表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/130

村と襲撃3

ジン以外の視点があります。

  男は娘達を逃がし、義理の兄と共に近くのゴブリン達を狩る。

  元々討伐者(ハンター)だった二人は危なげなく倒していく。


  途中、村で戦える者を引き連れ倒していったが、徐々に傷つき、1人、また1人と倒れ、2時間を過ぎた頃にはその場には男だけが立っていて、周囲をゴブリン達に囲まれていた。


  戦えない女、子供、老人はすぐに捕まった。

  一緒に戦っていた村人や義理の兄も倒れた後、捕まり拘束され、初めに捕まった者達と見える位置に連れて行かれた。

  男は何度も倒されながらも、立ち上がる。

  初めゴブリン達に囲まれていたが、途中から何処かに行った後、代わるように、2メートル近い身長に浅黒い肌、筋肉は異常に発達していて、腕や脚は丸太程の太さもあるゴブリンがやってきた。


  それから3桁に迫るほど倒されるが、その度に男は剣を地面に突き立てながら立ち上がる。


  男の意識は朦朧としていた。それでも立ち上がるのは、ここで自分が倒れてしまえば、次は拘束されている、義理の兄で腐れ縁の友人や村人に行くと理解していたからだ。


  娘達に隣村に助けを求める様に言ったが、隣村から救援が来るのはまだ先になる、という事も理解していた。それでも少しでも時間を稼ぐ為に何度も何度も、それこそ気が遠くなるほど殴られ、倒されても、立ち上がった。

  浅黒いゴブリンは、目の前の獲物がまだ立つことを見て、口元を歪ませながら、立ち上がる男の足を払って倒す。また立ち上がろうと剣を突き立てている男に向かって、棍棒を頭上に持ち上げ、男に向かって振り下ろした。


  棍棒が地面を砕き、めり込んだ時には、地面には血と泥にまみれた男の剣だけが突き刺さっていた。














 =============================


  全力で走りながら、傷だらけの男と、浅黒いゴブリンのやり取りを見て、棍棒を振り下ろすギリギリで間に入り、大剣で受け流し、男を担いでその場から離脱した。


  「はぁ、はぁ、危ねぇ・・・なんとか間に合った」

  傷付き倒れても、何度も立ち上がってたんだろう、血と泥に汚れ、全身に切り傷、打撲痕がある勇敢な男を少し離れたところで縛られている人達が居るところに運び、寝かせた。


  「この人をお願いします」

  「助けてくれてありがとう、こいつの事は任せてくれ」

  ナイフで、一人の縄を切りそのままその人にナイフを渡し、振り向き、浅黒い肌のゴブリンを視界に収める。

  「奴は強い。気をつけてくれ」

  「分かった。さあ、早く他の人の拘束を解いて、その人を早く治療してやってくれ」

  頷きながら応え、治療を急ぐ様に言う。

  「ああ、分かった」


  ゴブリンの方に向かって歩きながら言う。

  「よう、お前が村を襲ったゴブリンどもの親玉だな?」

  「ギャア?」

  「ああ、いい。人の言葉なんか理解出来ないだろ?俺もお前達の言葉なんて理解出来ないし、理解する気もない。これは俺の独り言で、勝手に喋るだけだから気にするなって言っても分からないか。魔物が生物かなんて分からないが、生きていく上で、色々な物を食べるのは分かるし、理解出来る。実際に俺だって食ってるしな。だけどな・・・自分の血や肉、糧となるその命に、感謝するのでもなく、ただ自分より弱い者をいたぶるだけいたぶって、楽しかったか?」


  浅黒いゴブリンと向き合い、1メートル手前で止まる。

  180センチくらいの俺より若干高い。2メートルくらいか。

  少し見上げながら言う。

  「その顔見ればわかるぜ。楽しかったって顔してるな。あの森のデカい小屋の中のことも、お前なんだろう?女の子達を捕らえて色々してたよな?抵抗もろくに出来ない子達をいたぶって、犯して、殺して。・・・子供が見たら100%トラウマになるわあんなもん。・・・そんな腐れ外道なてめえに良いこと教えてやる。あの小屋に閉じ込められてた可愛い子達と亡くなってた子達は、俺が全部奪ってやったぜ」

  最後自分に親指を指しながら言ってやった。

  理解はされないだろうってのは分かっていたが、俺の口は止まらなかった。


  最後『奪ってやったぜ』と言った後からゴブリンの顔は怒りに歪みこちらを睨み付けてくる。

  「お?なんだ?理解しちゃった?おいおいそんな怖い顔すんなよ。帰った後のお楽しみを奪って、目の前で男をいたぶって遊ぶのを邪魔した俺が憎くて、憎くて、しょうがないって感じか?以外と気が合うな俺達」


