表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

243/243

暁の星 65

 フィラールのところを辞去した俺はシルヴィと合流する。

 勇者の動向について聞きたかったからだ。


「勇者? しばらくは気にしなくてもいいんじゃない?」


「その心は?」


「勇者がデラシネを見つけるのは難しいって話。あんただって同じような能力を手に入れたんだからわかるでしょ?」


「いや、俺の感覚は一回置いておいて、勇者の記憶ごと手に入れたシルヴィの判断を聞こうかなと」


「記憶って言うけど、まるまる全部わかるわけじゃないからね」


 その辺の話は以前にも聞いたことがある。

 なんというか魂喰らいで手に入れた知識とかって、いわば外付けの記憶装置みたいな感じで、意識してアクセスしないと見られないのだそうだ。

 それも見たいと思ったもの以外はほとんど見えないので、記憶のほとんどは活用されていない。


 そりゃそうでないとシルヴィという人格が残らないことになっちゃうもんな。


「勇者が転移できるのは行ったことある場所か、行ける正当な理由がある場所に限られてる。正当な理由って言ったけど理屈が通るならわりとどうにでもなるわ。例えば誰かの記憶を頼りにとか、道具の痕跡を頼りにとか、勇者が私たちの誰かになにか目標にできるようなものを仕込んででもいない限り、デラシネに直接転移してくることは無理よ」


「なるほど。文脈が破綻するようなことはできないわけか」


 そういうことであればデラシネはしばらく安泰だと言える。

 勇者は帝城にこそ転移できるが、そこからデラシネは遥か遠くだ。


「逆に勇者を強襲できるんじゃないか?」


 シルヴィは勇者に記憶にアクセスできる。

 その拠点への転移だってできるはずだ。


「できるかどうかで言えばできるけれど、それをして仕留め損ねたら、勇者が本腰を入れて攻めてくるわよ。せめて向こうが攻めてくるなら夜襲するとか、その程度にしておいたほうがいいんじゃない?」


「倫理的に考えたらそうなんだろうけど、勇者の影に怯えつつ暮らすというのもな」


「リスクとリターンのバランスを考えなさいよ。私とアンリの二人がかりで不意打ちしても勝てるかどうか怪しいわよ。不意打ちするなら、確実に勝てるだけの根拠を手に入れておきたいわ」


「それな。ボーエンシィ機関を勇者にぶつけられないかも考えたけど、多分勇者が一蹴して終わりだよな」


「たぶんね。脅威とすら認識されていないみたいだったし」


「俺と相性が悪いだけか……」


 対魔法使いメタだからなあ。あいつら。


「じゃあ勇者は無視か。次は王や大統領の暗殺になるな。クララやバルサン伯が敵か……」


「それも今の私たちからしたら大した問題では無いでしょ。王以外の人々をどう扱うのかのほうが問題よ」


「確かにな」


 勇者戦で俺たちが手に入れた世界の外側からの攻撃を防げる者は勇者くらいのものだろう。バルサン伯だろうが、クララだろうが、倒すのは容易い。


「それぞれの国の国民については俺たちが手を出すのもおかしな話じゃないか?」


「そうなんだけどね。リディアーヌ様なら放置はしておかないと思う」


「シルヴィはシミュレートできないのか? リディアーヌの思考もトレースできるだろ?」


「私の中にあるのは随分昔のリディアーヌ様だから。今のリディアーヌ様がどう考えるかはまた別の話よ」


「そうか」


 あれはもう何年も前の話だもんな。

 リディアーヌ自身が、今回の連合国訪問で考えを変えたみたいだし、シルヴィにトレースしろというのも無理な話か。


「やっぱりリディアーヌとしっかり話さないといけないな。文明の進歩を捨てることが本当に良いことだとはどうしても思えないんだよ」


「アンリの危惧するところはわかるわよ。他国が悪意を以て侵攻してきたときに、後進国では太刀打ちできないってことでしょ」


「それで民族浄化でもされたら目も当てられないからな」


「でもリディアーヌ様の言いたいこともわかるわ。他国と開発競争を続けるってことはそれだけ国民に負荷をかけ続けるってことでしょ。常にトップに立ち続ける、あるいはそれを追いかけ続けるって、とても大変なんじゃないかしら?」


「そこまでシビアにやらなくても大丈夫だとは思うんだが……」


「でもそんな甘いこと言ってたら、シビアにやってる国に勝てないじゃないの」


「それもそうか」


 前世で社会経験がないから、社会的な成長圧力というのがよくわからないんだよな。

 でもどの会社も利益を求めて競争し続けていたのは間違いない。

 株式会社ともなれば、常に前年を超える利益を求められることが当たり前で、それって本当に成長の余地が残ってるの? とか思ってしまうんだよな。

 ネズミ講みたいに、どこかで限界を迎えて崩壊してしまうのでは?


「中途半端にやるという手もあるけど、それならいっそ国民の幸福感に全振りしたほうがいいとリディアーヌ様は思っていると私は想像するのよね」


「中途半端も悪くないと思うんだけどな」


 先駆者が苦労して作り上げた道を楽々進んで、周回遅れで付いていくというやり方は有効だと思うんだよ。

 自分たちは後進国だと主張できる点も何気に強い。

 先進国から経済的な恩恵を受けられる可能性が高まるからだ。


 ただ後進国であることが国民に与える良くない影響も確かにあるだろう。


 それならいっそ伝統を守り続ける保護国を目指すというのはわからなくはないのだけど。


「結局、確実に保護されるという保証がどこにもないのがなあ」


「結局、自分の処遇を自分で決めたければ一番先頭に立つしかないのよね」


「そういうことになるな。何かの権利を求めるには何かを犠牲にしなければいけない。例えば連合国に保護を求めるのなら、国土の割譲や、資源の譲渡は絶対に必要だ。アレクサンドラが認めないだろうけどな」


 それにリディアーヌも連合国との関係を断つ方針だ。


 あれもよくわからないんだよな。

 国交を断つまでのことだろうか。


「でもまあ、ここは帝国よ。アレクサンドラの決定次第じゃない? 私たちは意見を言うことは許されているけれど、決定権はあくまでアレクサンドラにあるわ。どうしても意見が異なるというのなら、アレクサンドラとも袂を分かつことになるわよ」


「それはしない。少なくとも俺は最後までアレクサンドラに付き合う」


「アレクサンドラが聞いたら喜びそうな言葉ね」


「そうだな」


 彼女は親から、国から、俺から裏切られて傷ついている。

 俺は加害者として、誰かを害しても彼女の味方であると誓った。

 だから俺の家族に害が及ばない限りは、彼女の味方であり続けるだろう。

 たとえ彼女の決定が不本意なものであったとしても。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