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二つの村とスタンピード4

お待たせしました。

 

  俺の目の前には守るべき村の住人やエルザード村を防衛していたはずの我が家の美人メイド達やダリウス達のパーティーに、名前が分からないがダリウス達とは別のパーティーが居た。

  それぞれ武器を持ち決死の表情で向かってくる魔物を見ている。


  「親父さんこれは一体?」

  「村の恩人だけを戦わせて俺達だけ安全なところに籠ってるなんて出来るわけないだろう?なあ、お前達!!」

  「ああ!!」

  「そうだぜ、ジンさん!!」


  武器を掲げ鼓舞するように村人達が答える。


  「皆……それにアイナ達まで」

  「この村は私達の村です。私達の村を守るのに理由は要りますか?私達の村を守ってくれてるジンさんに恩を返すのに理由は要りますか?」

  「そうだよ、それに僕達も少しは役に立つよ?」

  「アイナ、エレナ…」

  「それに私達も居ますよ」

  「そうだよジン君お姉さん達を信じて」

  「マリア、ティナ…」

  「ジンさん俺達が来たからにはもう大丈夫だ!」

  「お、おう…よろしく、な」


  アイナにエレナ、マリアにティナと来てロザリーやミミィかと思ったらノランと同じ村の名前が分からない男が物凄いドヤ顔で言ってきた。

  ここは美女達に鼓舞されてもう一度立ち上がる場面じゃねぇの?

  せめて、せめてダリウスとかが喋れよ。返答に困るわ。

  それにこの微妙な空気どうすんの?ロザリーとミミィもポカンってなってるし、さっきまで死ぬなら一体でも巻き添えにしてやる!みたいな感じの雰囲気だったのに……。いや?逆に良かったのか?緊張して体が固くなるよりはましか、うん。そう思う事にする。


  どうせ一人じゃ厳しかったし、この頼もしい援軍の力を借してもらおう。


  「皆、力貸してくれ。五分でいい時間を稼いで欲しい、頼む!」


  そう言って頭を下げる。人の命がかかっている時はちっちゃいプライドはドブにでも捨てる。一度意地を張ってスタンピードに真っ向からぶつかったが、結果はほぼ無限に出て来て倒してもキリがなくじり貧。もうこれ以上は人の命に関わる。だからもう手段は選んでられない。


  「お前達!!気合い入れろ!!ジンさんからのお願いだ抜かるんじゃねぇ!!」

  「「「「「おお!!!!」」」」」


  親父さんの掛け声の後、全員が返事をして、剣などの近接武器を持った人は魔物に向かって走り、杖や弓などの遠距離攻撃を行うものは横に広がり、攻撃を開始した。

  その光景を見て気を練ろうとしたらティナに手を握られそのままポーションを手渡された。


  「リンさんからの差し入れ」

  「ありがとうティナ」


  ティナに礼を言い早速ポーションを呷る。疲れきって重くなった体は徐々に軽くなり数秒で全快した。

  そして、そのまま皆の戦いを見ながら全力で気を練り始める。


  まずクレント村の住人達だが、一人一人がそれなりの使い手の様に剣を振るい魔物を屠っていく。その中でも親父さんは飛び抜けていて、村人が一体を倒す間に五体以上は倒している。親父さんと村人で技量やレベルがかなり違う事が分かる。それにしても皆同じ剣を使っているが、作ってるとこが同じなんだろうか?


  次にダリウス達と名前の分からないパーティーだ。

  ダリウスは刀を使って流れる様に斬っていて、顔も刀を使う姿も格好が良かった。たまに刀に電気が走り、高速で振っていた。あの電気は魔法?刀と電気を使うのなんか主人公っぽくて憧れる。しかもルーベンスやミミーだけじゃなく名前が分からないパーティーにも指示を出しながら戦う姿は頼れるリーダーって感じだ。


  ダリウスの弟分のルーベンスは大盾で魔物の攻撃を受け、ハルバートで魔物を一刀両断して、危なげなく魔物を屠っていた。ダリウスのパーティーの紅一点のミミーはちょくちょくダリウスを見て、皆を指示したり魔物を屠っていく姿に頬を赤らめていて、鈍感系ではない俺は気付いたね。ミミーはダリウスにホの字だと。そんなミミーもダリウスやルーベンスの援護をしつつ魔物の群れに向かって魔法を飛ばして油断をしている様ではないので特に注意もしない。"誰かの為に"って方が強くなると思うから、頑張って欲しい。