  おどけた感じで言ってみたが、もう我慢の限界だ。

  ヘラヘラした顔を止め、ゴブリンを睨み付ける。

  「・・・てめえだけが怒ってるわけじゃねぇんだよ。俺もあんなもの見せられて、(はらわた)煮えくりかえってんだよ!!!死んで詫びてこいや!!!」


  「おらぁぁぁぁ!!」

  「ギャア!!」

  俺の斬り上げる大剣とゴブリンの振り下ろす棍棒とがぶつかりせめぎ合う。

  ・・・こいつ俺と同じくらいの力があるな。


  「はぁぁぁぁ!!」

  棍棒を流し、今度は俺が上から振り下ろし、ゴブリンの肩を少しだけ斬った。

  「肩ごとたたっ斬るつもりだったんだ、避けんなよ」

  「グギァ」

  吐き気がするくらい気に入らない相手だけど、間違いなく強い。

  なんでこう強いやつは、それを生かさないかね。前の世界も、この異世界も・・・勿体無い。実に勿体無い。


  まあ、こうゆうのが居るから、罪悪感もなくやれるんだけどな。

  どうせなら俺の糧にして有効活用させてもらおう。俺と同じくらいの力なら、拳でお話しをしたいんだけど、あの棍棒が邪魔だな。


  まずはオーソドックスに相手の武器を使えなくするか。その後好きに戦えばいい。


  「おらぁぁぁ!!」

  大剣と棍棒を何度も叩きつけ合う。俺から振れば、相手は打ち返してくるし、相手が振れば、俺が合わせて振るって弾く。力はほぼ互角で、反応速度も同じくらいか?結構ステータス上がってるはずなんだけどな。

  技術は俺の方が上だろう。使ってる得物も。


  大剣を振り、棍棒の根元に当て受け流し、斬り返して根元を狙い少しずつ削る。


  二度、三度、四度と打ち合う。一撃一撃が致命傷になりそうだ。

  リン姉のように剣の扱いに慣れているわけではないので、相手の剣筋が予測と違ったときは、ヒヤッとしながら受け流したりした。

 

