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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

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暁の星 54

 俺たちは夜半にノックの音で起こされた。


『夜分遅くもうわしけございません。もしよろしければ一緒に来ていただけないでしょうか? 大統領と閣僚がお待ちです』


 扉の向こうからレギウム語で呼びかけられる。

 シルヴィに翻訳してもらって俺は驚いた。

 それほどに遅い時間だ。


 俺もシルヴィも今日はもう来ないものだと思って、それぞれベッドに入っていた。

 なにかは、なかったよ。リディアーヌが先だからね。


「行きましょう。アンリ。罠の可能性もある。十分に気を付けて」


「そうだな。勇者が待ち構えている可能性もある」


「そうね。そうでなくとも、ということよ」


 俺たちは衣服を着替えて、やってきた案内役について行く。

 迎賓館の玄関には馬車が用意されていたが、シルヴィは不満げだ。


「向こうが来るのが筋ってもんじゃないかしら?」


「気持ちはわかるが、向こうにも立場があるんだろう」


「それを汲んであげる必要はもはやないと思っているのよね。とは言え、他に選択肢もないか」


 渋々と言った感じでシルヴィは俺の手を借りつつ、馬車に乗り込んだ。


 案内役も乗り込んできて、馬車は颯爽と走り出す。


「罠の可能性はどれくらいあると思う?」


 案内役は俺たちの言語を理解しているかもしれないが、そこを心配していたら準備ができない。


「私の予想ではほぼ無いんだけど、警戒だけはね」


「ほぼ無い? 俺は状況的に敵地にいるくらいの気分だけどな」


「それは私たちが勇者と敵対しているからよ。レギウム政府からすれば板挟みになって困惑してるんじゃない?」


「そうかな? 彼らはおそらく勇者への支援に傾くと思うんだよな。つまり俺たちが排斥される」


 シルヴィの瞳がじっと俺を見つめるが、しばらく沈黙する。

 やがて諦めたように目を伏せ、言葉を続けた。


「まあね。最終的にそうなるというのは私も同意よ。ただ現時点では態度を決めかねているんだと思う。なんだか民主主義ってややこしいじゃないの」


 そりゃ専政制度に比べたら複雑だ。


「ややこしいのは認めるよ。でもそれが何か関係があるか?」


「貴方の方が民主主義には詳しいはずなんだけど……」


 シルヴィがはぁとため息を吐いた。


「民主主義ってのは為政者を国民が多数決で決めるってことでいいのよね?」


「まあ、大体そんな感じだな」


「だとすると王国に比べてずっと国民の人気取りが必要ってことになるわ」


「そうだな。国民の支持がないと次の選挙で失職する可能性がある」


「そしてレギウム政府は国民に死んだと思われていたうち一万人が生きて帰ってくる予定だと報せてしまっているのよ。ここでそれがやっぱりうまく行きませんでしたとはできないわ」


「ああ、そうか。ただマイナスになるより、一度プラスになったものがマイナスになったときのほうが、人は失望するからな」


 不良がなにかやっても、またあいつか、くらいなのに、優等生が一度だけ過ちを犯すと、果てしなく叩かれるようなものだ。


「そうね。私たちのような評価される側からすると噴飯物ではあるんだけど、人の心はそう動く。それに振り回される政治家というのは、なかなか大変な職業ね」


「確かに政治家は叩いてもいいみたいな風潮あったなあ」


 あれは本当に良くないよな。

 相手も普通の人間だよ。

 どうせ見てないだろとSNSに書いた悪口をエゴサしちゃってショックを受けるかもしれない。


「ということはレギウム政府としては俺たちから一万人の返還は受けたいと」


「そう、だからこんな時間まで話し合っていたし、私たちを呼び出したと私は推測する」


「ということは、勇者はこっちに戻っていないのか?」


「それなんだけどね、ひょっとしたらなんだけど」


「うん?」


 シルヴィはなんでちょっと言いにくそうなんだろうか。


「勇者が私たちをどこに転移させたのかにもよるんだけど、ネージュが召喚した魔物やアレクサンドラの亡者たちのほとんどが現地に残っているわけよ。勇者の役目ってなんか人類の危機に対応するとかだったわよね」


「ああ、そりゃ放っておけないか」


 制御を失った魔物や亡者は周辺の生きる者を襲い始めるだろうから、勇者としてはあのまま放置はできないという道理だ。

 確かに筋が通っている気がする。


「うーん、アレクサンドラに聞けばわかるんだけどな」


 残念ながらアレクサンドラはこの場にいない。

 転移魔法でちょちょいと聞いてきてもいいんだけど、いまは案内役の人もいるしな。


「アレクサンドラは亡者を引き上げているかもしれない。彼女にとっては貴重な戦力だし。だから聞くならネージュね。あの子も召喚した魔物との間に繋がりが維持されるみたいだし」


「そう言えばそうだった」


 大氾濫の時、魔物たちはどんなに離れていてもネージュの居場所に集まろうとしていた。

 ただ強い魔物が他の魔物を追い払うから、氾濫が起きていただけだ。


「だから私たちは勇者が戻ってくるまでに、今後について契約を交わしてしまわなければならない。せめて事情を説明して、一万人を押しつけて帰りたいわね」


「それが最低目標か」


『到着いたしました』


 俺たちがそうやって今後について相談している途中で馬車は目的地へと到着した。

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新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
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