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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

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暁の星 62

 リディアーヌの思想は受け入れがたくて、俺には考える時間が必要だった。


 市民にとってはそれこそが不要、ということなのかもしれない。


 だけど俺はリディアーヌの配偶者だ。

 彼女の決定を彼女の責任だけにはできない。

 だから俺は考えなければならない。


 生きる上で知識が必要なのかどうか。

 いや、違うな。

 生きるだけなら知識は必要ない。

 リディアーヌが問うているのは、幸せになるために知識が必要かどうかだ。


 知識は生活を豊かにする。

 より良い人生への道しるべだ。


 前世ではそう教えられてきたし、それを信じていた。

 知識の無い者は搾取されるのが当たり前だ。

 自分の人生を守るために知識が必要だった。


 だけどそう思っていた俺は自分の人生を守れていたか?

 俺は幸せだっただろうか?


 否だ。


 だけどそれだけを参考に決めつけることはできない。


 正しい決断には正しい情報が必要で、その正しい情報というのは人から受け取るものではない。

 外から与えられる情報というのは、発信者の意図が反映されるからだ。


 情報というのは何らかの思惑があって発信されていると思わなければならない。

 だから一つの物事であっても必ず多角的に情報を集めて、その差異を検証して、思惑を読み取って――、でも事実は本当を目にしなければわからないし、なんならその本当すら自分の思惑というフィルターでねじ曲がる。


 考えるということのなんと難しいことだろう。


 確かに放棄したくなるし、俺がこうやってあれこれ考えていられるのは、前世ではニートだったからで、今世では貴族のような扱いを受けているからだ。

 日々の生活に追われていれば、こんな風に情報を集めるなんて面倒なことはできない。

 信頼する誰かが与えてくれる情報を疑いながらも受け入れるのが精一杯のラインだと思う。


 だったらその誰かというのが国家元首で、その人が国民の生活を第一に考えていれば、内容はまったくの嘘でも構わないのではないか?


 いや、だけどそれは国家元首が善良であることを前提にした脆弱なシステムだ。


 リディアーヌが国家運営を担っている間はいい。

 だけど国民を搾取するような思想の人間が国家元首になった途端に、すべてが瓦解するのではあるまいか?


「だから国家元首を罷免できるような仕組みが必要だと思うんだ」


 ベッドの中でそうリディアーヌに説明する。

 同衾はしてるけれど、今夜はなにもしてないよ。

 それどころじゃなかったからね。


「元老院制ですか。しかし権力の綱引きに無駄なコストをかけることになります」


 俺が考えたのは国民投票によるリコールだったけど、リディアーヌさん的にはそうなるか。まあどっちでもいいんだけど。


「だからと言って国のトップがまともであることに賭け続けるというのは危なすぎる」


「ではこういうのはどうですか? 貴族院を設置する。この全会一致によってのみ国家元首の罷免が叶うとする。と憲法で制定します」


「全会一致は厳しすぎないか?」


「権力闘争の不毛さを考えれば妥当な線です。全会一致するということは、それだけ国家元首が愚かであるということの証左です。逆にいくらかでも票を集めるだけの能力があるのであれば、多少愚かでも国家元首として認めるとします」


「権力を見返りに一人を手懐ければ安泰、ということにならないか、それは」


「貴族院側も当然買収を持ちかけるでしょうから、そう簡単にはいかないでしょう。それこそが無駄な労力なのですけれど……」


 リディアーヌは権力闘争が好きじゃないものね。

 そういうのが好きなら、王国でも王位を取ろうとしてただろうし。


「国民が自分の幸せだけを目指せばいいだけの国家を作るためには、権力者が現実と戦わなければならないのですけれど、あまりの不毛さに目眩がしそうですね」


「国家運営自体を議会制にして責任を分散してはいけないのか? リディアーヌの考えは国家元首に責任と負担が集中しすぎているんだ。君なら熟せるかもしれないが、君以外には無理だ。そんな仕組みを国家の仕組みとして組み入れたくはないな」


「議会は設置しますが、決定権を委ねたくはありませんね。どろどろの権力闘争が繰り広げられることになりますよ」


「君が国家元首の愚かさを多少は受け入れるべきだというように、俺は議会の権力闘争をいくらかは受け入れなければならないんじゃないかと思う」


 多少の生産性を犠牲にしてでも、責任と負担の集中を避ける。

 一人に100任せるより、百人に10ずつ任せたほうが、最終的な出力は増すはずだ。


「ですが議会が権力闘争に夢中になると国民の生活が置いていかれる恐れがあります」


「愚か者が国家元首になれば同じことだろ?」


「閾値の問題なのですよね」


 そう言ってリディアーヌは枕に顔を埋めた。


「閾値?」


 俺がそう訊ねるとリディアーヌは枕から顔をあげる。


「議会制にすれば個々の運用負担が減って、結果は平均化し、最善ではなくなります。満点は取れないまでも、一定の点数辺りで安定するとも言えますね」


「そうだな。それでも変動はあるだろうけど」


「その最終的な点数が合格点を超えるのかどうかが問題なのです。例えば合格点を70点として、議会の出す点数が安定して50点ということになれば目も当てられません」


「だが国家元首に責任を集中すれば0点ということも起こりうるのでは?」


「ええ、ですがその場合は議会が罷免を行うでしょうし、過度に国民を苦しめれば革命が起こるでしょう。愚かな国家元首は愚かさの代償を払うことになります。国家元首は次代の指名も含め、責任を負うべきです」


「君は自分を苦しめたいだけに見える」


 それで喜んでるところあるよね。


「苦しむべきでしょう。国民から取り上げた財産を使って生きているのですから」


「それは違う。国民から国家の運営を委託されているその報酬を受け取っているだけだろ。君の場合は」


 俺がそう言うとリディアーヌはくすりと笑った。


「そういうところが違う世界で生きた人なのだなという感じがしますね。アンリ様は国民が国家の主体だと自然と考えていますよね。私も以前はそれが正しいと考えていました。自分が異端児だという自認があったからこそ、アンリ様に興味をそそられたところはあります」


「王国や帝国では国民は貴族の領地に勝手に生まれてくるくらいに思われているところがあるよな。あくまで国家の主体は貴族だ。だからこそ国民を思いやれる国家元首が今後現れるとは思えないんだよ」


「そうですね……。それは今後の課題としましょう。今すぐに結論が必要なことでもありません。それに帝国を今後どうしていくかを最終的に判断するのはアレクサンドラ陛下ですから」


 まあ、そうなんだけど、アレクサンドラはリディアーヌに一任すると思うよ。

 賭けてもいい。

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