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村と襲撃2

ジン以外の視点が少しだけあります。

 


  その日はいつもと変わらない日のはずだった。


  朝日が登り、起床する。朝食を取り、各々が自分の仕事に向かう。

  ある者は畑から採取した物を売り。またある者は早朝に起き、作った料理を売る。ある者は森に入り狩りをして稼ぎ、酒場で騒ごうと考えながらギルドに入っていく者も居た。

  男も村の警備の仕事に向かう途中だった。


  そんなごくごくありふれた、この村の日常の景色に対して、そぐわない異形の者が2体。多くの同胞を引き連れ、醜悪な顔で、口元を歪ませ、立っていた。2体は獲物を探すように辺りを見回し、ゆっくりと村の中心に向け歩き始める。村に災厄を振り撒きながら。



  いつもとは違う喧騒、特に悲鳴や怒号、泣き叫ぶ声を聞き、明らかにいつもと違う村の雰囲気に気付いた男は、村の様子を伺いその元凶を知る。

  すぐに男は家に走る。妻の忘れ形見である娘達にかき集めた貨幣を渡し、鎧や剣を持たせ、隣村に助けを求めるように言い。時間を稼ぐから二人で村を出るように伝える。

  隣に住む幼い頃からの腐れ縁で、愛した妻の兄と共に、愛すべき娘達を逃がす為に動く。家を一軒一軒確認して行く魔物どもに向かう途中、未だこちらを見て狼狽えていた娘達を一目見る。良く出来た娘達で、妻が亡くなって男手一つで育てたが、曲がることもなく、真っ直ぐでいい娘に育ってくれた。

  いずれ良き男と出会い恋に落ち、やがて結婚の挨拶にその男とくるだろう。その男にこれからも頼むなんていいながら、酒を飲んだりするものなんだろう。そんなことを思いながら。

  決して娘達に怒鳴るなんてこと、したことなかった男だったが、どうか無事に逃げてくれと願い、心のなかで謝りながら、怒鳴りつけ、亡き妻と可愛い娘達と暮らす、大切な思い出の詰まったこの村の為に、男は共に戦ってくれる幼なじみに礼を言い、長年愛用した剣を握りしめ駆け出した。


  二人の娘は、初めて父親に怒鳴られたが、それだけ緊急自体なのだということを理解する。魔物に向かっていく、父親の背中を見て目に涙を溜めながら、姉は妹の手を引き、隣村に助けを求めに、駆け出した。





=============================



  「リミッター解除!!」

  全力で走りながら、ステータスの制限を解除する。

  大剣を振り回し、3、4匹を同時に切り飛ばしながらゴブリンの群れに突っ込んでいく。

  「邪魔だぁぁぁぁぁ!」

  大剣、拳、脚をフルに使い、同時に何匹ものゴブリンを仕留めながら突き進む。

  被害を免れた奴が、横から、後ろから攻撃してくるが、それらもまとめて大剣を振り回し、剣圧で吹き飛ばす。

  大剣で連続で斬る。後ろに回った奴を蹴り。大剣の攻撃を免れて近距離にいるやつを殴る。

  「くっ」

  全方向を完璧にカバーするのは難しく、所々斬られ、血が滴る。多少痛むが無視し、ゴブリンを殲滅していく。全方向から攻撃を受けながら、先ほどよりゴブリンは固まっているので、一度に多くのゴブリンを巻き込み、斬り飛ばしていく。

  「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

  数が多いな。ステータスで能力が上がっても、同時に複数を相手に、剣や格闘のみで相手をするのは、中々骨が折れる。範囲魔法とかあれば余裕なんだろうな。横から襲ってくるゴブリンを斬り飛ばす。

  森の方をチラッと見るが森の方にはゴブリンは居ない。4人は大丈夫そうだな。

  さあ、まだ半分も減っていない。徐々に増えてるんじゃないかと錯覚しながら。大剣の横凪ぎで倒す数を稼ぎ、周りのゴブリンを見た後に、村の様子を見るが、村の形は若干記憶と違っていた。


  ・・・あれ?確かすぐ近くに門があるはずなんだけどない?

  横から振り下ろしてくる、ゴブリンの剣を受け流し、斬り飛ばす。

  くそ、ゆっくり考えさせろって!

  左右同時に襲いかかってくるゴブリンを一歩後ろに下がり剣を避け、すぐに切り刻み、血や肉片を周りのゴブリンに撒き散らし、目潰し代わりにし、更に周りを斬り飛ばす。


  「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・しんど・・・」

  30分ほど戦い続け、なんとか、倒しきった。

  流石にキツい。キツいけど、この違和感はなんだ?

