ヘタレと帰宅
目が覚めると知らない天井だった。
やっぱ何度やってもいいな"目が覚めたら知らない天井だった"って言うの。
・・・でも本当に何処だここ?
確か"超絶カッコいい"男が、腐れ外道を"華麗"に倒したところまでは覚えてる。・・・自分で言っててあれだけど、2ヶ所くらいの異論は認める。
ベッドから起き上がると全身、特に左肩に激痛が走る。
「うおぉぉ・・・痛っ、マジでいてぇ・・・」
良く見ると、俺の体、包帯でぐるぐる巻きにされている。
悶え苦しんでると、部屋に助けた、姉妹が入ってきた。
「もう起きられても大丈夫なんですね」
「ま、まあ、かなり痛いけどね。そっちも大丈夫そうで良かったよ」
「それもこれも、ジン様、貴方様に助けていただいたからです。本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
お礼を言い頭下げる二人。ちょっと待とうか。なんか変な単語が入ってた。
「待って、ジン様って何?」
「この村を救ってくださった、英雄のジン様のことですよ?」
英雄?いやいや、そりゃさっきは頭に血が登って色々くさい台詞とか言ったけど、実際言われるとめちゃくちゃ恥ずかしいから。
このままだとずっと"ジン様"って言われるぞ。どうにかしないと。
「様付けだと、なんか距離が遠く感じるからさ、ジン君とかジンさんとかでお願いします」
「ジン様がそうおっしゃるなら、ジンさんとお呼びしますね」
「僕もジンさんって呼びますね」
はい、ストッープ。
聞いた?俺の耳おかしくなければ、"僕"と言ったよこの子。・・・僕っ娘って居たんだ。アニメとかの中だけの存在だと思ってた。
僕っ娘の妹さん。ゴクリ。体は僕って感じじゃない。むしろうちの姉に迫るほどのものをお持ちで。
お姉さんの方も妹さんに劣らず素敵なものをお持ちで。
何?この姉妹もの凄く凄い。ああ、ヤバい興奮して言葉が変になった。
不謹慎だけど、さっき助けた時じっくり見てれば良かった。
あの時はそんなこと微塵も思えなかったむしろ見たらダメだとすら思った。
それに吐き気と怒りを抑えるのにいっぱいいっぱいだったしな。
そろそろあの目線が釘付けになってしまう、魅惑のナイスバディをチラ見するのはこのくらいにして、そろそろ気になる、あの話をしよう。
「それでいいよ、俺まだ聞いてなかったんだけど二人の名前は?」
報酬の話だと思った?残念、まずは名前でした。
やっぱ女の子を名前で呼びたいのよ。
「まだ名乗ってませんでしたね。私の名前はアイナと申します」
「僕はエレナって言います」
「アイナとエレナね、分かった」
いいよね?そろそろいいよね?報酬の事言うぜ、言っちゃうぜ。
「・・・ほ、報酬のことなんだけど・・・」
「・・・はい」
「そ、そのキ、キスを、ほっぶ・・・」
緊張で噛みまくって、キスをほっぺにしてくれませんか?って言おうとしたら、アイナに唇を奪われてしまいました。
「んむぉ」
アイナと濃厚なキスをしてしまいました。
し、舌が凄い絡んでくる!!
あの噂のベロチューだと!?
更に舌を吸われて、ゆっくり口を離された。
俺大興奮の中、今度は替わるようにエレナに首に腕を巻かれ、エレナにも唇を奪われた。
アイナと同じように舌を絡ませてくる、長く激しくキスする。
口をゆっくり離された際、エレナの口と唾液の糸が伸びたのはとてもエロかった。
キスってこんなに凄いの?
・・・これは夢か?夢なのか?前に見たリン姉とのえらくリアルな夢みたいなことはないよね?
これが夢だったらマジで泣くからな。
も、もっとしてもいいんですよ?
「誰にでもするわけじゃありませんよ・・・ジンさんだから・・・初めてでしたけど・・・」
「そうだよ僕もだよ」
二人は顔を赤くしながら言った。マジで?そんな顔でそんなこと言われると、勘違いしますよ?年齢=彼女居ない男にそんなこと言ったら勘違いしてしまうでしょ!
