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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

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暁の星 56

 重苦しい沈黙が部屋を満たした。


 時間を区切ったのは早く議論を終わらせてほしかったからなんだけど、なんでだろうか?


 俺から指名された男性はタバコを指で挟んで口から離し、残りの長さを確認している。


 ああ、そうか。


 俺は気づく。

 残り時間が限られたことで、一秒という時間の重さが変わったのだ。


 これまでは勝手気ままに自分の主張を口にできた。

 だけどここからは責任を伴う。

 わずかなタバコの残りの長さが一万人という民衆の命を左右する。


 うかつなことを口にすれば、政敵から攻撃の材料にされる。

 だからなにも話せなくなったのだ。


「一万人を帰国させる大事業になるんだ。もっと時間をくれ」


「いいえ、俺にとっては造作もないことです。なんならこの大統領官邸の庭に今すぐ連れてくることだってできる」


「そんなわけ!」


「勇者を相手に俺たちは生き残っているんだ。そのことの意味をもっと考えた方がいい」


 テーブルに着いた面々は顔を見合わせる。


「アンリ、この人たち勇者の強さをちゃんとわかってないんじゃない?」


「ああ、実感がないのか。あの人外じみた強さの」


 だけど時間はもう区切ってしまった。

 今更それを変更する気はない。


 こっちだって命がかかっているんだ。

 また勇者に襲われたら生き残れるかは、正直なところわからない。


 強さというものが理外まで行ってしまうと、なんというか程度の差ではないところで勝負が付くんだ。

 圧倒的に強いほうが勝つわけではない。

 相手の理を外から突いた方が勝つ。


 そうこうしているうちに、タバコは燃え尽きた。


「時間です。答えを」


 俺の言葉をシルヴィが通訳すると、一番奥の席に座っていた男性が重々しく口を開いた。


「国益も、政治的な利益も、あるいはそれ以外の損得の問題だってある。だからここは大統領である私が責任を負う。帝国の使者に告げる。我々は一万人の返還を受け入れる。ここに、つまり官邸の庭に連れてこられると、そう言った言葉に間違いはないかね?」


 通訳してるシルヴィの口角がちょっと上がってるんだよなあ。


「ニニアエではなく、ここでいいと?」


「ニニアエでは食料が足りなくなる。ベルダウでなら他所から運び込むまで持ちこたえられるだけの備蓄がある」


 そこは流石に首都、ということなのだろう。

 ちゃんと見られていないけど、人口も多いだろうから、食料の備蓄だって相当あるに違いない。


「ではこの後すぐに。賠償については鉱石類で構いませんか?」


「アンリ、ちゃんと量を決めなければならないわ」


「それもそうか。だけど適切な量とか、その量り方とかわからないぞ」


「アンリ、隠し持っているインゴットとかあるでしょ。出しなさいな」


「持ってるけどさあ」


 俺は収納魔法から自分で精錬した鉄のインゴットを取り出した。

 魔物の持っていた武器とか、体の一部とかを熱して不純物を取り除いた物だ。

 鉄としての純度は正直わからないが、なんというか、重たいよ?


 俺は取り出した鉄のインゴットをテーブルに置く。


「帝国の鉱山から年間でこれをどれくらい産出できると思う?」


「亡者を鉱夫として使うなら鉄鉱石の産出量は計り知れないけど、それを精錬するところまでとなると、俺は魔法を使わないとできない」


 知識はない!


「亡者ってある程度は自動的に動くのよね?」


「そのはずだ。レオン殿下の亡者なんかは結構強かったし、生前の性能をいくらかは引き継いでいる」


「知識の類いはどうなのかしら?」


 うーん。

 少なくともアレクサンドラが亡者の知識を読み取っているような感じはしなかったな。そうじゃなかったらあんなに考え無しに動く感じにはならないだろうし。


「亡者たちそれぞれが生前の体験に基づいて行動することは考えられるけど、具体的な命令は難しいんじゃないか? アレクサンドラに聞いてみないとわからないけど」


「新たな行動を覚えさせられるのかどうかも気になるわね。まあ、いいわ。一旦、単純作業でいくということにしましょう」


 そしてシルヴィはレギウムの人々に向かって語りかける。


「これほどの純度をお約束はできませんが、鉄であればこのインゴットの大きさで年間に一万本をお約束します。価値に応じて他の金属での代替も認めていただきたいですね。それを10年でいかがですか?」


「インゴット一万本で10年は少ない。インゴットを十万本で30年だ」


 シルヴィがちょっと考え込んだ。

 ここまで独断で決めていいものなの?

 って感じもするけど、そこはリディアーヌから信任されてるからなあ。


 帝国の国家元首はアレクサンドラなんですけどね。


「うーん、足元を見られているわね」


「そうなの?」


「こっちの国力を測っている、とも言えるかしら」


「ああ、なるほど」


 レギウムの人々からすると帝国は時々やってくる蛮族みたいな扱いだから、あまり実態は知られていないのね。

 あるいは捕虜から聞いているからこその要求なのか。


 残念、その帝国は事実上滅んでいます。


「あんまり安くすると、国力を疑われるか?」


「まあね。あんまりにもあんまりだと、レギウムが帝国を侵略するという方向性に……はならないわね」


 うーん、とシルヴィが腕組みをする。

 どうやら魂喰らいの権能でコピーしたレギウムの人々の記憶を参照しているっぽい。


「レギウムが自主的に他国に侵略するところが想像できないんだけど、平和主義の民主主義国家ってこうなるものなの?」


「そうなるかもなあ」


 前世の日本とか完全にそれだよね。

 侵略戦争をしようとしても、国民がついてこないだろう。


 レギウムの人々もなんというか、危機感が足りていない感じはあるよね。


 なんでかはわかんないけど、たぶんそう。

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新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
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