  村が襲われているのに意外に冷静な二人。心配していない訳ではないが、むしろこっちを心配してくれてるようにも感じる。


  村の見た目も昨日見てるはずだから、見間違いではないはずだ。昨日見たのをすぐ忘れるほど頭悪くない・・・と信じてる。


  じゃあ村の見た目や門の位置が違って、村の出身の二人が冷静な理由って・・・。



  ・・・・・・ここ違う村なんじゃないか?



  え?ちょっと待ってよ。昨日さくさく帰れたのは、リン姉が居たし、魔の森から迷わずに帰れたのは、たまたま運が良かっただけで、今日は道を間違って、違う村の方面に出てしまったんだとしたら、俺めちゃくちゃ恥ずかしいやつじゃん。

  あたかも場所分かってる感じで進んできて、実際は場所間違えてるって・・・。俺めちゃくちゃ恥ずかしいやつやん。

  ・・・いやいや待て。むしろ間違えたからこそ、この村の被害を抑えられるってポジティブに考えよう。

  後で二人は分かってたか、こっそり聞いてみようかな。


  ・・・止めとこう。墓穴を掘りかねん。


  二人を早く休ませてあげたくて、近い村に来た・・・これだ!なんか言われたら、この理由で誤魔化そう。

  と、とりあえず、村の周りは倒しきったから四人を迎えに行くか、四人を早く休ませてあげよう。


  300匹を超えるゴブリンを倒しきり、四人のとこに戻る。戦闘中だったのであまり気にならなかったが、体中切り傷だらけになっていて、かなり痛い。四人を休ませたら俺も休みたい。


  「ジンさん大丈夫ですか?」

  「なんとかね」

  「傷だらけじゃないですか」

  マリーちゃんとカーナちゃんはバックから液体を取り出し、傷口にかけてくる。

  「ぐぉぉぉ、痛、し、しみる」

  「我慢してください、ポーションなんですぐに傷が塞がりますから」

  「ご、ごめんなさい。でもマリーちゃんが言ってる様にすぐに傷が塞がりますから我慢してください」


  ポーションのお陰で傷は塞がる。とてもしみたがね。大事な事なのでもう一度言うとてもしみた。


  そんなやり取りの俺達を助けた二人が見ていて、俺と目が合うと話しかけてきた。

  「助けていただきありがとうございます」

  「ありがとうございます」

  「成り行きみたいなもんだから気にしないでいい。それより二人はどうして、ゴブリンに捕まって居たの?」

  「私達は姉妹で、あそこの村に住んでいまして、今日の朝、ゴブリンの大群に襲われて・・・父と叔父は私達を逃がす為に・・・。村から逃げ延びた私達は、隣の村に助けを求めて、街道を進んでたんですが、そこで待ち伏せをしていたゴブリン達に捕まり、あの村に連れて行かれました・・・。お願いします。どんなことでもしますから私達の村を、父と叔父を助けてください」

  「・・・お願いします。どうか、どうか」


  悲痛な顔で頭を下げる姉妹を見る。

  目には涙を溜め必死で泣くのを堪えている。


  ああ、俺の異世界ハーレム生活にそんな顔は要らないんだよ。

  微笑んだり、照れたり、恥ずかしがったり、喜んだりした笑顔とかじゃないと見ていて面白くない。・・・いや、エッチな悪戯とかして、ちょっと怒った顔もいいと思う。そんな顔が見たい

 

  俺って結構我が儘なんだ。異世界まで来て、見たくもない女の子の悲痛な顔見せられて、頭に血が昇っていくのがわかる。

  元凶が居る村を睨み付け立ち上がる。


  「なあ、なんでもやるって言ったな?」

  「は、はい!」

  「なら、親父さん達助けれたらさ、笑ってくれない?君たちみたいな可愛い子がそんな顔でいるのが、我慢出来ないんだ。だから四人共、その可愛い顔で笑ってる姿を見せてくれ」

  四人に軽く微笑みながら言う。・・・ちゃっかり四人に言ったけど、いいよね?可愛い子の笑顔が増えるから。


  「四人はここで隠れて待っててくれ。俺がすぐに、片付けてくるから」


  拳を握りしめ、もう一度村に向け駆け出す。この子達の日常取り戻しに行くか。報酬も欲しいしな。


お読みいただきありがとうございます。

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