食費と夢
遅くなって申し訳ありません。
夕食を食べ終わり、リビングでクロをソファー替わりにして寛ぐ。
デカい一軒家でこれまたデカい犬(?)を飼って、多数の美女と住むなんて、どこぞのIT系の社長みたいじゃない?………イメージでしかないけどね。
もしかしたら人生の運という運を使い潰していってるんじゃないかと不安になる。毛触りのいいクロの毛を触りながら、横のソファーに座るリン姉とティナを見ながら思う今日この頃。
不安と言えば、今日夕食で使ったコメが後少ししかない事も不安の一つだ。
やれ、ハーレムだ狩りだと言ってはいるが、その根元で大事なのは食べる事では無いだろうか。狩りは素材や肉を売って金を稼ぐ意味合いも無い訳では無いが、一番は自分で狩らずに買うと食費がトンデモナイ事になる。それはもう本当に。
元々食いしん坊キャラはリン姉だけだったのに、クロとメイとキーの腹ペコモンスターズが加わり、他の子達も今まで以上に食べる様になってきた。勿論作ったものを美味しいと言っていっぱい食べてくれるのは嬉しいのだが。量が量だけに買うより狩った方が断然いいだろう。
ちょっと前まで気にしなかったのだが、最近の肉の食費はとてつもないほど多い。多い時は五日でホーンバッファロー一体が無くなった事もある。通常の牛は体重700キログラムくらいから内臓を含めて精肉出来る量は約四割ほどの280キログラムでしかない。
一食500グラム食べたとしても一日1500グラム。それを十人で食べたとしても一日15キロ。それだけ聞くと普通に生活していたらとんでもない量に聞こえるが、実際はそこまで消費する家庭はないだろう、あくまで仮定の話だから……。
その仮定の一日15キロ消費するとして、280キロ消費するのには十八日ほどかかる。もうこの時点でおかしいのは分かるだろう。更に忘れてはいけないのが、ここは異世界で食べている牛もただの牛ではなくホーンバッファローと言う魔物だ。牛よりも大きく、体重は2000キログラムにもなる。名前の通り立派な角や固く太い骨があるのでかなり精肉出来る量は減るがそれでも1000キログラムは精肉することが出来る。
さて、先程俺が五日で無くなると言った話はこの異世界の牛、ホーンバッファロー(1000キログラム)であり、その異常さが分かってもらえるだろう。一日200キログラムも消費していたら破産してしまう。
そんな食材の消費が激しい我が家で主食となるコメが無いのは非常にマズイ。たまにパンでもいいが、もう完全にコメがない生活は耐えられない。
明日あたりティナにコメ買ってた村聞いて買いに行こうかな。そんな事を考えながら徐々に瞼が閉じていった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
息を荒げながら目の前の相手を見る。
白いコートを着て、二振りの刀を構え、こちらをじっと見つめてくる。その目に光りは無く、いつも見ていて、癒されていた筈の顔は生気が無い。白いオーラと青いオーラが激しく交わりながら溢れだしていて、雰囲気とのギャップが激しい。
息を整えながら観察していると、いきなり刀を振り上げてそのまま振り下ろした。その瞬間空気が歪み斬擊が超高速で迫ってくる。それをサイドステップで薄皮一枚で避ける。相手が刀を振るだけで、衝撃波が飛んできて、その衝撃波は地を削り、建物を切り飛ばしていく。そんな理不尽過ぎる攻撃を避けた後も次々と斬擊がくる。フェイントを織り交ぜて、先程の様に避けれる様に単発で放った後に回避後の僅かな隙を突く様に連続で放ったりしてくる。しかも連続だからと威力が弱まる事はなく、一撃一撃が致命傷になり得るという凶悪さだ。
そんな斬擊を避けつつ距離を詰めると、今度は魔法を放ってくるから始末に負えない。油断したつもりはなかったが、後少しのところで『マナブラスター』を撃たれ仕留められそうになった。
「反則だろうが!!そっちは好きなだけ攻撃してきて、こっちは下手に攻撃したら負けだなんて……って危ねぇ…なぁ!!」
愚痴を溢しながら、シューティングゲームの様に避けていたら遂に斬擊と『マナボール』を織り交ぜてきて、避ける事が出来ない程の斬擊と野球ボールくらいの多きさの『マナボール』が壁の様に向かってくるのを、右と左の拳を連続で放って打ち消していく。
一息つく暇も無く、再度斬擊の嵐が飛んできて、もう避けきれないと判断した俺は、足を止めて、斬擊を迎え撃つ。
チートの様なステータスにチートの様な装備を着けた今の俺は斬擊を難なく吹き飛ばしていった。
その後も斬擊と『マナボール』の嵐を避けたり、消し飛ばしたりしながら徐々に相手に近付いて行く。
その光景に向き合っている一人は一切表情が変わらずただ淡々と刀を振るいつつ、魔法を放ってくるがその後ろにいた二人は違った様で慌てふためきながら、早く倒せと命令していた。
「早くあいつを倒せ!!お前の大好きな弟がどうなってもいいのか!!」
「………!?」
その言葉を聞いた瞬間。斬擊と『マナボール』が今までの倍になり、近付いていた俺は打ち消すことにいっぱいいっぱいになり、動けなくなる。それを見た二人はニヤリと醜悪な笑みを見せ、俺を囲む様に移動し、こちらに手のひらを向けて、魔力を高めていき、そして炎の砲撃と闇の砲撃が同時に放たれたと同時に『マナブラスター』放たれた。敵に回すとここまで厄介な人は居ないだろうな。
「クソッタレがぁぁ!!!!」
三方向から向かってくる、街一つ簡単に消し飛びそうな攻撃を見て、炎と闇の砲撃より『マナブラスター』を驚異だと感じ、腕をクロスさせガードした瞬間。三方向からの砲撃にのまれていった。
砲撃が止み、辺り一面地面が溶けてマグマの様になっていた。その一部にマグマになっていないところで倒れこみながら閉じそうな瞼をなんとか開けて三人を睨み付けていた。
「あれを喰らってまだ生きてんのかよ」
「人の癖に異常よね、ねぇさっさと始末した方がいいんじゃない?」
「そうだな、おい!!さっさとこいつを殺れ!!」
「貴方も酷い人ね、姉と弟で殺し合わせるなんて………」
「こいつらには何度も邪魔されたからな。それに面白いだろ?弟を守る為に弟を殺す姉と姉を守る為に姉に殺される弟なんてよ」
「そうね、私達がやっても良かったけど、そっちの方がいいわね」
そんな会話を聞きながら、ゆっくりとした歩調で近付いてくる人物を見る。
そして一言。
「守れなくてごめんな、リン」
その後俺の意識は無くなった。
「ッ!?………はぁ…はぁ…なんだ夢か………」
目を覚まし見回すとそこは何時もの自室のベッドの上だった。
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