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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

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暁の星 33

 ヒヤリと肝の冷える場面もあったが、旅は順調に行程を消化し、使節団と俺たちは無事にレギウム連合首都、ベルダウに到着した。

 なんでレギウムはこんなに固有名詞が覚えにくいの?

 慣れのせいかな? それとも単に発音しにくいだけかな?


 農地から徐々に家が増えて、気が付けば市街地というレギウムではお決まりのパターンで俺たちはひとまず高級そうなホテルに案内された。

 旅の疲れを癒やしてくださいということで、今日明日はオフにしてくれるらしい。


 肉体の疲労や不調は魔法で癒やせるが、精神的な疲れだけは……、これも魔法で癒やせるんだよなあ。リディアーヌにも同じ魔法を求められ、気が付くと妻たちとアレクサンドラの全員が揃ってホテルの外に繰り出すことになった。

 形だけとはいえ護衛として駆り出されることになったセリュールさんにも、各種疲労回復魔法をかけていく。


「これが一般化したら労働者は不眠不休で働かされそうですね」


 体の調子を確かめながら苦笑してセリュールさんは言う。


「そんな無体なことが……、ありえるんですか?」


「同じ給料でより働かせることができれば、どの会社も利益が増えるでしょう」


 良くない考えだなあ。

 あ、そうか、一日の就業時間の定めとかがないんだろうな。こわぁ。


「一周回って、農奴みたいになっていますのね」


「はは、会社の奴隷という表現は実にありふれていますね」


 それを聞いてリディアーヌは真面目に考え込んだ。

 しかし他のメンバーはもう出かける準備ができていたので、俺はその肩を優しく叩く。


「リディアーヌ、いくよ?」


「ああ、すみません。もっと強く叩いてくださっても良かったのですよ。痣が残るくらいに」


「外でその冗談は止めてね」


 セリュールさんはもう散々聞いているから平気だけど、俺たちのことを知らない人が聞いたら、俺が嗜虐趣味みたいじゃん。


「本当に護衛は必要ないのですか? ベルダウの治安は良いですが、あなたがたのことをよく思っていない人もいます。家族を喪った人が暴挙にでる恐れも」


「普通の人間に遅れを取るのは、この中ではリディアーヌくらいだよ。あと、魔法使ってない時の俺だな」


「無理を承知で、この国の普段の実態を拝見してみたいのです。民主主義や、男女同権と言った、理想を体現している国家のあり様を」


「まあ、まだ道半ばというところですが、そういうことであれば私にお任せください」


 セリュールさんが任せてくれとばかりに胸に手のひらを当てる。


「どういったところを視察なさりたいですか?」


「まずは市民の一般的な光景を。お邪魔でなければ労働しているところを拝見したいですね」


「わかりました。市場を見て、“工場”を見に行きましょうか」


 工場という言葉は王国や帝国にはなかったのでレギウムの言葉で表現された。セリュールさんからレギウムの言葉で説明を受けたリディアーヌから翻訳してもらって、工場のことだと後から理解する。


「皆さんの服装は目立ちますが、肌の色が隠しようもありませんからね」


 秋になり朝夕は肌寒い日が増えてきたが、レギウムの人は比較的薄着だ。

 肌が露出している服装が当たり前で、服装を真似れば俺たちの白い肌が露出することになる。


「気を抜かないようにお願いします。私だけでは目が足りませんので」


「ネージュ、頼めるか?」


「任せて。怪しい動きをしている人がいたらすぐに言う」


 得意分野を任されてネージュは嬉しそうだ。


「ネージュさんはそう言ったことがお得意なのですか?」


「彼女はフラウ王家の専属護衛から教育を受けているからな」


「なるほど」


 まあ、言われたら暗殺もこなす諜報部隊なんだけどね。ガルデニアは。

 言わぬが華というものだ。


 ベルダウの町並みは王国や帝国の町並みに慣れている俺からするとエキゾチックというよりは、システマチックに見える。利便性が優先されているというか。

 街路もきっちり升目になってて、どこにいるのかすぐにわからなくなりそうだ。


「この町は随分計画的に作られているな」


「遷都がありましたからね。レギウムの首都はデノルスコという都市だったのですが、近代化するには少々込み入った立地だったもので、広大な平地に都市機能を丸ごと新設しました。それがベルダウです」


 だから固有名詞が覚えにくいんだってば。


「似たような町並みで、すぐに迷いそうだ」


「数字さえ読めるようになれば簡単ですよ。南北2桁と東西2桁の数字が番地になっていますので、目的地の番地さえわかれば知らない店でも迷わず行けますし」


 数字くらいは覚えるか……。いや、どれが数字かがまずわからんのよ。


「では市場に行きましょうか」


 そう言ってセリュールさんが俺たちを連れてきたのはひとつの大きな建物だった。


「あの、市場に行くのでは?」


 なにが出てきても驚かなさそうなリディアーヌもちょっと困惑気味だ。


「ここが市場なんです。おそらく皆様が想定されているような市場もあるのですが、せっかくですからレギウム式の新しい市場をご覧いただこうと思いまして。新式市場とでも申しましょうか……」


 中に入ってすぐにわかった。

 客が商品を手に取ることができ、自分で会計処へ持っていく。つまりスーパーマーケットだ。


 王国では市場はともかく商店では、客は自分の希望する品を店員に伝えて、店員が奥からそれを取ってくるスタイルだ。

 日本人として馴染みがある感じだと、処方箋を持って行った薬局みたいな感じ。あとはお肉屋さんなんかもこのスタイルが維持されているところが結構ある。

 地球の歴史を見てもこのスタイルが主流だったのだけど、これでは多数の客を捌くのが難しい。そこで考え出されたのが、商品を取ってくるという手順を客にやらせる手法だった。

 店員の手間を省き、品出しと会計に集中させることで、より短時間に多数の商品を売ることができる。また客は客で商品を手に取って吟味することができるようになった。

 デメリットは窃盗被害が出ることだ。


「窃盗対策はどうなっているんですか?」


 未会計商品を外に持ち出すとブザーがなるような仕掛けはまだないだろうし、窃盗被害を防ぐのは難しそうだけど。


「入口と出口を分けてあるんです。入口から出ようとすると警備員に止められますよ。もちろんなにも購入しなかったら、出口でそれを告げて出て行くことになりますから、目的もなしに入店する人は稀ですね。ダメではないんですが」


「それは確かに気まずそう」


 コンビニでトイレ借りたら飲み物くらいは買っていくかってなるみたいな。


「ここでも仕事をしている人々を見ることができますので、お楽しみいただけると思います。なにかごらんになりたい商品はございますか? 大抵のものはここで揃うと思いますよ」


 スーパーマーケットというより百貨店だな、これ。

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新作始めました。近未来超ハイスピードバトルアクションです!
全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
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