キノコと蜘蛛
一ヶ月以上も更新出来ずに申し訳ありません。
仕事とプライベートが忙しく、執筆出来ませんでした。少しずつは書いていきますので、これからもよろしくお願いいたします。
「ふんっふんっふん」
もらった車を走らせている。地面から伝わる振動もハンドルとアクセルペダルの操作性も、一つ一つがもの凄く楽しくて、思わず鼻歌まで出てしまう。前の世界では金が無くて買えなかったけど、バイクに続いて車も乗れるのは幸せだ。流石のリン姉もマニュアルを作るのは難しかったらしく、前進と後進の二つしかなく、クラッチ操作とかないが、オートマと思えば楽しいから問題ない。
しかも、しかもよ。助手席や後部座席には美女、美少女が乗っているんですよ。これはもうドライブデートと言っても過言では無いんじゃないのか?いや、いいよね?少なくとも俺はそう思っている。助手席や後部座席がキャッキャウフフと話しているのを聞きながら、時々会話に交ざりながら馬車並みに抑えた速度で街道を走っていく。
この車、最高速は前の世界の車より出るらしいが、敢えて抑えて走っている。道が前の世界みたいに整地されていないので、アホみたいに早く走ると跳ねたりして、頭ぶつけたり、酔ったり、最悪事故ったりと危険なので、法定速度はないから他の馬車の速度を参考に抑えています。―――決して美女、美少女達と一緒の空間に居たいからとかそんな事はない……とは言いきれないが、まあバレなければ大丈夫だよね?バレたらバレたで「道が悪いからね」と言い張って誤魔化そう。いや、もう、独り言の様に「あ~道が悪いな~危ないし、速度は速度は落としておこうかな~」とか言っとけばバレんやろ。
クレント村から西に走り続けて三時間が経ち、昼食を兼ねて一度休憩する為に街道から外れたところに車を停めた。降りてぐっと伸びをする。横目で一緒に伸びをしてるリン姉達をチラ見する。ぽよんと揺れる大小様々なお胸様達が、俺の心を揺さぶる。その一瞬に全神経を集中して、網膜に焼き付ける。―――危ない、チラ見のつもりがガッツリ見てしまったのでバレない内に視線を反らして、竃を取り出し、その上に作り置きしたシチューの鍋を置く。鍋の中からシチューのいい香りがする。昼はこれとパンだな。
食べ終わったら目の前の森に入ってみるか、もしかしたらキノコとか山菜があるかもしれないし。
シチューとパンを食べ終え空になった鍋を回収して、リン姉にちょっと森の中入ってくることを伝えてから森の中に入っていく。
森の中は鬱蒼と木々が生えているが、魔の森の様な感じはせず、むしろ実家の裏手の山みたいで、親近感が湧く。
良く裏手の山で、キノコや山菜採りに行っていたから、キノコのバター炒めとか山菜の天ぷらとか食べたい。直ぐにキノコを発見するが、――――明らかに毒々しい。
真っ赤な傘に黄色の斑点が、警戒心を跳ね上げる。
舐めてた、よくよく考えれば同じキノコがあるとは限らないのに能天気にキノコ狩りに来てしまった。明らかに毒キノコだろうけど、もしかしたらがあるから一応回収したい。回収したいがキノコには触るだけで爛れるものあるらしいから、素手で採るのは不味い。どうしたものか………。
あれから暫くして、要らない布で掴めばいいじゃないと閃いてから、二種類のキノコを回収していく。そして、アイテムボックスに入れると名前が出た、それが………〈猛毒ダケ〉〈偽猛毒ダケ〉の二つだった。
―――いや、アウトでしょうコレ。猛毒だけ?食えるか!んなもん!
もう一つが〈偽猛毒ダケ〉?これは………〈猛毒ダケ〉より若干だが色が薄く、黄色の斑点が少ない。名前通り猛毒じゃないからいけるのか?毒がないから見た目だけ似せてる感じか?キノコだけに。
――――ごめん。
てか、ほとんどが〈猛毒ダケ〉なんだけど。〈偽猛毒ダケ〉なんて二本しかないんだけど………。
回りに山菜もないし、戻って本当に食べれるか聞こう。
その前に森の奥をジッと見る。ついでに索敵スキルも使用してずっとこっちを観察するように見てくる視線の主を探すが、見つからない。敵意は感じられないから、本当に観察してるだけか?それとも油断させといてとかじゃないよな?敵意があれば『龍擊』でも放って炙り出すけど、流石に敵意の何のを攻撃するのは躊躇われる。気にはなるが見つからないのはしょうがない、一度戻ろう。そう思い、森の外に行こう振り向くと、そいつは木の枝から垂れ下がってきた。
森を出て皆が寛いでる所に戻った。
「お帰り~どうだった?」
「ただいま、まあ、ボチボチかな~これ食べれる?」
そう言いながら箱いっぱいな〈猛毒ダケ〉と二本だけ入った〈偽猛毒ダケ〉を取り出してリン姉に見せる。
「……こっちは無理かな~でも解毒薬の原料になるからもらっていい?」
「いいよ、じゃあこっちは?」
「ありがとう、こっちは食べれるよ」
「分かった、ありがとう」
「いいえ~」
〈猛毒ダケ〉は案の定食べれないらしいが解毒薬の原料になるらしいから持って帰って良かったな、それにこの〈偽猛毒ダケ〉は食べれるらしいから、美味しくいただこう。
「さっきからすっごく気になっているんだけど、その子は?」
「さっき森でゲットした、ミドーだよ」
「へ~あんまり怖い顔してないね」
「だよね~蜘蛛だからもっと怖い見た目かと思ったんだけど、ぬいぐるみみたいで可愛いでしょ?」
「そうだね~よろしくね」
体長三十センチほどの円らな瞳のミドーを持ち上げる。
ミドーはリン姉に返事をする様に黄緑色に黒色の模様の入った前足を挙げた。
話を聞いたユッコ達もやってきてそれぞれ挨拶していき、ぬいぐるみの様に抱かれていくミドーを羨まし気に見つめた後、車に乗り込み、アクセルを踏みゆっくりと加速させて、街道を走らせて行った。
ルームミラーでユッコの膝の上で寛ぐミドーを度々見ながら。
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