  何度も繰り返し、やがて棍棒の根元の一部をかなり削り、細くなったところを大剣を叩きつけて、へし折った。


  「硬い棍棒だったけど残念だったな」


  ゴブリンは一度折れた棍棒のグリップ部を捨て、先端を拾い、村人の方に向かって投げた。

  「くそっ!!」

  村人に向かって投げられた棍棒になんとか反応し、大剣で棍棒を弾く。

  「がっ!!」

  こんな威力の物が人に当たったらシャレにならないぞ。

  弾くことに集中してしまい、気付くとゴブリンは真横に居て、口元を歪ませながら俺に向かって拳を振り下ろすところだった。

  咄嗟に大剣で防御するが、大剣は真ん中から砕けた。更にゴブリンは回転し、後ろ回し蹴りを俺の胸に放つ。蹴りは防御出来ず、モロにくらい、吹き飛ばされてしまった。


  「ぐふ!!」


  一度地面をバウンドした後、家を二軒ほど突き破り、三軒目の壁にめり込み止まった。


  「がはっ」

  壁から抜け出し、よろよろと立ち上がり、口の中の血を地面に吐く。

  一撃でこれかよ。

  思ったよりダメージがデカいな。

  中心から砕けてしまった大剣をアイテムボックスに収納し、ゴブリンを見ると、ゆっくりと村人に向かい歩き始めていた。

  脚に力を込め、ゴブリンに向け駆け出し、ゴブリンの横っ面を全力で殴り飛ばした。


  ゴブリンは吹き飛んで地面を抉りながら、土煙を巻き上げながら50メートルくらい先で止まった。


  「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

  土煙で良く見えないが、ゴブリンの方を見ながら呼吸を整えていく。

  「や、やったのか?」

  助けた村人が数人集まってきた。

  「いや、まだだ。あんた達はまだ下がっていてくれ」

  「わ、分かった。あんた死ぬんじゃないぞ」

  急いで村人達を下がらせる。

  やがて土煙が消えると、ゴブリンがこちらを見て立っていた。

  無傷では無いが、ほとんどダメージはないように思える。


  「ギャギャギャギャ!!」

  ゴブリンは奇声を発しながら、苦しみ悶え始めた。

  嫌な予感がする。こんな予感は大抵当たるから嫌なんだ。


  ゴブリンの額、肘、膝から鋭利な角が生え、手足の爪は伸びた。

  浅黒い肌は赤黒い色に変わる。目付きは更に鋭くなり、こちらを睨み付けてくる。


  おいおい、さっきよりめちゃくちゃ強そうじゃないの。そんなかくし球要らないから。


  俺はゴブリンに向かって走り、攻撃の直前に飛び、拳を振るう。ゴブリンは立ったまま拳を突き出した。お互いの拳がぶつかり、俺は弾き飛ばされ、空中で1回転して着地した。

  大してゴブリンは、地面を少し凹ましたくらいで、拳を突き出した状態でいる。


  力は向こうが上になってしまった。


  ・・・力で勝てないなら技術で勝負するしかない。


  脚に力を込め、飛び出し、全力で顔を狙い上段蹴りをだす。

  ゴブリンは片手で、防御した。

  防御させた反対の脚で顎を蹴りあげる。

  「おらぁぁぁ!!」

  「ギャ!」


  顎を蹴られたゴブリンは後ずさる。

  これならいけるか?段々呼吸も良くなってきたし、攻撃は通じるしな。

  直ぐ様回し蹴りで顎を狙い蹴り飛ばそうとするが、ゴブリンは両腕で防御し、すぐに俺の脚を掴み地面に叩きつけてきた。

  「がはっ!!」

  受け身も取れず叩きつけられ、ハンマー投げの様に回転し、遠心力とゴブリンの力で、家が密集しているところに投げられる。


  家を五軒貫通しても勢いは止まらず、地面を抉りながら転がり、やっと止まったところで、すぐ近くの地面が爆発し、更に転がってしまった。

  「いってぇ・・・」

  立ち上がりながら体の土を払いながらゴブリンを見ると、掌をこちらに向けている。

  今の爆発もお前か?

  そう思っていると、掌に黒い炎が表れて、丸くなり、勢い良く飛んで来た。

  飛んできた黒い火球を避け、飛んで行った方を見ると、家に当たり爆発と共に家が吹き飛んだ。


  なんつー威力だよ。それにあいつ魔法使えるのかよ。・・・俺だって使えないのに・・・許せん。

  ゴブリンはまた掌に黒い炎を集め始め、ある程度大きくなると放ってきた。

  俺はアイテムボックスから石を取り出し火球に向かって全力で投げる。

  火球と石はぶつかりそこで爆発した。

  魔法も使ってくるなら、悠長にしてられないな・・・。あんな威力の魔法使われまくったら、村がなくなってしまう。

  はぁ・・・。自然にため息が出る。

  「報酬・・・笑顔だけってちょっとカッコ付けすぎたな・・・ほっぺにチューにしてもらえば良かった・・・」

  首に手首に足首、腕や足を回し、痛みを確認する。

  だいぶキツいな。痛みはかなりあって今すぐ麻酔でも打って痛みを止めて欲しい。

  「全くあの腐れ外道ゴブリンのせいで、俺の異世界イチャイチャハーレム生活が遠退いてる。可愛い女の子や綺麗なお姉さん達を見て鼻の下伸ばして、右往左往してるくらいが丁度いいんだけど。意外と俺って英雄願望でもあるのか?」

  まあ、こんなこと最初で最後かもしれないからな。あいつを倒して村の為に戦った英雄の1人に成りに行きますか。頑張ったら報酬にほっぺにチュー追加してもらうように言ってみよう。・・・そのくらいは言ってもいいよな?



  「行くぜ、腐れ外道」

  ゴブリンに向けて走る。何度も火球を飛ばしてくるが避けて、先ほどと同じように直前で飛び拳を突き出そうとする。

  ゴブリンも同じように拳を突き出してきたので、俺は拳を解き、ゴブリンの拳を両手で掴み、勢いが乗ったまま、膝を顔面に叩きつける。

  「ギャアァァ!!」

  勢い良く飛んで行こうとしているゴブリンの脚を掴み、10回転ほど勢いを付けて回し、上空に向け投げ飛ばす。

  近くの地面に突き刺さっている、血と泥で汚れた剣を引き抜き、腰を落として構える。

  「そんな距離じゃ聞こえないかも知れないが、言わせてもらうぜ」

  ゴブリンは上空で体勢を整えてゆっくりと落下を開始し始めた。

  「女の子は愛でるものであってなぶるものじゃねぇんだよ。ちょっと強いからってなんでもしていいと思うな!!」

  徐々に速度を上げ落下しながら爪を下に向けてくる。

  「てめえは俺に負けたんじゃねぇぞ。散々なぶって遊んでいたこの村の英雄達に負けたんだ。あの世でしっかり反省してこい!!!」


  ゴブリンの爪は肩を抉ってきたが、構わずそのまま剣を突き出し、ゴブリンの顔面に突き刺す。


  「これで終わりだぁぁぁぁぁ!!!」


  全身に力を込め剣を振り切り、2つに切り裂いた。


 

お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク登録していただき、ありがとうございます。

次話からまた緩い感じに戻ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