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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

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暁の星 48

 少し肌寒さを感じる冷たい風が吹きすさぶ中、俺たちは輪を描くようにして立ち、星明かりを頼りに話を続ける。


「シルヴィ、俺たちの手に入れた力というか、概念について確認しておいたほうがいいと思う」


 世界の常識を根底から覆す概念だ。

 もちろん誰にでも扱えるというものではないが、すでに使い手が三人もいる。


 そして俺はまだこの力についてほとんどなにも知らない。


「そうね。だけど落ち着けるところがいいわ」


 シルヴィは周囲を見回した。

 確かに高い場所で見晴らしはいいが、それだけしかない場所だ。


 そもそも王国という俺たちが裏切った祖国の王城であり、敵地の中心地である。


「デラシネに戻るのはちょっと怖いな」


 俺の感覚では勇者の力は未知の場所に移動はできない。

 だからデラシネは大丈夫のはずなのだけど、それは俺の感覚だ。

 俺はもう自分の感覚を信じないことにしている。


「それを言うならここも相当怖いですが。クララに見つかる恐れはありませんか?」


「どっちかが探知魔法を使わない限りは大丈夫のはずだ。どちらにしても移動は必要だな」


「どこか帝国の滅んだ町に行けばいい」


「それが一番妥当だな」


 それなら万が一勇者が現れたとしても周囲の犠牲を気にせずに済む。

 ネージュの提案に乗るか。


「じゃあ帝都からも遠く、王国からも遠い辺りで、町の名前……までは覚えてないけど、転移はできるから問題ないな」


「その適当さで転移魔法使われるの怖いんだけど。私が移動させようか?」


 いまのシルヴィは勇者が使っていた背景の変更を利用した場所の移動が可能だ。

 だけどあれは周囲に与える影響が大きい気がするんだよな。

 行き先がゴーストタウンだから気にしなくていいのかもしれないけど。


「一応そんなに気軽に使っていい力じゃないだろ。世界への負担が大きすぎる」


「まあ、そうね。転移魔法には実績もあるし、じゃお願い」


 俺たちは手を取り合って、名前も覚えていない帝国の町へと転移する。


 転移した先はなんとも言えない不気味な雰囲気だ。

 惨劇の後に修繕もされずに放置されている町は、徐々にだが朽ち始めている。

 夜、ということもあって、俺でもちょっと怖い。


「なんか出そうで怖いですね」


「わかるけど、アレクサンドラ、君が言うのか」


 亡者を従える黄泉返りの魔王だよね、きみ。


 近くにあった大きめの邸宅に入るが、中は惨劇の後が色濃く残っている。


「これ修繕するくらいはいいでしょ」


「内側だけにしてくれ」


 たぶん、この世界改変の力は俺よりもシルヴィのほうがうまく使える。

 ぱらぱらぱらとタイルをめくるように邸宅の中が変化していく。

 あたかも人が住んでいたころのように、温もりを感じる清潔な邸内に変わった。


 魔力の消費はあるようだけど、はっきりと感じられるほどではない。

 起こる事象の規模と魔力の消費、どうしてもつりあいがとれていないと感じてしまうが、それは俺の持つ常識がそうなっているからだ。

 そんなものはすでに消し飛んで、どこにも残っていない。


「こっちに談話室があるわ。そこで話しましょう」


 改変の際に内部構造を把握したのだろう。

 シルヴィの先導に従って俺たちは談話室に腰を落ち着けた。


「ふぅ」


 と、リディアーヌが息を吐く。

 彼女はこの中で唯一の普通の人間だからな。

 よくここまで付いてきたものだと思う。


「まずはシルヴィ、君の所感を聞かせてくれないか?」


「私としては自力で至ったあなたの所感を聞きたいのだけど。私の言葉が先入観になっても困るし」


「そうか。そうだな。なんと言えばいいかな。この世界は紙の本みたいなものなんだ。いま起きていることがどんどん書き足されている本だ。あくまで例えだからそのものではないんだけど、ざっくりとした所感としてはそうなる。紙の本だから、例えば俺の名前が書いてあるところをペンで突き刺せば、穴が空く。そんな風に俺を攻撃することができる」


 シルヴィは頷いたが、他のメンバーはうまく飲み込めていないようだ。

 まあ、そうだよな。俺もうまく言えてるとは思わないもん。


「場所が変わるのはどういうことですか?」


 リディアーヌが聞いてくる。


「そうだな。その本には挿絵を描くこともできる。そしてその挿絵は実際に描かれる前にこちらが描いてもいいんだ。例えば今ならこの談話室を背景に描くべきところを、デラシネを背景にすることで、俺たちはデラシネにいることに切り替わる」


「なんでもありじゃないですか……」


「そうだな。なんでもありだった。だけど今はシルヴィも俺も同じことができるから、競合が発生する。なんでもかんでもやりたい放題というわけにはいかない」


「シルヴィはこの力をどう考えるのですか?」


「アンリの考えとあまり変わりありません。私は動く紙芝居だと思ってるくらいの違いですね」


 ああ、動く紙芝居というのはすごくわかりやすい。

 この世界の紙芝居はものによっては背景と切り絵のようになった登場人物が別になっていることがある。

 そうすれば同じ絵を何度も使い回せるからだ。

 パソコンで描くイラストのようにレイヤーが分かれている感じ。


 俺の説明いらなかったのでは?

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新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
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