表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

222/231

暁の星 44

 亡者には二段階ある。


 言葉にすると妙な話だが、まだ生きている亡者と、完全に死んでしまった亡者だ。


 まだ生きている亡者は回復魔法によって復活できる。

 だが完全に死んでしまった亡者は回復魔法によって消滅する。


 亡者の選別に回復魔法はとても便利だ。


 だが一方で亡者が味方側であるいま、ひとつ問題が発生する。


 範囲系の回復魔法を使えば、味方の亡者が復活、あるいは消滅してしまうのだ。


 それぞれが離れた位置に再配置されてしまったいま、遠くまで回復魔法を飛ばすとなると範囲系にならざるを得ない。

 まあ、その場合は亡者は消滅させるしかないだろうけど。


 さて亡者による波状攻撃はターン制を壊してしまうだろうか?

 こちら側に理解の及ばない理屈だったので、壊れてしまってもいいと俺は思い直した。

 ターン制だと思い込んでいたら、向こうの都合で一方的に破棄される可能性もある。それくらいなら、最初からないほうがマシだ。


 勇者のいる場所を狙って重力魔法、加重!

 魔法自体は効果があるのだ。範囲系で阻害していくほうが確実だ。


 距離があるため加重倍率はそれほど大きくない。

 その上、遠距離重力魔法は範囲指定しかできない。


『おいおいおい、後味の悪いことをさせるなよ』


 そう言いながら風のように、嵐のように、勇者はスケルトンをなぎ倒していく。

 初見で腰骨を狙っていくところを見るに、スケルトンとの交戦経験があるのだろう。

 アレクサンドラが生み出さなければ存在しない魔物というわけでもないしな。


 だがアレクサンドラの生み出す亡者の最大の特徴はその物量だ。

 体感としてはほぼ無尽蔵の亡者を召喚できる。


 問題は重力魔法が効いていて動きが鈍いのに、スケルトンの物量でまったく押せてないところだ。

 範囲に入ったスケルトンも重力魔法の効果を受けるのでうまく立ち回れば対処は可能だが、普通であれば平静を保つのも難しいはずだ。

 立っているのも苦しいはずなのに!


「アンリ! その魔法邪魔!」


 シルヴィに言われて俺は重力魔法を解く。

 彼女の持ち味はその地術を生かした超速移動だから、重力魔法は邪魔だよね。

 ごめんね。


 シルヴィの移動が目で追えているなら、その接近と離脱に合わせて重力魔法を使ったり、止めたりできるのだが、シルヴィが全力で移動すると俺には見えない。


 飛翔は――、使えるのか。

 高く飛んだらフィールドから脱出できないかな?


 俺はびゅんと上空目指して飛ぶ。

 特に障害はないまま、人間が粒のように見えるようになったところで、転移を試みたがやはりダメだった。

 勇者からの距離が問題というわけではないようだ。


 俺は地上に向けて加速し、上空100メートル辺りで減速する。

 上からなら一方的に、


『断ウ                  左

――――――――――――――――――――――――――

  ル              足

――――――――――――――――――――――――――

  エ剣』


 さっき300メートルほど離れたところから攻撃されたことをもう忘れていた。


 二の断ちとか言う前置きは、あれ、いらんかったんかよ!

 回避が間に合ったのは偶然でしかない。

 減速するのが遅れていたら、胴と首の二カ所で切断されていただろう。


『二度躱すとはやるな』


 偶然なんですよねー!


 心の中で叫ぶ。

 本当は痛みで絶叫したいところだけど、シルヴィはともかくネージュが変に動揺してしまう。


「技名の途中でノイズが走って、なんて言ってるかわっかんねーんだよなあ!」


 光収束極大魔法-極光-を可能な限り速く連射する。


『二の断ち、断空剣だ。困ったことに技名も一緒に斬れちまうんだよな』


「どういう理屈だよ!」


『理屈なんかねーよ。できるからできる。そういうもんだろ』


 そんなアホな。何かしらの理屈はあるはずだ。

 魔法だって法則性に基づかないめちゃくちゃはできない。

 だってそれができてしまったから、殺すから相手は死ぬってことになるだろ。

 どこかでバランスが取れているはずなんだ。


 回復しながら、同時に極光。

 ああ、なにかが削れていく。

 それがなにかはわからないけれど、きっとなにか大切なものだ。


 魔法の連続使用はともかく、同時使用はきっと良くないのだ。

 なにが良くないのかはわからない。


「アレクサンドラ! もっと強い亡者はいないの!?」


 シルヴィが叫ぶ。

 亡者の強さは生前の強さに影響される。

 レオン王子のような強さがある亡者が無数にいればいいのだが、あそこまで鍛えられた人間はそういない。そもそも帝国にそれだけの猛者が溢れていれば、とっくに王国は侵略されていただろう。

 国の規模に差があるのに王国がシクラメンを逆侵攻できてしまったりするのは、個の武では王国に分があったからだ。


「大駒は使い切りました!」


「素直に言うな!」


 シルヴィの絶叫。

 つまり亡者では今以上の圧はかけられないという自白。

 もちろん勇者にも伝わった。

 言語が違うはずなのになぜ伝わるのかはわからないが、とにかく伝わる。


「ネージュ!」


「それをすると使い切る」


「使い切っていい! アンリ、上空から降りてこないで! 地上の魔力は全部ネージュが持っていく! それが一番効率がいいはずよ!」


 確かに俺は飛翔魔法で上空にある魔力が使える。

 ネージュはなぜか召喚魔法が使えるみたいだけど、飛翔魔法は使えないということだろう。彼女は地上の魔力を使う必要がある。

 だったら俺は上空に留まり、地上の魔力はネージュが運用するほうがいい。


 それはわかる。わかるが。


「使い切るのはマズい!」


 アレクサンドラの自白と同じだ。

 使い切ったとなれば、追加がないと勇者が知る。


「シルヴィ、アンリが」


「いいから、やって! ネージュ!」


 ネージュは逡巡する。

 そんなネージュにシルヴィが叫んだ。


「“私は私の人生を使う!”」


「“なら私は過去の自分を使う”」


 俺にはわからない二人のやりとり。

 そして大地から魔力が消え去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