を握るなんて、出来るはずもなく、小走りで横に来るりん姉に謝りながら、少しもどかしい気持ちになる。
・・・あぁ、この子が彼女ならな、と。
もう何度も考えた"たられば"をこれ以上考えないようにし、歩く速さに気をつけ、2時間ほど歩いた。
「りん姉そろそろ休憩しようか」
「うん、じゃあテーブル用意するね」
テーブル一式を出し、コップに水を注いでいく。
こんな可愛い子がいる喫茶店とかあったらどうします?
あ、俺ですか?もちろん行きます。というか、通いつめますが何か?
2時間歩きっぱなしでも意外と疲れてないもんだな。りん姉の方をみるが、多少疲れは見せていりが、まだ大丈夫そうだ。
「休憩中悪いけど、武器と剥ぎ取り用のナイフ作ってもらえる?」
料理用とは別の剥ぎ取り用のナイフと、包丁の切れ味と固さで、武器をお願いした。
「分かった。ナイフは包丁に似た様な形にするね。武器はどする?」
うーん、やっぱり男の子ですし、狩りゲーでは常に大剣を使ってたし、多少技量はアレでも、振り回して無双するように使うし、メインは拳だし大剣にしよう。
「狩りゲーで良く使ってた片刃の大剣をお願い」
「あのゲームのやつね、分かったよ」
目を閉じ集中を始める。
やがて両手から茶色の刃が出来上がっていく。
1分ほどで、厚さ3センチ、高さ15センチほどで、刃渡り160センチで柄まで合わせると全長2メートルほどの巨大な包丁みたいな大剣が、出来上がった。
「はい、仁君こんな感じでいい?」
大剣を受け取り、良く見て見る。石で出来た大剣なのに、光沢があり、高級感があるように思える。軽く振ってみたが、重く感じずに振り回せる。・・・うんいいな。
「りん姉ありがとう。凄くいいね」
ナイフも受け取る。こちらも良さげな感じだ。
ナイフを見ている間にりん姉は、刃渡り90センチほどの刀と鞘を作っていた。もう鞘まで普通に作れるんですね。
なんだろう、りん姉のスキル聞くのが怖くなってきた。どんだけ成長してんだろうか。
作ってもらった大剣とナイフをアイテムボックスに入れ、20分ほど休憩をしてから、歩きだした。
・・・1時間ほど歩くと、徐々に木がなくなり、ついに森を抜けた。
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