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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

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暁の星 31

 銃や大砲が実用化されているレギウム連合国だが、移動手段はまだ馬車だ。


 とは言っても王国や帝国のものと比べると格段に乗り心地がいい。

 サスペンションの技術が高い、というか王国とか帝国の馬車にサスペンションあったかな?

 とにかく揺れはするが衝撃が少ない。


「例えば馬を必要としない馬車があったりはしないのか?」


 セリュールさんに聞いてみる。

 銃も大砲もあるなら、自動車とは言わずとも、蒸気機関車くらいは発明されていてもおかしくないと思うんだよな。

 えっと、前世の世界では蒸気機関の発明っていつ頃だったっけ?


 蒸気圧を利用した一方向にかかる圧力を回転エネルギーに変換することさえ思いつけば、レギウムの金属加工技術で蒸気機関を実用化できるだろう。

 だから自動車とまではいかなくとも蒸気機関車はあると思うんだよな。


「アンリさんのおっしゃる意味がよくわかりませんが、馬が必要なければそれはもう馬車ではないのではないですか?」


「いやまあ、そうなんだけど」


 こっちの言葉で馬車という単語は、馬と車の組み合わせではないから、そこを分けて考えられないのはわかる。きっとレギウムの言葉でもそうなんだろう。


 前世の世界の俺が生きた時代で【車】といえば自動車のことを指したが、これは一般的な乗用車が自動車だからだ。

 馬車が当たり前の時代には、馬車が【車】と呼ばれていただろう。


 つまりなにが言いたいかというと、思っていることを相手に伝えるのは難しいね!


「まあいいか。今後レギウムとアルブルは国交ができると思うんだけど、こちらから要求した技術や知識の供与はともかく、自然と入ってくる分はどういう扱いになるんだ?」


「アルブルでは民間企業についてあまり制限を設けていません。国防に関することでもないかぎり、民間が技術供与をすることで利益を得られると判断したなら、国が止めることは……あんまりありませんよ」


 あることもあるんだ。


「亡者は単純作業をさせるのに向いている。疲れを知らず休まずに稼働し続けるからな。あってるよな、アレクサンドラ」


「そうですね。判断を必要としない単純作業は亡者が得意としていると言っていいでしょう」


 つまり帝国は国民こそそれほどいないが大量の労働力をレギウムに提供できる。ただ亡者を使って帝国を工場化するなら、そこで生産されるものの技術についてはくれるよね?


「陛下、旦那様、そういう話はセリュール女史のいないところで、まずは私にお話しください」


 ひえ、いつの間にかリディアーヌさんが静かに怒っていらっしゃる。


 よく考えたら政治的駆け引きはリディアーヌの領分だから、そこを侵犯されたらそりゃ怒るよね。

 それに俺もアレクサンドラも政治的駆け引きに長けているとは言えない。

 いまのやりとりも、リディアーヌならなんらかの利益を引き出せた。そういうことだろうか。


「前から思っていて、最近確信したのですが、旦那様は私に秘密がございますわよね」


「……誰にだって言いたくないことはある。夫婦でもすべてを明かすのは難しいんじゃないか?」


 特にリディアーヌは政治のためなら自分も俺のことも捨て石にするんじゃないかと思うんだよな。

 ただ、今の彼女にとって政治とはなんだ?

 以前は王国の国民のためだった。

 だけど今の彼女は王国の王女ではない。


「そうですわね。私にも秘密にしていることがあります。ですが旦那様はとても重大なことを秘密にされていませんか? 私たちの今後にも関わるような大きな秘密です」


「わかった。話せる範囲で話す。今晩、二人のときに」


「あら? 私には話してくれないの?」


 とシルヴィ。

 最近のシルヴィは超然としていて、俺への興味をある程度失っているような気がしていた。

 だから俺の秘密といってもそんなに興味はないかなと思ったんだけどな。

 ヤキモチなのかはわからないけど、ちょっと嬉しかったりする。


「なにも言わないということは、ネージュは知っているのね」


 どうだろう。ネージュが知っているのは俺の前世の姿だけで、詳しい事情までは話してない。だけどネージュがそれだけが俺の秘密だと思い込んでいるということはありうる。


「四人で話そう。……アレクサンドラはなんで仲間はずれみたいな顔してんの」


「言葉通りじゃありませんか?」


「そりゃまあ、君とは同志だけどさ。俺の秘密は君の復讐とはちっとも関係ないよ」


「ちっとも関係ない……。そうですか」


 つーん、とアレクサンドラはそっぽを向いてしまう。


「旦那様、アレクサンドラ陛下の機嫌を損ねていいことはありませんよ」


「そうはいっても、できれば君たちにだってあんまり話したくはないところを、頑張って話すんだからさ。アレクサンドラには今回は遠慮してもらいたい」


「そうですか。陛下、今回は我慢。我慢ですよ。いつか陛下にも話してくださいますよう、私からもお願いしておきますから」


 王国の王女だったリディアーヌだが、決して傍若無人というわけではなく、こうして人の機嫌を損ねないように立ち回ることも多い。

 彼女なりの処世術ということだろう。


 リディアーヌは決して強い立場の王女というわけでもなかったしな。


 本来ならリディアーヌは政略結婚の駒として使われるはずだった。

 まあ、俺と政略結婚したから、本来も結果も同じなんだけど。


 婚約者候補にはバルサン伯爵もいたわけで、王女が伯爵家に降嫁する可能性すらあったということだ。


「必ずいつか話してくださいね」


 なんかいずれ話すことが確定的になってるけど、そういう約束はしてないよ!

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全18話で書き終えておりますので、安心してご覧になってください。
バトルダンスアンリミテッド ~適性値10000超えの俺が世界最強になるまで~
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