  名前の分からない男のパーティーは全員が近接武器を持っていてロングソードの剣士三人に大剣が一人、槍とバックラーを持ったのが一人の五人組で、全員近接で大丈夫か?と自分のことは棚に上げて見ていると、ロングソードの男とバスターブレードのガッチリとした体型の男が魔物の攻撃を受けつつ、横から槍を持った子とロングソードを持った子が同時に攻めて、少し離れたところからロングソードを持った一人だけグラマラスな体型の子が魔法で『ファイヤーボール』を複数放ち一気に殲滅していってた。

  他の四人も大なり小なり魔法を使う様で、全員剣士じゃ無くて、全員魔法剣士(一人槍だけど)だった様だ。………ズルい。魔法剣士とか格好良すぎだ。


  さて、ここまではまだ想定の範囲と言ったところだった。

  所謂、THE・ファンタジーって感じの戦闘だ。俺がチートな魔法剣士になったら是非ともああいう感じのを何卒よろしくお願いいたします。

  これで将来ああいう感じの戦闘が出来るだろう。

  問題はうちの美人メイド達だ。

  何故か全員魔導銃を持ち、ファンタジー何それ美味しいの?って感じだ。いや、まあ、いいんだけどね。

  アイナはアサルトライフルっぽい魔導銃、エレナはサブマシンガンっぽい魔導銃を持ち、それぞれ両端を集中的に狙い、魔物の群れが拡がらない様にしていた。

  マリアはショットガンを持ち、至近距離から放ち多くの魔物を巻き込んで倒し、ティナはスナイパーライフルを持ち、前に出ているマリアの死角になる方を集中的に倒しフォローしていった。

  ロザリーとミミィは……あれはアカンやつや。

  ロザリーは大型のスナイパーライフルを軽々と構え、密集してるとこに向けて引き金を引いた。

  砲身からビームが放たれ、多くの敵を一瞬で屠っていった。

  そんな一撃に度肝を抜かれたが、まだ終わっていなかった。

  ロザリーの横に居た小柄(一部分は大柄)なミミィが不釣り合いなほど巨大なガトリングガンを構えていた。そのガトリングガンのシリンダーは既に高速で回転していて、次の瞬間には、無数の弾丸が放たれ、魔物を蹂躙していった。

  二人共さっきのあの会話のカットインから一切喋ってないし、無表情で恐い。美人でも無表情で目が笑ってなかったら恐いんだな。と、勉強になった。


  ―――知りたくは無かったが。


  てか、この六人が居れば大丈夫じゃね?五分、時間作ってとかじゃなくて良かったんじゃね?いや、きっとエネルギーか魔力が切れるだろうから大丈夫。大丈夫だ。


  そう思いながら限界以上に気を練っていく。いや、もう既に限界は超えているんだけど、ショッキングな光景を見てそれどころでは無かった。

  いつもの限界を軽々超えるとは、自分でもかなりショッキングな出来事だったのだろう。


  四分近く練りに練って、今にも暴発して溢れそうになる気を右腕に注ぎ込んでいく。既に『龍神爆撃』を放てるほどの気を注ぎ込んだが、それじゃあまだ足りない。あれでは良くてこの十分の一も倒せればいい方だろう。

  ―――ならその十倍は注ぎ込む。

  足を開き、腰を落としつつ腰を捻り、握った右の拳を包む様に左手を添える。右腕は使い物に成らなくなるだろうが、多分リン姉の回復魔法で治るだろうし、最悪治らなくてもいい。それで皆を守れるならそれでも構わない。そもそもチートも何も無い俺が何も犠牲にせずに皆を守ろうって考えが甘い。


  「全員下がれ!!」


  そう叫ぶ俺の声を聞いた皆は一斉に俺後ろに移動する。

  全員が後ろに下がり、ティナが結界の様なものを張った瞬間、拳を振り抜きながら全ての気を解き放った。


  「『龍神滅殺波(りゅうじんめっさつは)』!!!!」


  我ながら中二な名前を叫びながら、限界以上に練った赤色の気は目の前に居た全ての魔物を飲み込んでいった。





  ジンが放った赤色の目映い光は十秒ほどで消え、目が慣れ始めた村人達の目に映ったのは水平線の向こうまで真っ平らになり何も無くなった魔の森と右腕が肩から無くなり、その場に倒れたジンの姿だけだった。

 

 

 

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