美女二人にキスされて(しかも初めて)、顔を赤らめる二人の綺麗な顔をジッとみる。
これは夢か?夢じゃないのか?どっちなんだ。夢だったら、この直ぐ前にある、魅惑のお胸さまに触れさせてもらうぞ、夢だし好き勝手する。
・・・夢じゃなかったら、こんな美女達とキス出来て幸せな気持ちのまま生きていける。
そんなことを考えていたら、扉が開き男が入ってきた。
「おお、ジン様起きられましたか」
おおふ、この人も様付けか。・・・てか夢じゃない?肩もめちゃくちゃ痛むし、夢じゃないのか!
ハハハ遂に綺麗な美女達とキスしたぜ。遂に俺の時代が来たな。
「ええ、先ほど。すみませんが様付けは止めてもらえませんか?貴方の方が年上ですし、気恥ずかしいので」
「そうですか、ではジンさんと呼ばせていただきます。この村の英雄に敬語無しには出来ません」
敬語も無しにしてもらおうとしたが、牽制された。
「アイナもエレナもジンさんが起きたのなら教えてくれれば良かったのに。おお、そうだった、この度は娘達とこの村を救ってくださってありがとうございました」
「いえ、成り行きでしたし、既に報酬も貰いましたので気にしないでください」
男はアイナとエレナを一目見て。
「・・・そうですか、父親として複雑ですが、ジンさんになら安心して任せられます。どうか末永くよろしくお願いします」
ん?あれ?なんだ?
「え?任せるとは?」
「二人を嫁に貰うって話では?二人もそのつもりのようですし・・・」
親父さんから視線を二人に向けると、照れて更に顔を赤くする二人が居た。
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俺は今、エルザード村に向かって走っている馬車に揺られている。
色々話が飛んで分からない?いやなに、色々あったのよ。
簡単に言うと。結婚は待ってもらい、まずはお友達からにしました。
濃厚なキスで俺の心はいっぱいいっぱいになってしまいました。
ヘタレとでもなんとでも言って。
・・・いきなりは無理だって。ハーレム云々言ってるけど、彼女すら出来たことない、ただの脳筋なバカだぞ?
女の子と話すのも叔父さんの道場に来ていた子と、リン姉くらいだぞ?そんな女の子とのコミュニケーション能力低い俺が、マリーちゃんやカーナちゃんとあんだけ喋ったのを、褒め称えてあげたいくらいだ。
むしろこれで、二人を嫁にもらえる奴居るの?居たら教えてくれ。弟子入りするから。
お友達からって断った時と、最後馬車で別れる時、二人は悲しそうな顔してたな・・・。
ごめん、本当にごめん。こんな時ヘタレない人がハーレムとか普通に作っていけるんだろうな・・・。
めちゃくちゃ未練たらたらだったりする。またこのクレント村に来て会いに行こう。必ず!!それまでに彼氏とか出来てたりしたら・・・誰か、誰か慰めてください。
これ以上考えるとネガティブに考えてしまうな。切り替えよう。次は、一緒に居たマリーちゃん達のこと。
マリーちゃんとカーナちゃんの二人の事を聞くと、二人は残ると言っていたらしいが、俺が直ぐには起きないかも知れなかたたから、暗くないうちに昨日馬車で送っていったそうだ。
時間の感覚がおかしくなっているが、実は眠っている間に半日以上経ってたらしい。なので俺も馬車を出してもらい、揺られながら帰ってるところだったりする。
最初に言ったエルザード村って言うのは辺境伯のレザードさんの親父さんがあの村を開拓したらしい。この国では開拓した人の家名がその村に付くらしく、それで家名のエルザード村になったらしい。馬車の御者をしてくれてる人に聞いた。最初この人も様付けだったけど、今はさん付けになっている。
この人良く知ってるな。
他には、俺が止めを差したあのゴブリンの素材は俺が貰った。最初っていうか結構断ったんだが、どうしてもと引かなかった。流石に村人に囲まれて皆に言われたら、断れませんでした。
そこ、ヘタレ言わない。
仕方がないので、有り難く受け取り、それまでに倒したゴブリンの魔石や骨や角等の素材が大量にあるので、アイテムボックスで解体して、目覚めた部屋にコソっと置いてきた。アイテムボックスで解体すると、肉とか血が一切付いていない綺麗な骨や角が採れるのが分かった。
アイテムボックスマジで便利だよな。
今頃あの部屋を開けて、びっくりしてるんじゃないか?
