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転生チートで世界一の魔法使いになりました。ただし魔法使いは俺だけです。(改題)  作者: 二上たいら
第6章 暁の星

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暁の星 25

 ついに使節団がソルヴの連合国軍駐屯地に到着してアルブル帝国とレギウム連合国の外交が始まったわけだが、なんで俺は会議場から締め出されてるのん?

 余計なことを言ったり、やったりしちゃうから?


 心当たりがありすぎる。


 使節団の対応によっては、単独で戦争を挑むとか思われてない?


 状況次第だよ。


 ただ国家の全滅を狙ったアレクサンドラとは違って、俺は基本的に軍人しか相手にするつもりはない。

 でもそれはフラウ王国で培われた価値観だ。

 つまり戦争責任は貴族に帰する、というもので、民主主義国家であるレギウム連合国には当てはまらないかもしれない。

 レギウムが正しく民主主義国家であるならば、その戦争責任だって国民に帰するべきだ。


 でもそれはレギウム内側の問題であって、現在の所属であるアルブル帝国的には、やはり一般市民は攻撃対象とはならない、はずだ。

 亡者による侵攻は、アレクサンドラが見境がないだけだよ。


「そう言えばレギウムはどうやって兵員を確保しているんだ?」


「17歳から19歳まで、国民には兵役の義務があります。平時の兵員はそれで足りていますね。アルブルでは違うのですか?」


「アルブルの場合は知らないが、フラウでは戦の都度に徴兵が行われるな。領主に動員の命が下って、領主は領民から志願か、あるいは強制徴募する」


「常備兵はいない、ということでしょうか?」


「言うなら騎士が常備兵ということになるんだろうが、伯爵家でも十数人がせいぜいだな。彼らは指揮官としての教育を受けていて、戦になればそれぞれ何十人かの兵士を率いることになる」


「伯爵家で数百人の動員ということですか」


「あとは冒険者か。ただ彼らを命令系統に組み入れるのは難しいな。遊撃隊とか、愚連隊とか、言い方は色々あるだろうが、勝手に戦っててくれって感じだ」


「そちらでは武器が剣とか槍ですもんね」


 まあね。

 銃のように取り扱いに注意な武器がないから、訓練の必要性が薄い。

 だけどそれだけではない。


「それもあるが、フラウとかアルブルは余裕がないんだよな」


「余裕、ですか?」


「フラウはまだマシなほうだが、要は食料生産力だ。常備軍なんて食料を大量に消費する無駄飯ぐらいを抱えている余裕がない。騎士を何人か置くので精一杯だ。戦となると無理をして農民を兵士にするわけだが、勝ち戦なら相手の領土から食料を略奪できるが、負け戦となると悲惨だぞ」


「うわぁ……」


 完全に蛮族を見る目で見られた。

 いや、フラウ王国貴族は出自が遊牧民だから、移動しながらの略奪は普通だったんだよ。

 その略奪が普通って感性を蛮族扱いされているんだろうけど。


 言うて近年は食料生産も安定してきて、フラウ王国が戦争をふっかけるようなことはなくなった。周辺諸国を平定してしまって、ふっかける相手がいなくなったとも言う。

 大氾濫で北方農地が大打撃を受けたのに立ち直れたのは、食料生産力に余裕があったからで間違いない。


「常備軍は魅力的だけど、コストとリスクがな」


「コストはわかりますが、リスクですか?」


「特に民主主義国家における職業軍人は一般市民や政治家とは感性が異なってくるってことさ。血を流しているのは我々なのに、政治によって蔑ろにされる、と感じてもおかしくないだろ。政治は金で動くけど、軍人は血で動くんだ。その齟齬が取り返しのつかないところまでいくと、どかん。クーデターが起きる」


「見てきたように語りますね」


「よ、予測だよ。予測」


 フラウ王国にいた頃は、前世に基づく発言については、よく分からない理屈を並べてる子どもと思われてたけど、レギウムは文化的に前世に近付いている分、変に理屈が通ってしまうな。

 こういう余計な発言が、俺が外交の場から閉め出されている最大の原因なんだろうけど。


「仰りたいことはわかりますよ。自分も不満を感じることはあります。例えば魔法使いとかいう常識外れの外国要人の護衛を任されるとかね」


 言うねぇ。

 セルヴィスくんのそういうところ嫌いじゃないよ。


「政治家と軍人は相性が悪い。だからと言って軍人に政治ができるわけではないよな」


「軍事を中心に国家を運営することは可能なのでは? 軍隊というのは小さな国家のようなものなので、応用は利くと思いますが」


 職業軍人はそう考えちゃうよね。

 でも軍人って食料生産しないじゃん。

 まあ、それだけじゃないけど。


「軍事政権には大きな問題点がある」


「なんですか?」


「軍事行動を起こさないではいられない点だ」


 セルヴィスくんは心外だというように声を大きくした。


「そうだとは言い切れないのでは?」


「外に向いていないときは、内に向いているんだ。事実上、国内に武力を向けている。軍人の存在意義は軍事力の行使なのだから、それから逃れることはできない」


「しかし軍事力が不要にはならないでしょう?」


 そうだ。国家には軍事力が必要だ。

 交渉は常に力を必要とする。

 軍事力が足りていないというだけで下に見られ、不利な交渉を結ばされるから、軍事力は必須だ。

 だけど軍事力が目的になってはいけない。


「だから文民統制が行われる。軍事力は政治家の判断でしか行使できないとすることで、軍事力の暴走を止められる。レギウムもそうなんだろ?」


「おおよそは。絶対ではないですが」


「まあ、第三軍は亡者の軍勢に即時行動を起こしてるもんな」


 使節団の結成までにかかった時間を考えると、帝国市民の救出のために動いたレギウム第三軍は独自に判断を下している。

 軍隊が国境線を政治的判断なしで越えたわけで、文民統制が行き届いているとは言えない。

 レギウムは多分前世で言う近世国家だから、同じような発展度であれば文明統制という概念が出てきたばかりだろう。

 時代の軍人がそれを理解しきれないのは当然だ。


「そして結果的に全滅した。ニニアエで迎え撃っていたとしても結果は同じだと思うが……」


 少なくともその場合はニニアエの市民をもう少し逃がすことができたのではないだろうか。

 第三軍の司令官が使命感に燃えた結果が、ニニアエの壊滅だ。


「加害者側の人に言われたくはないですね」


「ごもっとも」


 本当にそれなんだよなあ。

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