部屋の半分以上埋まったしメモも残してきたしな。
自然と笑みが溢れる。今の俺の顔、悪戯が成功した子供みたいな顔になっているかも知れない。かなり良さげな素材全部貰ったし、村の修繕にも金がかかるんだし、このくらいいいよな?
亡くなってた子達を埋葬して供養してからクレント村を出たんだけど。亡くなった子の親達を教えてもらい、救えなかったことを謝ったけど、逆に連れて帰ってきて、供養してくれたことに礼を言われたが、俺は何も言えなかった。
・・・次なんかないほうがいいけど、次は、全てを救って誰も悲しませない。そう心に誓った。
・・・そんなわけで色々あったのよ。
途中街道を寸断するように直径300メートルほどのクレーターがあり、多少迂回したりなんかもしたが、遠くに村が見えてきた時は安心した。あと少し、帰ったらリン姉に回復魔法使って貰って今日はもうゆっくりしよう。明日家でも探すかな。
村の門の前に馬車は停まる。
「ありがとうございました」
「いえこちらこそ、村を救ってくださりありがとうございました。いつでも来てください、美味しいもの用意してお待ちしてますよ」
「それは楽しみですね、近いうちにまた伺います。村の復興大変でしょうけど頑張ってください」
「はい、ありがとうございます。遅くなりましたが私、クレント村の村長のナッシュと言います。それでは」
「え?」
馬車は大きく回り向きを変え、クレント村に帰っていった。
マジか・・・お茶目な村長だ。
ある程度見送り、ギルドカードを見せて村に入る。
寄り道せずに宿屋に入る。
そこに宿屋の娘のマリーちゃんとうちの天使リン姉が受付の前で会話していた。
「ただいま」
「ジン君」
「ジンさん」
俺に気付いた二人に抱きつかれる。
「い、痛、痛いよ二人共」
「ごめんね」
「ご、ごめんなさい」
ちょっとシュンとした顔もまた可愛い。
「いや、気にしないで、それよりリン姉『ヒール』かけてもらえる?」
「分かった、じゃあ部屋行こっか」
「じゃあマリーちゃんまた後でね」
「私も行きます」
付いて来ようとするマリーちゃんを止める。見て気持ちいいものじゃないよと伝えるけど。付いて来た。
2階に上がり、部屋に入る。
クロがベッドで横になっていたが、俺の顔をみると起き上がって足元にくる。右手で頭を撫でてやる。相変わらず、ふわっふわだな。
「ただいまクロ。ちゃんとリン姉守ってくれてたみたいだな」
「わうっ」
「よしよし。ご褒美だ、全部食べていいぞ」
狩りの間に焼いた、クロ用の肉を皿に山盛りで盛りつけて床に置いてやる。クロは勢い良く食べ始めた。
これで、ゆっくり治療出来るぞと思ってリン姉を見るとクロの食べてる肉をガン見していたので、リン姉用のは別にあることをいい、後で出すと言って、先に治療してもらう。
「『クリーン』、『ヒール』、『エクスヒール』、『グランヒール』」
多少汚れていた体や服は綺麗になり、小さな傷は消え、痛みが一気に引いて、抉れてた肉は元に戻った。
魔法超便利だな。
「ありがとうリン姉」
「ううん。でもあんまり心配させないで。マリーちゃんに話を聞いて心臓止まるかと思ったよ」
右肩に頭を当ててくるリン姉の頭を撫でる。
このまま抱きしめてもいいかね?大人の階段登りかけの今の俺ならイケはず。
「(ジン君から女の子の匂いがする・・・マリーちゃんが言ってた子達かな?)」
「リン姉なんか言った?」
「んーん言ってないよ」
更に頭を擦りつけてくるリン姉。可愛いなあ。
「そうだこれ」
アイテムボックスから焼いた肉を取り出しテーブルに置く。
「食べよう、マリーちゃんも良かったら食べて」
「あの時のやつですね、いただきます」
「ジン君美味しそう」
「結構自信作だよ。じゃあいただきます」
「いただきます」
「いただきまーす」
熱々の肉を頬張りながら横で食べてる二人と一頭を見る。やっぱこう緩い感じの生活が堪らないよな。
・・・うん。早く家を買ってハーレムを作ろう。美女や美少女侍らせて、色んな服着てもらって、あんなことやこんなこと・・・ぐふふふ夢が広がるな・・・それにもうヘタレないからな!
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